事情説明
誤字報告ありがとうございます。
そして、何故か返信していない感想が大量にあった事に先ほど気が付きました。
わざわざ書いていただいていたのに申し訳ない限りです。
きちんとコメントを書かせていただきました。
魔王城もとい、教会の前に立つ。
教会は、大繁盛といって良い位の人だかりが出来ていて、中に入るのは苦労しそうだ。
勇者達の居る部屋に入るときよりも深く深呼吸してから、人混みを掻き分けるように進む。
「待て!神聖な教会で割り込みとはいい度胸だな!」
教会の中に入れるかと思ったところで、教会騎士に呼び止められる。呼び止められたというよりも、なんだかそのまま連行されそうな勢いで迫ってくる。
「・・・ちょっと色々あって急いでるんだ。どうにかならないか?」
「ダメに決まっているだろう!並び直せ!」
連行はされないみたいだが、並び直しになってしまった。さらに時間がかかる事に焦りつつも、肩を落として騎士の指示に従う事にする。
帰る人たちの流れに乗ろうと、振り向いたところで後ろから声がかかる。
「お待ちください。貴方はハヤト様ですね。」
向かってきたのは一人のシスターだった。
あった事はないと思うが、どんな要件なのだろうか?礼拝堂に入れる様に、何とか騎士を説得してほしいところである。
「そうだ。」
「ではついて来て下さい。」
「しかし----」
シスターの言葉に、騎士が待ったをかける。
「マリエル様の依頼です。ハヤト様を待たせるわけにはいきません。」
「理由はわかりました。特例で認めるものとする。以後無いように。」
「ハヤト様、ではこちらに。」
「あぁ。」
若干睨んでくる騎士をスルーして俺とシスターは歩き出す。
「マリエル様が来ると予想されていたので、待機していて正解でした。」
「迅速な対応で助かるよ。」
「今回は運が良かっただけです。こちらへどうぞ。」
「ありがとう。」
案内されたのは礼拝堂の一角。
教会の入り口はかなりの混雑だったが、礼拝堂は入場規制がされているのか、比較的すいているように思える。とは言っても席はほとんど埋まっているのだが。
スムーズに席に座れるようにしてくれて、このシスターさんには、感謝してもしきれないくらいだ。
「話を通しておきますので、祈りが済みましたらマリエル様にも面会をお願いします。」
「わかった。」
「それでは、失礼します。」
シスターは一礼して礼拝堂から出ていく。マリエルさんに報告に行ったのだろうか?
ひとまずマリエルさんの話はおいておいて、ディアへの祈りをささげる。
そこは見慣れた白い空間。
しかし、いつもと様子が違う。初めて強制召喚された時の様にバーカウンターがあり、ディアとフィーレが座っていた。
辺りには、結構な数の空になった酒瓶が捨てられて様に転がっている。
「・・・ヤケ酒か?転がり過ぎだろ。」
「・・・・・・ハヤト」
俺の呟きにフィーレが反応する。
「ハヤト様ぁ?本当ですねぇ、ハヤト様ぁこっちですよぉ。」
フィーレの声で、ディアもこっちを向く。
顔は赤く、今にも泣きだしそうな表情をしている気がしないでもない。すでに結構な酔っぱらいである。そんなフワフワとした様子で、俺を手招きする。
「ディア、飲み過ぎは禁物だぞ。」
「そんなに飲んでないですよぉ。今日は、一緒に飲みに来たんですかぁ?」
誰がここに来る事を許可してくれたのか解らないが、今日のディアとはまっとうな話が出来ないかもしれないな。
「・・・そんなわけないだろ。変なウワサについての話をしに来たんだよ。まぁ、ディアがこの調子なら日を改めるが。」
「そうなんですよぉ。聞いてくださいよハヤト様ぁ。」
ディアに両肩をガッチリとホールドされて前後に揺さぶられる。されるがままに揺さぶられて眩暈がする。
「・・・・・・ごめん。」
ディアの揺さぶり攻撃が終わったら、フィーレに服の袖をチョイチョイと引っ張られて、何かと思ってみたらなぜか謝罪される。
考えてみても何の事だかよくわからない。ディアが神託を下ろしてしまった間接的な原因を作った事に対しての謝罪だろうか?それともこのディアの惨状の事だろうか?きっとどちらかだろう。
フィーレは言葉数が少ないので判断に困る。しかしただ一つ言えるのは----
「別にいいよ。誰も悪くないんだから。」
「・・・・・・ん。」
「何してるんですかぁ。早く座るのですよぉ。」
いつの間にか存在しているディアの隣の椅子をバシバシと叩いて着席をうながしてくる。
仕方ないので、酔っぱらい女神様にに付き合う事にする。
「わかったわかった。」
「わかったは一回なのですよぉ。」
「そんなことを言われたのは初めてだ。」
フィーレと俺でディアを挟むように、両隣に座る。
「良くできましたぁ。いい子いい子してあげるのですよぉ。」
何故か頭を撫でられる。ただ着席しただけで褒められたのは初めてだ。
振り払ったらきっと面倒臭いので、ディアが満足するまでされるがままになる。
しかし、何だろうかこの状況は?フィーレから微妙に冷たい空気を感じるし、かといってこの状況のディアをないがしろには出来ない。
光輝ならこの修羅場?をどう切り抜けるのだろうか?・・・モテるって辛いな。
まぁ、俺はモテてるわけじゃないからもっと辛いのだが。今、俺に出来るのは感情を殺す事だけだ。あのイケメンコミュ力が非常に欲しい。
「ディアが満足するまで好きにしてくれ・・・。それよりも今言って良い状況なのか解らんが、今日はディアに謝りに来たんだ。俺が聖騎士を正式に名乗れなくてごめん。ディアが酔っていない場でまた正式に謝罪するよ。」
「今回だけでいいのですよぉ。なぜならぁハヤト様のせいじゃないからですよぉ。」
「神託で聖騎士の名前を伏せてたのはディアが気を使ってくれたからなんだろ?」
「そうなのですよぉ。ハヤト様がいやがると思ってぇ、でもそれとなくわかる人にはわかる様に神託をおろしたのですよぉ。」
実際に勇者パーティーはほぼ確信していたし、マリエルさんも気づいていたからシスターを待機させていたのだろう。
そうなると、神託を聞いたのが重要人物以外にもいて、格好だけ探すふりをしてみたが、思いのほかウワサが広まったってところだろうか?
残念過ぎる顛末だ。
「ディアも先に俺に言ってくれれば、もっと早く動けたのに。」
「ハヤト様が拒否すると思ったのでぇ勝手にやってしまったのですよぉ。」
「おっしゃる通りです。」
勇者パーティーも女神様も俺という人間をわかってくれている事に嬉しいやら悲しいやらの複雑な感情が渦巻く。
俺ってそんなに解りやすいかな?
「最初に変なウワサを広めた人に天罰でも落とそうかと思ったのですがぁ、フィーレに止められてしまったのですよぉ。」
「まぁ、ソイツもきっと悪気があった訳じゃないからな。」
人に対しての天罰なら大丈夫だったか。町に落とそうとしてたら大事だったが、これなら焦る必要は無かったのかもしれない。
まぁ、止めてくれたフィーレには、今度お礼をしよう。
「でもぉ、せっかく用意したハヤト様の称号が取られてしまったのですよぉ。」
元々要らなかったんだけどな。この際だから消してしまおうか。勇者の称号みたいに、存在を忘れさせてしまえば良いだろう。
「取り敢えず、聖騎士のウワサの件に関しては神託ごと無かったことにしてしまってもいいか?中途半端に介入するとうわさが拡大する恐れがあるから、一般市民の言っている作り話を女神様への不敬罪にして、神託があった事ごとウワサを消せばいい。聖騎士の称号は、知る人が知ってれば良いだろ。」
「残念ですけどぉ、そうするしかないのですよぉ。」
「じゃあ、後でマリエルさんに伝えておく。」
「わかったのですよぉ。」
うん、これで俺の自由は守られた。
「今後の方針は決まったな。じゃあ、俺が最初に言った言葉は忘れて一緒に飲もうか。ディアもたまにはパーッといきたいだろうし。」
「良いのですよぉ。」
俺とフィーレは、ディアの愚痴にとことん付き合う事にした。




