模擬戦2
「では改めて名乗らせて貰う。クラン・竜の息吹所属、冒険者ランクAのリリィだ宜しく。」
「冒険者ランクCの隼人だ、お手柔らかに頼む。」
リリィさんはレイピアにプロテクターを付けて、切れないようにしたレイピアを構える。
「このコインが落ちたら開始の合図としよう」
そう言ってコインを上へとはじく。
コインが落下し、地面に着いたと同時に、リリィさんが走り出す。
ガイアスよりもはやい速度でこちらへと向かってくる。
「はあ!」
レイピアの間合いに入った瞬間、目にもとまらぬ速度で刺突が飛んでくる。
ぎりぎりで横へと躱し、カウンターは取れそうにないが、牽制でジャブを入れ後方へと距離を取る。
ジャブは余裕で躱されたが、追撃は飛んでこなかった。
・・・?ジャブの拳がリリィさんに近づいた時、変な感覚になった。
左手を見るが何ともない。
「どうかしたか?」
「何でもない、続けようか。」
お互いに構えなおす。
ファイヤーボールを2つ出し、時間差でリリィさんへと放つ。
一発目を正面に、二発目をリリィさんが避けて動いた先へと飛ばす。
案の定、二発目は避けずにレイピアで弾いた。
その瞬間を狙い、一気に距離を詰め、攻撃に出るが、間合いに入ると牽制の突きが飛んでくる。
少し無理に攻撃を敢行するも、牽制の突きからレイピアを真横に薙ぎ払われる。
倒れながら避け、地面を転がってまたも距離を取る。
今のタイミングでいけないということは、完全に速度で負けている。
数秒の睨み合いに、風が髪を揺らす。
建物内で風?
そんなことを考えていたら、リリィさんが寸前のところまで迫ってきていた。
「ぐぉ!」
レイピアの刺突を腹にもろにくらい吹っ飛ぶ。
「戦いの中、考え事とはいい度胸だな。」
「悪いね、だが謎が解けた。」
彼女の魔術の属性は風で、空気をスラスターにして加速している。
これは火でも出来るだろう。パクらせてもらおう。
そして風の鎧で攻撃を反らされている。
鎧を突破するだけの威力を出さなければいけない。
リリィさんのほうへと走りだし、牽制が来る距離で大きく横に跳ぶ。
死角に回るようにして、右ストレート
パンチにロケット噴射のような炎の使い方をして、速度と威力を出させる。
「っ!」
レイピアの腹で受けられるが、リリィさんから苦悶の声が漏れる。
「こんな感じか?」
「見ただけで自分の技にアレンジしてくるか。」
「悪いね」
「もっと見せてやろう」
リリィさんはニヤリと笑い、同じように突きを放ってくる。
同じ軌道なので同じように躱そうとするが、見えない何かがぶつかり吹っ飛ぶ。
「【纏い】武器に魔術を付加する戦闘技術だ。使えるか?」
「さぁな」
フイーレが言っていた相性が悪いってのはおそらく付加しにくいとかそんな話だったのだろう。
今はやり易い難いよりも出来る出来ないだろう。
ぶっつけ本番でやるしかない。
そう、心に決めて一気に走り出す。
ファイアーボールで牽制をしつつ距離を詰める。
レイピアの間合いに入る手前で炎のスラスターを使い急加速し、左ローキック。
リリィさんは、足を弾かれ少しバランスを崩す。
右ハイキック、ブロックされるが腕は、弾くことができた。
ガードの無くなったところへ【纏い】を使った右ストレートを放つ。
バキッ
「・・・は?」
魔術を付加した手甲が砕けた。
相性が悪いってそういう事?
「魔力を込めすぎだ馬鹿者」
「まさか壊れるとは思わなかった。」
手甲が無くなってしまったなら仕方がない。
訓練場の端に置いてある、刃引きしたロングソードを手に取り構える。
「使えるのか?」
「基本は出来ているはずだ。」
ガイアスが俺に見せたように、纏いを使いながら上段からの振り下ろしを一閃、リリィさんはそれをレイピアで軽く受け流す。
振り下ろしたところから、逆袈裟に切り上げ、それも後方に跳び躱される。
さらに追撃で、レイピアの剣先を弾いてから、突きを放つ。
ひらりと躱され、反撃で突きが飛んでくる。
こちらもすれすれで躱すが、その後さらに二撃、息もつけない三連撃にまたも吹っ飛ばされる。
転がった先で、次は槍を拾い、剣を投げて牽制し、突き、払いと穂先・石突を使いながらレイピアの間合いの外からも攻撃をしてみる。
すぐに間合いに入られ、連撃でボコボコにされる。
訓練場の武器をとっかえひっかえしながら様々な攻撃を繰り出す。
「そこまでだ!!」
お互いにヒートアップしていき、攻撃が大技になってきたところで、訓練場のドアが開く。
ガイアスとレイラさんが入ってきた。
なんか怒ってる気がする。
「お前らやり過ぎだ!!」
そう言われてあたりを見回すと、地面はひび割れ、備品は破壊されてあちらこちらに散乱していた。
「すまん気づかなかった。」
「備品は私物じゃねぇ!弁償だ!」
マジか、まずいな。
「ガイアスお金足りんかも・・・」
「あほかお前は!」
「ハヤト様、支払いができない場合、借金奴隷として売られてしまいます。」
レイラさんが補足してくれるが、まったく喜べない情報だよ。
マジか勇者が奴隷堕ち?
結構やばいやつじゃん、奴隷とか扱い酷そうだし
「待ってくれ、訓練場の破壊は私にも責任がある。」
「リリィさん大丈夫です。こういう時の為の奥の手があります。レイラさん、修理の請求はあそこ(王宮)にしてくれ。冒険者で儲かったら返す。」
「よろしいのですか?」
「大丈夫だろ。」
「では、請求書を送っておきます。」
何とか事なきは得た。
後日、請求書を見てお姫様がキレたとか




