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転移する理由が見つからない 085

大慈はカラカナの凶行を治めました(物理)。

自分の世界の観察者を前にして、大慈は何を思うのでしょう。


転移する理由が見つからない 085





戸惑いの表情を浮かべる脂肪に、人間みたいな顔も出来るんじゃないか、と思う。


「よ、よくやった…俺のためにあることを、ようやく理解したのだな? ほ、褒めてやろう」


あぁ、そうだろうな。

カラカナがどれだけ脂肪へと干渉したのかはわからない。

古城の壁が一部崩れていたり、未だに世界が揺れているが、それがこいつにとってどれほどのものか。

カラカナが消耗している様子も無いから、一方的に攻めているような状況だったのかもしれない。

どちらも外見に変化が無いから良くわからないが。


多少調子が悪くなっているのか、俺を呪っていたほどには饒舌ではなくなったが。

それが演技なのか本気なのか、判断出来ない。

まぁ、そんなことは、正直どっちでもいいんだ。

俺はお前に礼をしたいだけだし。

その前に一応、確認はしておこうとは考えているが、真面目に答えろよ?


「俺の【糧】たる自覚を持ったのなら、それが全てだとわかっただろう? 俺に食われるという必然に抗うなど、無意味なことだと」

「どうしても、お前には聞かなきゃいけないことがあるんだよ」


調子が出てきたのか、再び饒舌になりだす脂肪を遮る。


俺がこれまで生きていた世界。

それが、こいつが食うためのもので、そこに生きた全てがそうなることが決められていたとして。

俺の親父がクソ野郎だったり、お袋がクズだったり、兄弟がカスだったり。

恋人が出来ても腐ったり狂ったりイカれたり。

頑張って努力して、足掻いてもがいて。

反吐の中を這いつくばって踏み躙られるような人生を、それでも諦めずに真面目に生きて。

耐えて。

耐えて。


耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて。


それでも、真面目に生きて。


だというのに、新芽が助けてくれなければ。

何の報いもないままに、俺はあそこで死んでいた筈だ。


「どういうつもりなのか、納得いく答えがあるんだろうな?」


世界の観察者。

そして、そこに干渉することが出来る存在。

お前は、俺の人生を見ていただけか?

それとも、面白おかしく、遊んでみたか?


「答えろよ」


俺は今、かつて無いほどに穏やかな気分だった。

今までの人生が勝手に再生される脳内から、いろいろなものが溢れてくる。


昔の記憶は反吐がでる物ばかりで、一つ一つがよぎる度に、自分の脳味噌を引きずり出して記憶ごと削ぎ落としたくなる。


それでも俺は冷静だ。


完全に冷静で穏やかでなごやかに落ち着いてお前の解答を一言一句漏らすことなくしっかりと確認出来るこの瞬間をどれだけ待ち侘びたかお前には理解出来ないだろうが納得出来るもの以外は一切認めないから覚悟して口を開けよ!


「不味そうな存在のお前を食い易くなるように、手を加えてやった俺の親切心がわかったか! 打ちのめし絶望させ、お前が自分の存在を委ねるように仕向けた! その成果がやっと出たか! 最も【糧】として不出来なお前も、俺に食われることの必然がわかったなら、来るがよい! 望み通り食らってやろう!」


満面の笑みとともに、俺の人生の答えが返って来た。


ブツン、と何かが弾け飛んだ音がした。


ダムの決壊のようなマジギレのマジギレ。

脂肪が示した大慈の人生の答えは、彼になにをもたらすのでしょう。


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