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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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聖騎士2

「またかよ・・・」


気が付いたら真っ白な空間にいる。

どうやら、呼び出したのはディアではなく、フィーレのようだ。相変わらず本に囲まれて読書をしている。

俺はフィーレに近づいていき、半ばまで歩いたところでいったん足を止める。フィーレの放つ空気感がいつもより刺々しい。

理由なんて解らない。しかし、この張りつめた感じは怒っているようにも感じられる。

呼び出されている以上、来るタイミングが悪いわけではない。フィーレを放置していた訳でもないし、怒られるような行動もしていないはずだ。気づかないところで何かしてしまったのだろうか?


「フィーレ、もしかして何か怒ってる?」


考えてもわからない事は、一度聞いてみるしかない。

光輝であれば、最適解を見つけられたかもしれない。しかし、俺にはそんなことは不可能だ。この行動が女性をもっと激怒させてしまうとしても、答えが見つからないのだから仕方ないだろう。


「・・・・・・ずるい」


帰ってきた返答は、だいぶ見当違いのモノだった。どうやら俺の所為ではなさそうだ。


「ずるいって何が?」

「・・・・・・ディアーナ」


ここまでこれば、さすがの俺でも察する事が出来る。フィーレがものいいをしたがるようなディアとの出来事なんて一つしかない。


「もしかして、聖騎士の事言ってる?」

「・・・・・・ん」

「あれは、半分騙されて無理矢理聖騎士にさせられただけなんだけど。もしかして、ディアに自慢でもされた?」

「・・・・・・ん」


何てことしてんの?あの女神様は。確かにかなり浮かれてる様子ではあったけど、この様子だったら会う神様皆に自慢して回ってるんじゃないだろうか。

他の神様に会う予定なんて微塵もないが、今後の厄介事は避けて通れなさそうだ。


「なんて言われたかわからないけど、俺も被害者なんだよ。」

「・・・・・・私も」


私もって何?ディアでいっぱいいっぱいなのに、フィーレの聖騎士にもなるのか?


「・・・2人から聖騎士に任命される事とかできるのか?」

「・・・・・・ん」

「マジかよ。」


ダブルブッキング可能なのか・・・結構がガバガバな称号だな。コンチクショウ。


「・・・・・・迷惑?」


フィーレは表情が現れないので顔には全く出さないが、若干不安そうな空気と、数ミリ首をかしげる。そんな様子が可愛らしいというか、庇護欲をそそるというか、即決でOKを出してしまいそうになる。


「光栄なんだけど、俺でいいのか?ディアの聖騎士になっちゃったし、フィーレの騎士になりたい人なんていっぱいいるだろ。」

「・・・・・・なって」

「わかった。是非フィーレの聖騎士をやらせてくれ。」


フィーレのここまで強い意思表示は初めてだし、色々と世話になってるので断る気はなかったのだが、出来れば回避したかった。

もう、どうとでもなれと思いつつ、やけくそ気味にフィーレの聖騎士の称号ももらう事にする。

面倒事が若干増えてしまった事に肩を落としつつ、フィーレの前で片膝をつく。

フィーレは雰囲気に重きを置いていないようで、真っ白な空間のままで儀式を始める。


「・・・・・・『魔術の女神フィーレの名において、汝を聖騎士に任命する。誓いをここに。』」

「『私、石田隼人は魔術の女神フィーレ様の騎士を拝命し、フィーレ様の剣となり盾となり、命を懸けて貴女を御守りすることをここに誓います。』」


ディアに対して言った事と同じ文言を返す。


「・・・・・・もう一声」

「えぇ~。じゃあ『フィーレを最優先に行動します。』」

「・・・・・・ん」


フィーレが俺に対して手を差し伸べる。ディアと同じように手を取り、口づけをする。

またも燃える様な感覚。体が一瞬熱くなり、すぐに元に戻る。ちゃんと称号が手に入ったようだ。


「これで良かった?」

「・・・・・・満足」


まさか一文増やされるとは思ってもみなかったが、フィーレが満足してくれたなら良かった。


儀式も終わったので、立ち上がろうとするとフィーレに止められる。


「まだ何かあった?」

「・・・・・・ん」


フィーレの手がのび、両手が顔を包むように頬に触れる。さらさらした白磁器のような指が頬を滑り、ゆっくりと顔を上げさせられる。

フィーレと目が合う。フィーレは腰をかがめてゆっくりと顔を近づける。それと同時に頬に添えていた手で俺の髪をかき上げる。

俺はそっと目を閉じ、フィーレに身をゆだねると、ふわっとフィーレの薄い唇が俺の額に触れる。

視覚を縛っている為、フィーレから香るフェロモンと、額から来るフィーレの柔らかな感触が脳に直接刺激を与えているように感じ、煩悩を滅却するために必死で無心になる。

そして、フィーレの触れている額が光に包まれていく。決して眩しい訳ではなく、温かく優しさに包まれるような感覚が、視界を通さなくても理解できる。

この感覚は何度も体験している。フィーレからは最大級の加護を貰っていなかったので、きっと加護をくれたのだろう。

ディアの時は無かったので、ここまでする必要はなかったと思うのだが、まぁ雰囲気の問題だろう。フィーレにキスをされたまま、どれくらいの時間が経ったのだろうか?永遠とも一瞬ともいえる時間がすぎて、フィーレは俺からそっと身を遠ざける。


「加護をくれたのか?」

「・・・・・・ん」


どうやら正解だったようだ。今のところ体術がメインで、魔術はサブでしかないのだが、貰えるものはありがたく貰うにこした事はない。

他の人には見られないように細工してあるので、フィーレからの加護はどれだけ貰っても素直に喜べる。

ステータスが更新されたので、どうなったかを一度確認してみる。


魔術の女神の聖騎士

魔術の女神の寵愛


「・・・はぁ?」

「・・・・・・あげる」

「あ、ありがとう。」


おいおい、加護を通り越してしまってるんですけど。何?寵愛って?加護(大)の上が存在したんですか?完全に盲点だよ。

またディアが対抗してきそうなネタをぶっこんできてくれたなフィーレさん。

俺はまだ続きそうな面倒事に愕然としつつも、諦めてフィーレとお茶を楽しんだ。



その後、フィーレはディアに聖騎士の報告をするが、展開を予想していたディアは大した事はなく終わる予定だった。

そう、『だった』のだが、寵愛というオマケは予想しておらず、フィーレに一歩先を行かれた事で、必要なかった爆弾を投下する。

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― 新着の感想 ―
[一言] 女神様がどんぐりの背比べをしている。 どんどんエスカレートしていって、他の人には見せれない称号が押し付けられそう。
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