ChristmasParty 3
パーティーはビュッフェスタイルで、自分で取り分けてテーブルで食べる。
「隼人さんは何を食べているのですか?」
杏華が、少し珍しい唐揚げのようなモノを食べている隼人に声をかける。
「持ち込んだ食材を料理してもらった。部位は、まぁ・・・コカトリスの尻尾かな?」
「ボンジリですか?そのわりには脂身が少ない気がしますわね。」
杏華はコカトリスが鶏の魔物だと聞いていたので、尻尾と聞いてお尻の肉を想像する。普通の鶏であれば、隼人の尻尾という表現が間違いで、杏華の回答が正解といえるだろう。
しかし、今回は隼人の表現が正解の部位である。
「食べるか?」
「美味しいのであればいただきますわ。」
「杏華、待ちなさい。」
隼人と杏華の会話に、雫が割って入る。
「どうかしましたか?」
「私の認識が正しければ、コカトリスの尻尾はアレよね。」
「・・・ばれたか。」
コカトリスの尻尾について、雫は正解を知っていた。
「?」
「杏華、コカトリスは前が鶏で、後ろがヘビの魔物よ。」
「というと、尻尾なのでヘビなのですか?」
「そうなるな。」
「・・・」
突然のゲテモノ料理に、杏華は顔を引きつらせて、雫は食わせようとした隼人を睨みつける。
「なんで睨むんだよ。」
「あんたが杏華に変なもの食べさせようとするからでしょ。」
「変なのは認めるが、さすが王宮の料理人、めちゃくちゃ美味いぞ。」
「知らないわよ。こっちに近づけないで!」
「・・・残念」
モノがモノだけに、敬遠されてしまったゲテモノ料理を食べながら、隼人は独りつぶやいた。
「はいは~い。大人のお話がある人は退室したから~メインイベントのプレゼント交換をしよ~。」
「受付で渡したけど、普通に交換するの?」
「違うよ~。特別にビンゴを用意しました~。いえ~い。」
「じゃあ始めるよ~。ビンゴした人から好きなのを取ってってね~。」
異世界から来た面々はビンゴを知っていたが、こちらの世界にビンゴが無かったため、ゲームの説明から始める。
「リーチですわ!」
「隼人、キミは全然空いてないみたいだね。」
「うるさい。数を開ければ良いってもんじゃないんだよ。」
「2つのどちらかがこれば揃うのに、なかなか来ないものだな。」
「16・・・16・・・」
各々、自分のビンゴカードとにらめっこをしながら着々と穴をあけていく。
その顔は必死でありながらも楽しそうで、結衣は企画して良かったと思いながらビンゴのガラガラを回す。
「・・・あ、そろいました。」
「おぉ~カミルくんおめでと~」
「ボクが最初でいいのでしょうか?」
「大丈夫だよ~。そ~ゆ~ものだから~。自分のプレゼントはわかると思うから~それ以外の好きなのを選んでね~」
「えっと、ではそちらの箱を。」
「ど~ぞ~」
「大きさのわりに重量がありますね。」
「どんどんいくよ~」
ビンゴも終盤。リーチ多数で数字を読み上げるたびに喜びや悲しみの声が漏れる。
「みんなプレゼント開ける~?」
「いいんじゃない?私も皆が何を用意したのか気になるし。」
「良いですわね。」
「じゃあ、カミルくんから~」
「ぼ、僕ですか!?わかりました。」
「これは、人形でしょうか?」
「私のプレゼントのミニゴーレムです。魔石で動くお掃除ゴーレムです。こだわって作りましたので、インテリアとしても使えるはずです。」
「凄い。ありがとうございます。大切にしますねマキナさん。」
「喜んで貰えたら幸いです。」
各々プレゼントを開けて、テンションを上げる。
皆が用意した物は、手作りだったり、高級そうなものだったりと、個性が出ている物が多かった。
そんな中、システィーナが隼人からのプレゼントを開ける。
「・・・ヒッ」
システィーナは小さな悲鳴を上げて包装を開けた中の瓶を落としそうになる。
中に入っていたのは、お酒ではあるのだが、酒瓶の中にヘビの生首が浮かんでいた。
「あぁ、それ俺からだ。ハブ酒を元に、コカトリス酒を作ってみたんだ。かなり良い出来だぞ。」
泣きそうなシスティーナに対してのほほんと説明する隼人の肩を、雫がガシッと掴む。
「隼人?なんてモノを用意しているのかしら?」
隼人は、ギギギっと音がしそうな鈍い動きで振り返ると、そこには般若が居た。
毛が逆立ちそうな雫の様子に、なんとか説教を逃れようと隼人は言い訳を始める。
「お、面白いかと思って。ね、ネタ枠?」
「要らないわよそんなの!」
「ごめんなさい。」
隼人は、土下座をしそうな勢いで謝り、システィーナにも謝罪を入れる。
一応本当にネタ枠で用意していたので、喜ばれなかった時ように用意していたもう一つの箱を開けてもらうようにお願いする。
隼人のプレゼントは紙袋に二つ。先に開けてもらえるようにコカトリス酒を上に袋詰めしてあった。下の箱には、ミレディの店で作ってもらったループスのぬいぐるみが入っている。
「可愛い。」
「肌触りに無駄にこだわった逸品だ。まぁ大切にしてくれ。」
「はい。」
システィーナは、コカトリス酒を捨てそうな勢いで置き、ぬいぐるみを抱きしめる。
「最初からそれだけにしておきなさいよ。」
「ぬいぐるみが男に当たったら嫌だろ。両性に喜ばれるモノが思いつかなかったんだよ。」
「かといって、僕でもあれを貰って手放しで喜べないけどね。」
「・・・そうか。」
隼人は、光輝にもコカトリス酒を否定されて、さすがに肩を落とす。
「こ、このお酒は、お父様にプレゼントしておきますね。」
「あぁ、是非そうしてくれ。」
最終的に、被害者であるシスティーナにフォローされて、苦笑いをする。
そんなこんなで、クリスマスパーティーは大成功で幕をとじた。
その後、隼人には雫からの長時間の説教が待っており、ボロボロになったところを結衣に励まされて人間の温かみに触れた。
さらに後日、コカトリス酒を呑んだオルコット卿から大絶賛のお礼の手紙が届き、コカトリス酒の販売に本腰を入れる事となった。
年内に上げられてのでセーフとしましょう。
まぁ、誤差ですよ。
次回から元の話に戻ります。




