転移する理由が見つからない 066
パーティメンバーが変更になった時には、装備品の変更をしますよね?(RPG脳)
転移する理由が見つからない 066
帰ることに決めたとしても、結局は状況が変わらない。
元の世界の観察者がいないと帰る手段が無いのだ。
カラカナ様は何故か俺たちを見送るつもりでいるらしく、変わらない笑顔でみかりんをからかっているが、俺は全く止める気にならない。
立花のポテンシャルを見抜いて着替えをさせた、素晴らしい女神様のする事を止める理由は無いからな。
正に眼福というに相応しい物を見た。
以前にみかりんがされた時のように、十二単、スク水、ウェディングドレス、ゴスロリ、学ラン、スーツ、ナース…本人がやめろと言ってもカラカナ様が止めるはずもなく、様々な格好へと変えていく。
イブニングドレスになり、ビキニになり、それが更に手ブラになった瞬間には
「いやァァァっふウゥゥゥゥッッ!!」
と訳のわからない奇声が自然と漏れて、全身でガッツポーズをとっていた。
その瞬間の後ろ回し蹴りの光景は、目を閉じればスローで自動再生されるほどに脳裏に焼きついた。
足刀が眉間に当たる瞬間まで、しっかりと思い出せる。
走馬灯でこれが見えたら俺は死んでも復活出来るだろう。
それほどの活力を俺に与えてくれる、素晴らしい光景だった。
残念ながら、既に元のエプロン姿になってしまっていたが、俺の脳内では立花を見るだけで全ての格好が再現可能だ。
再び奇声が出そうになるのをこらえていたら睨まれた。
「…あたしも同じく着替えさせられたのに、あたしは眼中にねえのかよ?」
何故かあるむが苛立っているが、よくわからない。
見慣れない人間が増えて、軽いパニックになっているのか? まるで吠えやすい飼い犬みたいな奴だな。
そう思いながら突き出された槍を払って、頭を撫でる。
「や、やめろよっ! 撫でんなっ! テメェらも止めろよっ!」
「みかりんみかりん、なんでそんなに紅くなっているのカナー?」
「……あぅ」
「女同士で何照れてんだ? それよりこのオッサンなんとかしろっ! 笑いながら撫でんなっ! こえーんだよっ!」
おお? 気付かないうちに高笑いをしていた。
素晴らしいものを見てテンションが高くなっていたらしい。
あるむから手を離すと、怯えたようにみかりんの背後へと隠れて槍をのぞかせる。
背後から抱きしめられるように盾にされて、みかりんの顔が更に紅くなる。
ん? 風邪でもひいたか?
「なるほどネー。みかりんはこーいうのがタイプだったカー」
「な、何がです?」
みかりんの反応にカラカナ様が御満悦だ。
うん、放っておこう。
立花の方に目を向けると、何故かさっきよりも距離を取られていた。何故だ。
警戒されながら、躙り寄るようにして立花へと近づく。
普通に近づいたら、また山突き貫手とかが出てきそうなので。
実際、動きに合わせて反応して重心や姿勢が変わってるし。
どうせ撫でるのなら、あるむよりも立花を撫でたい。
そんなことを考えながら近づこうとして一進一退を繰り返していたら、世界が揺れた。
一部パーティメンバーの装備変更をカラカナが行いました。
・大慈からカラカナへの評価が最高に達しました。
・立花からの警戒心が最高に達しています。
・あるむの自尊心がちょっと傷つきました。
・みかりんは目の前でいろいろ見えたものに対してドギマギしています。