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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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説教

「さっきのは、ちゃんとお互い同意の上での戦いだったんだぞ。」


完全に同意であったかは怪しいところではあるが、一応理解したうえで攻撃されてるから同意したという事で問題ないだろう。


「そんなことはどうだって良い!これを見ろ。」

「・・・手紙だな。」


ガイアスが取り出したのは、4枚の手紙だった。全てが上質といえる封筒とそれぞれ別の蝋印が押されている。封は切られているので、中は読み終わっているのだろう。


「あぁ。ここ数日で届いたお前に関する手紙だ。」

「はぁ?何もやらかしてないはずだぞ。」


そんな良いところから苦情が来るような真似はしていないはずだ。・・・きっと。


「逆だ。差出人はムスペリオス冒険者ギルド、オルコット伯爵家、ゼクレス侯爵家、しまいにはムスペリオス王家からも届いてる。みんな口を揃えてお前をランクアップさせろだと。ほれ、ギルドカードを出せ。」

「・・・断る。」


俺は寄こせと言って出された手を払いのける。

ランクアップなんてしてしまったらAランクじゃないか。何でわざわざそんな目立つランクにならなければいけないんだ。


「無理だバカ野郎!各方面から怒られるわ!」

「くっ・・・これは何かの陰謀だ。」

「何だそのやられ役の台詞は。オルコット伯爵は護衛でこれ以上ないくらいの最高評価、ゼクレス侯爵は嫡男が指導力を絶賛、ムスペリオス王家とギルドは魔王との戦いの評価で手紙をくれている。理由はバラバラ、陰謀も何もないだろ。」

「・・・しかし、俺がカツアゲ紛いの素行不良を見せたのは確かだ。ここは1度審査する必要があるな。」


素行の悪い奴は高ランクにはなれない。確かそんな事を言われたような気がする。


「往生際が悪すぎる。功績に対して素行不良の規模が小さすぎる!審査の必要もないな。諦めてカードを出せ。」

「チッ、これですむと思うなよ。」


俺はガイアスに捨て台詞話吐き捨ててからギルドカードを押し付け、その足でずかずかと退室する。


「・・・お前、マジでどうしたんだよ今日。」


そんな、良く解らないテンションの俺についてこれず、ガイアスは一人取り残された部屋でそっと呟いた。



個室を出て、ギルドのホールに戻ってくると、目を覚ました三人組が正座させられて、ギルド職員に取り囲まれていた。


「レイラさん、何が起きてんの?」

「ここ最近の彼らの素行は目に余るものがありましたので、これを気にギルド職員の皆でお説教してるみたいです。ほとんどが女性職員なのが良く分からないところですが。」


囲んでいる職員は、ほとんどがレイラさんを後押ししようとしているメンバーであるという事を2人は知る由もない。


「まぁ、レイラさんに迷惑かけたんだからそうなるわな。」


アルカディア王国の王都ギルドの副ギルド長だ。迷惑をかけていい道理が無い。


「ハヤト様こそ大丈夫でしたか?」

「呼ばれたのは今回の件じゃなかったよ。ギルドカードを持ってかれた。」

「ということは、手紙の件ですね。おめでとうございます。で、あってますか?」

「どうだろう?普通はめでたいはずなんだけど、どうも嬉しくないな。」


どうやら手紙の件は知っていたらしい。おめでとうに疑問形なのも、俺の事を理解してくれているようで、むず痒い感じがするが嬉しくもある。


「ハヤト様らしい回答ですね。依頼の件はどうしましょうか?」

「取り敢えず、聞くだけ聞かせてくれ。」


金が要る事実は変わらない。一回の依頼で目標金額に達することはないので、そこそこ良い稼ぎの依頼を何度か受ける事になるだろう。善は急げだ。さっさと借金生活から抜け出そうじゃないか。


「解りました。こちらが今回の依頼書です。依頼内容は、討伐です。先日の人為的大進行で森の生態が少し乱れておりまして、何度かに分けて中規模な調査をしています。最近コカトリスが確認され、調査団体の数名が石化されました。これの討伐をお願いします。」


レイラさんは、カウンターの下から依頼書を取り出して俺に説明をしてくれる。


「なるほど、その石化とやらの対策はどうすれば良い?」

「石化を予防・解除できるポーションがありますので、事前に飲んで予防すれば、石化を遅延できます。戦いにくくはなりますが、その後自然治癒します。早急に治したい場合は、患部に振りかけて掴ます。それと、ポーションの効果時間には十分お気を付けください。」


石化は金で解決で出来るみたいだ。まあぁ、調査団体が石になって治らなかったら、もっと慌ただしくなっているだろうし、こんなもんなんだろう。


「わかった。コカトリスの出た場所の地図をくれ。ポーション揃えて明日行ってくる。」

「では、資料を取って参りますので、少々お待ちください。」

「よろしく。」


レイラさんは奥へと下がっていき、少しして資料をいくつか抱えて戻ってくる。


「お待たせしました。こちらがコカトリスの情報が書かれた資料で、こちらが森の地図です。コカトリスが目撃された場所にはバッテンをプロットしております。」


目撃場所は、10ヶ所くらいあった。いくつか大きく離れた場所に印があるが、大多数はかたまっている。おそらくその辺りに寝床でもあるのだろう。捜索はその辺りを中心に進めるとしよう。


「意外と多いな。」

「調査外で、何組かの冒険者が遭遇して被害を受けています。」

「なるほど、それでさっさと倒したいわけか。」


調査団体が遭遇したにしては数が多いと思ったが、一般人や別の依頼の冒険者が遭遇しているのだろう。早いところ手を打ちたい気持ちもわかる。


「はい、よろしくお願いします。」


それから少しの間、コカトリスについての説明を受ける。


「大体わかった。助かったよ。」

「いえ、ギルド職員として当然の仕事です。お気を付けていってらっしゃいませ。」

「あぁ。」


レイラさんにお礼を言って、カウンターに背を向け、ホールの方を見ると、いまだに三人組は怒られていた。


「ちょっと一言だけ良いか?」

「レイラさんは優しいから調子に乗ったんだろうけど、今後迷惑かけるようなら俺が教育し直してやる。・・・わかったか?」

「「「は、はひぃ。」」」


俺の殺気を込めた一言に、震えながら返答する三人組。これで大丈夫だろう。そう思って、ギルドを出る。

後ろからキャーキャーと、女性職員のピンク色の声が聞こえてきたが、特に気にせずに外に出てポーションの買い物を済ませた。

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