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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
112/186

陰口

あけましておめでとうございます。

去年のあけから書き始め、一年がたちました。

書き続けているのは皆様の支えのお陰です。

ありがとうございます。

今年も頑張ります。

翌日、さすがにコカトリス討伐で疲れたこともあって、休養にする。

そろそろミレディがループスの首輪を完成させている頃だろうと思い、進捗を聞きに行く。


「あらぁ!ハヤトいらっしゃぁい!」

「店長、ルーの首輪はどうなった?」

「出来てるわよぉん。」


ミレディがこちらに近づいてくる。物理的にお近づきになりたくないので、出来る限り早く会話を終わらせて、店を後にしたい。

そして、出来てるならさっさと出してほしい。わざわざこっちに近づいて来なくても良いんじゃないのか?ボディータッチする意味も無いだろう。

一度触って満足したのか、ミレディは奥へと引っ込んで行き、トレーに乗せた首輪を持ってくる。

革部分は重めの赤で、金属パーツも少し暗めの銀。中央にフィーレから貰った大きな魔石と座に小さな魔石がちりばめられている。相変わらずセンスは抜群な気がする。

ループスに着けてあげる前から似合いそうな気がする。


「よし、貰おう。いくらだ?」

「ハヤトはお得意様だからぁ、おまけして金貨2枚よぉん!」

「高ぇ!」


結構な額を提示されておどろきの声を上げる。完全に予算オーバーである。


「あらぁん。これでも良心的な価格よぉん!」

「・・・相当良い素材を使っている事も、デザインも造りもかなりレベルが高い事も理解できる。予算オーバーだが、もっと高くても納得できる。」

「じゃあ良いじゃなぁい!」

「予算オーバーなんだよ。まぁ、払うが。」


ミレディは、俺が手放しで褒めちぎった事にテンションを上げて抱き着こうとしてくる。筋肉と巨体によって、殺人タックルの様な威圧感を放つハグを難なく躱し、トレーから品物を受け取って代わりに金貨を置く。


「んもぉ!恥ずかしがり屋なんだからぁん!」

「キモい。あんなモノ食らったら骨折じゃすまないだろ。」


いじけた様な仕草で頬を膨らませるミレディを無視して、俺は店の外に出た。


「また来てねぇん!」


切り替えの早い漢女である。

店の外に出て、くねくねしながら俺に手を振りお見送りをしてくる。周りからの目が気になる為、お見送りも勘弁してほしいところである。

少し歩いた人気のない通りで、購入した首輪を着けてやる事にする。


「ルー、新しい首輪に替えようか。」

「ガゥ!」


ループスは嬉しそうな鳴き声と共に、頭を下げて首輪を外しやすい高さにしてくれる。

小さな魔石の効果でアジャスト機能が働き、まったくサイズの合わないはずのループスの首に新しい首輪がフィットする。


「おぉ、似合ってるな。こっちの方が可愛いよ。」

「グルルルルル」


首輪を変えて、少し遠目から全体を確認した後、素直な感想を言って頭を撫でる。

気持ちよさそうな表情と、うれしそうな鳴き声に、俺も顔がほころぶ。


「それで、小さくなれるか?」

「ガゥ!」


ループスは首輪に魔力を込めて魔石に込められた魔術を起動。一瞬で姿を小さくしていき、幼少だった頃の肩に乗れるサイズへと形を変えた。


「よし、これで外で待機は無くなったな。」

「ガゥ!」


どうやらそれが一番うれしかったらしい。感極まって、こちらにダイブしてくる。


「小さくなったとたんにそれか。」

「クゥン。」


甘えん坊なループスを抱きとめ、仕方なく肩に乗せて再び歩き出す。


「怒ってないよ。ギルドに顔を出して、宿で休もうか。」

「ガゥ!」



昼のギルドはそんなに人がいない。居るのは寝坊した時間にルーズな寝坊助か、昼間っから呑んでる馬鹿者か、掲示板を眺めるだけのお地蔵さんだ。

しかし、高速で人を捌くレイラさんの前に先客が居た。


「あら、今日は来ていませんの?」

「依頼を達成されたばかりなので、数日は休養を取られるかと。」

「そうですか、仕方ないですわね。宿にもいませんでしたし、どこにいるのでしょうか?」


どうやら人を探しているのであろう特徴的なお嬢様口調の知り合いに、後ろから近づいていく。


「杏華、冒険者ギルドで何してんの?」

「隼人さん、見つけましたわ!さぁ、魔術の特訓をしますわよ!」


やっぱり俺を探していた杏華は俺を見つけるなり、ビシッと俺の方に指をさし、そんな宣言をしてきた。


「・・・なんで?王宮でやってれば良いじゃん。」

「ダメですわ。新しいライフルのために一緒に練習しますわよ。」

「聞いてくれよ。」


杏華は俺の襟首を掴んで歩き出す。いやいや、何の約束もしてなければ、この後の予定も聞かれてないんですが?


「行きますわよ。」

「・・・無視ですか~?」


杏華に強制的に引きずられてギルドをドナドナしていく。確かに今日は休もうとしていたところだし、予定もなくゴロゴロしているのであれば、杏華と魔術の練習をしていた方が有意義な時間の使い方といえるだろう。

しかし、金が欲しいのに、金にならない面倒事を処理しなければならなくなってしまった事実はどうしようもない。おそらくこんな日々が続いてしまうのだろう。



予想は当たり、杏華の魔術の練習はライフルが完成したというカサリの連絡があるまでの数日間続いた。

テンションの上がらない俺に対し杏華は根気よく俺を引きずっては練習に付き合わせる。


「あの野郎!キョウカ様に何て態度をとりやがる!」

「キョウカ様に言われたら二つ返事で[ハイ!]だろうが!」

「・・・全員でやるか?」

「待て。確実にやれる時じゃないと返り討ちにあうぞ。奴はAランクで、キョウカ様が信頼を置くほどの逸材。俺達が束になっても勝てない可能性がある。」

「確かにそうだ。いけ好かない野郎だが実力は確かだ。」

「ッチ!ちょっと強いからっていい気になりやがって!」

「闇討ちの策を練るぞ!」

「「「「「おぉー!!」」」」」


ふざけた陰口が俺の耳に届く。出来れば俺のいないところでやって欲しい。聞こえてるんだよ馬鹿ども。


カサリから連絡があるまでの間、根も葉もない変な噂が飛びかい、面倒な状態になっていたことは言うまでもない。

消火を手伝ってくれたレイラさんには頭が上がらない。今度またお礼をしなければいけないだろう。

カサリの試作品完成が早かったのも嬉しい誤算だ。お礼はしないが。



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