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裏方の勇者  作者: ゆき
水の都騒乱編
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プレゼント

カフェを後にした俺達は、またフラフラとウィンドウショッピングをしながらミレディの店に向かう。

今日はこれで終わりだと思っていたのに、まさかの時短である。

今日二件も終わらせてしまったら、王宮暮らしが早まるじゃないか。

少し、遠回りをしながら目的のミレディの店に着く。


「いらっしゃぁい。」


来店を知らせるベルの音に反応して、ミレディの裏声が店内に響き渡る。

相変わらず客はいないようだ。


「久しぶりだな、店長。」

「あらぁん、ハヤトじゃなぁい。元気そうで良かったわぁん!」


ミレディは、くねくねとした変態の動きで、こちらに近づいてくる。


「は、隼人さん。一度店を確認した方がいいですわ。本当にここであってますか?」


杏華はミレディを見て、本能的にマズいと思ったのか、ススッと俺の後ろに隠れる。


「残念ながら合ってる。隠れた名店らしいぞ。」

「ハヤトがあてぃし以外の女の子を連れ込んでるぅ!あてぃし、ジェラシィ~!」

「・・・うざい。騒がしい店長だけど目利きは確かだ。」

「そ、そうなのですわね。わかりましたわ。」


杏華はわかったと言いつつ、前に出ようとしない。まぁ仕方ないだろう。


「ちょっとぉ聞いてよぉ!どこの泥棒猫なのよぉ!」


ミレディはミレディで一人で盛り上がっている。俺一人では対応しきれないんだけど、誰でもいいからこのカオス空間を何とかしてほしい。


「マジで話にならん。店員さんを呼んでくれ。」

「・・・うちの店長がすみません。」


騒ぎを聞きつけて店員さんが奥から出て来る。これで何とか助かった気がする。店員さんはここに店の唯一の良心だと思う。


「取り敢えず、インナーの修理を頼む。」

「かしこまりました。」


いまだに現実に帰ってこないミレディを無視して、事務的なやり取りを店員さんと済ませる。

今日はやる事が色々とあるので、スムーズに終わらせていきたいところだ。


「ちょっとぉ、ハヤト無視はダメよぉん!」

「面倒臭いなをこれでも鑑定して黙っててくれ。」


やる事の一つである、フィーレから貰った魔石をミレディに投げ渡す。これで黙ってくれるとうれしい限りだ。


「あてぃしには無理よおぉん。店員ちゃん、この魔石を調べてちょうだぁい!」

「わかりました。」


どうやらミレディは鑑定は出来ないらしい。店員さんに魔石が渡り、店員さんは魔石を興味深そうに持って、真剣な目でまじまじと見つめる。


「やっぱり、店員さんの方が優秀だよな。」

「店長さんの仕事っぷりは見ておりませんが、店員さんは優秀ですわね」


ミレディが落ち着いてきたので、杏華も顔をのぞかせて会話に参加する。どうやらミレディのキャラにも慣れてきたようだ。


「二人ともひどぉい。」

「解析、終わりました。この魔石は、生物の拡大縮小の魔術が使えるようになるものです。」

「それ、めちゃくちゃレアじゃなぁい!」

「・・・なるほど。その魔石を、依頼してたループスの首輪に付けることは可能か?」


どうやらフィーレは、ループスを小さい姿に戻せるようにしてくれたらしい。確かにそんな事が出来ればまた宿の部屋の中にも連れていけるし、外で待っててもらう事も無くなるだろう。


「できるけどぉ、首輪のデザインの変更が必要ねぇ。」

「じゃあ頼む。」

「簡単には言うわねぇん。店員ちゃん出来るぅ?」

「はい、無色でなんにでも合う魔石なので、今の首輪に合う空枠を作って、首輪を少し調整すれば数日で仕立て直せます。」

「だそうよぉ。もちろん変更の代金も貰うわよぉん。」

「わかった。受け取りの時に渡す。」


数日で完成するのはありがたい。戻ったらループスに教えてあげよう。きっと喜んでくれるだろう。

その前にお金を稼がなくてはいけない気がする。カサリの所にも結構な額を置いて来てしまったし、ループスの首輪も安くはないだろう。ミレディからも請求されるとなると、残高が心もとなくなってしまう気がする。


「わかったわぁん。そ・れ・よ・り・も、何か買っていかなぁい?」

「今のところ何もいらない。」

「そっちの勇者ちゃんの妹ちゃんわぁ?」


自己紹介してなかったが、杏華の事知ってんじゃないか。まぁ、カサリが知ってたくらいだし、ミレディが知らない訳ないのだが・・・。


「わ、わたくしですか?」

「ハヤトもデートならぁ、何か買ってあげるものよぉん!」

「デ、デートではありませんわ!」


杏華が、デートというワードにいち早く反応して顔を赤くしながら否定する。


「・・・そう言うことだ。」

「相変わらず冷めてるわねぇ。男なら買ってあげるものよぉ!」

「お前は売りたいだけだろ。」

「親切心よぉん。し・ん・せ・つ・し・ん。」


俺から金を巻き上げていくことが、どんな親切心なのか教えて欲しいものである。


「そうか。さっきの話からすると、アクセサリーは店員さんが作ってるのか?」


ループスの首輪も店員さんが作ってくれているような話し方だったので、確認の為に聞いてみる。


「そぉねぇ、あてぃしは服専門。店員ちゃんは小物作りが上手いわよぉん。」

「わかった。杏華、欲しいアクセサリーがあれば買おう。」

「ちょっとぉ!何でよぉ!」


俺の発言にミレディが食いつくが知った事ではない。


「よ、よろしいのですか?」

「こんな所に付き合わせたお詫びだ。服を買って変態が移ったら光輝に申し訳ないから、アクセサリーにしておいてくれ。」

「わ、わかりましたわ少し見てきますわ。」


杏華は、赤い顔をごまかす様にパタパタとアクセサリーコーナーへと駆けていく。

ミレディがこちらに向かって『良いアシストでしょ』みたいな顔をしながらウインクしてくる。本当にデートだったらいいパスだったかもしれないが、あいにくそんな色気づいた関係性ではない。

そのため、ミレディは自分が金を巻き上げることに成功しただけだということに気づいていないようだ。良い迷惑である。


「こ、これにしますわ。」


杏華は選んできたネックレスを俺に見せて来る。金色のチェーンに、ルビーの様な真っ赤な宝石がついたネックレスだ。少し派手さはあるが、そこまで主張は激しくないので、杏華の今日の服装にもワンポイントとなってマッチするだろう。


「良いんじゃないか?店長、お会計。」


言われた金額を支払って、会計を済ませる。ネックレスは、店員さんが選ぶのを手伝ってくれたおかげか、そこまで高額商品ではなかった。


「隼人さん、つけていただけますか?」

「・・・あぁ。」


杏華にネックレスを手渡される。

杏華は後ろを向いて、つけやすいように髪をかき上げる。細く白い首筋に手を回した時、ふわりと薔薇の様なフローラルな香りが香る。

少し動揺して、もたつきながらも何とかネックレスを付ける事に成功する。

光輝だったらもっとスムーズにいったのだろう。そういう所は慣れてる人間がうらやましく思う。


「どうでしょうか?」


杏華はこちらに振り返り、目を潤ませつつ上目遣いで感想を求めてくる。


「・・・似合ってるよ。」


予想通り似合っていて、ワンポイントとなった赤が服装のコーディネートを引き締める。

どうも口下手な俺は上手く形容出来ず、似合ってる以外の言葉を出せなかった。


「ま、まぁ、及第点ですわね。」


杏華はそんな俺の言葉を聞いて、プイッとそっぽを向く。及第点と言いつつその行動はどういう意味だろう。・・・ダメだったのを何とか合格点に引き上げてくれたのだろうか?


「・・・なんかのテストか?上手いこと言えなくて悪いな。」

「構いませんわ。」


俺の謝罪に対して、杏華はこっちに向き直って笑顔で微笑んだ。

[謝罪]本当は前回「あ~ん」を書きたかったんです。しかし、書いている途中で「こいつ等にはまだ早い」と思ってしまったのでやめました。身の無い1話になって申し訳ない限りです。お詫びにもう少しイチャイチャさせます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 杏華、もう少しで完全に落ちそうw 結依と雫はどうするのか...(そもそも主人公に対して恋愛感情はあるのか)
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