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転移する理由が見つからない 076

気絶した女性を連れて、避難する方法を探すようです。

転移する理由が見つからない 076





気を失った人間は重い。

脱力している分、重心が下がるのだろうか。


だが左腕に感じる重さは、心地よいものだと思う。

他人の存在を快く思ったのは何時いつぶりだろうか。

そんな無意味な思考に飛びそうになるのを堪えて、左腕に感じる引き締まった柔らかな存在を確かめる。


踏ん張りが利かない右脚は、関節を伸ばす事で一時的に凌ぐ。

右腕全体と肩で壁を使い、バランスを保つ。

両腕で抱き上げるのも考えたが、揺れた時に思い切り落としそうなのでやめた。

並んで立つ様にして彼女の右腕を肩に回し、左手でベルトを握る今の体勢の方が安定する。

背丈の問題で彼女の足が引きずられているが、そこは仕方ない。

ガラス片などは無さそうなので、とりあえずは逃げる事を優先させる。


玄関へとたどり着くまで、どれだけ時間がかかったのか。

荒くなった息が彼女の前髪を揺らし、倒れるには早いと自分に言い聞かせる。


玄関を押し開けようとして、ノブを回して押す。

僅かに動き、止まった。

何が引っかかったのかと思い、隙間から見える廊下の様子を確認する。


「…嘘だろ」


ドアに当たっていたのは、廊下の床だった。

沈下しただけでは無い。

開いた、という事は廊下とドアが離れているという事だ。

しかも、こちらが低く、部屋の奥へと傾いている状況。


まさか、時間が経てば部屋ごと崩れ落ちるのか?


窓の方へと戻って、崩落しないくらい離れた家まで移動し、改めて玄関から出る。

そして階段へと向かい、崩れ落ちるよりも早く地上へと下り、マンションが倒れても平気な場所まで離れる。

それだけの事を、今すぐにやらないといけない。


出来るかどうかではなく、やらないと死ぬのだ。

ため息を漏らす暇すら惜しみ、窓の方へと進もうしたが、身体が浮いた。


無意識に身体が動き、左腕が彼女を抱き寄せ、右腕は彼女の頭を抱える。

彼女を抱いて床に倒れた俺の身体が、窓へと向かって滑る。

無理矢理足を床に踏ん張らせた甲斐があったのか。

どうにか止まる事が出来ても、全く安心出来ない。

ベランダへの角度はあからさまになり、サイドブレーキを忘れた車なら、その外までダイブすると思える程になった。

頭が坂の下にある分、急な角度に思えるが、大体20度くらいか?

問題は、そのくらいの角度まで床が傾いた事では無い。

そこまで家が傾くほどに、マンションが倒れかけているという事だ。


「…何?」


更に最悪なのは、こんな状況だというのに彼女が意識を取り戻した事か。


「死にたくなければ動くなよ」


誤解を受けそうな物言いだと思ったが、他に言いようが無い。

気付いたら見知らぬ男に抱き締められている状況で、意外にも彼女は暴れなかった。

身体が傾いている事や、煙が窓から入って来ている事などが、彼女に異常事態だと理解させたのかもしれない。




立花が気絶から回復しましたが、マンションの崩壊が進んでいます。

果たして無事に脱出する手段は残っているのでしょうか?

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