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転移する理由が見つからない 086

大慈が完全にブチ切れています。

転移する理由が見つからない 086





痛み、とはどういうものか。

存在の破損。歪み。それを与えることだろうか。

ならば、打ちのめされるこいつは痛みを味わっているだろうか。


苦しい、とはどういうことか。

呼吸が出来ない状態。救いがない状況。

ならば、のたうち回るこいつは苦しみを味わっているだろうか。


辛いとは、どんなものか。

終わりが無い、先が見えない状況。

ならば、這いずりもがくこいつは辛さを味わっているだろうか。


遠慮なく、いくらでも喰らえよ。


言葉に出来たかわからないが、やることは変わらない。

俺の人生の答えを返したこいつに、望み通りの答えを、思う存分楽しんでもらうだけ。


そのために俺は、全力で腕を振るう。

遠慮や情けや容赦などというものは、一切必要ない。

そんなことをこいつが望んでいるなんてあるはずがない。認めない。


望んだものが振る舞われる度に、こいつは世界を震わせるほどの絶叫を上げる。

何故か俺から離れようと転がりまわり、その巨体を揺らして足掻く。

だが動くようにつくってこなかった緩みきった奴が、動き続けないと死ぬような環境で鍛えられた俺から逃げられるはずも無い。

動きを先読みし、向かおうとする方向へと先回りして更に喰らわせる。

もういらないとでも言うように差し出される手を蹴り落とし、更におかわりを与える。

むさぼり食い続けて形作られた身体は、俺が与えるものを全て喰らい、それでもまだまだ求めている。


観察者という存在は、俺なんかよりよっぽど丈夫で頑強だ。

裂けても繋がり、爆ぜても塞がり、折れても戻る。

一瞬の間に壊れて治る。再び壊せば再び治る。

俺が人生で味わい続けてきたものを、まるで一度も味わったことが無いような身体。

その外側から内側まで、一点の隙間も残さないよう食らわせ続ける。


時折、俺が近づくのを拒むように壁や盾が現れる。

そういえばジジイがハンマーを出していたし、変態金髪も武器を出していたなと遠くに行った思考がぼんやり思う。


だがそんなものは退ければいいし、避けてもいいし、壊してもいい。

壊すと、それはどんどん厚く堅いものになる。

それが鉄の塊だろうと、ダイヤだろうと、邪魔なら壊す。

そうやって再び近づくと、涙を流し叫ぶ。

そうか、そんなに嬉しいか。なら遠慮するなよ。

何を叫んでいるのか、今更お前の言葉に意味は無い。

だから、一切耳を貸さずに、喰らわせる。


どれだけ喰らっても満たされ無いんだろう?

なら俺がその空腹を、端から埋めてやる。

満たされない空虚さを、叩き潰してやる。


痛みと苦しみと辛さと空虚さ。


それが永遠に続くように、喰らわせて喰らわせて、喰らわせ続けてやる。

決して終わらない。

終わらせてなどやらない。


俺は絶対に満足なんてしないから、お前にも絶対に満足なんてさせない。


そんなことをぼんやり思っている間にも身体は動く。


たまにノイズが入ったように、身体が反応して移動する。

なんだか大事なものや、綺麗なものがあったような気がしたが、それもどうでもいい。


ただひたすらに、一切の妥協なく。

肥え太った観察者に喰らわせ続ける存在。

そんな俺が考えることなんて、次はどうやって喰らわせてやるか、だけでいいじゃないか。


それなのに。


視線があった瞬間、身体は動きを止めた。

思考が停止して、殴るのか避けるのか、そこにある…いるのが、誰なのかと、余計なことに囚われ。


答えが出る前に、俺は吹き飛ばされていた。






脂肪が満足するまで決して飽きることなく、永遠に一部の隙間も残さず「喰らわせ続ける」。

カラカナが「食べて」いたように、大慈は「喰らわせて」いました。

しかし何者かが邪魔をして、大慈が完全にそれだけの存在に成り果てるのを食い止めてしまったようです。

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