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転移する理由が見つからない 061

スライムとの戦闘が続いています。

転移する理由が見つからない 061





自由落下の速度は、時間に比例して増していく。

それを体感しながら、重心を移動させて角度を変えて行く。

大事なのはタイミングと角度だ。

そう思いながら、俺は加速していく。


俺が加速する中、あるむは定位置に移動していた。

槍を投げていた時はそれなりに離れていたため、恐怖感が薄かったのだろう。

スライムに接近してもらう必要がある。

それを説明したことで今更スライムの危険性を感じたのか、深呼吸をして落ち着こうとし、たまに天を仰いだり頭を掻いたりしている。

それでもイメージトレーニングしているあたり、やるべきことをやる覚悟は出来ているようだ。


立花は餌を挟んだ反対側、へ文字の長いほうくらいの位置で剣を下げて立っている。

緊張した様子はなく、まるで剣士のような佇まいに、カラカナがいたら袴姿とかにしていただろうと残念に思う。


餌は変態金髪とハルだ。

その前には蠅がいて、震えながら文句を言っている変態金髪と話している。

フラフラと不規則な飛び方をするのをハルが顔を向けて追っている。

見ていると目が回りそうだ。


「何故、囮などをせねばならん! 退避すれば済む話ではないか!」

「…彼を救い出す………実に勇者らしいで………」

「見るのとやるのは別なんだよねっ!」

「…」


変態金髪の文句が聞こえるが、蠅に説き伏せられたようでおとなしくなる。

その様子を見比べていたハルが楽しげな声をあげているが、どちらも相手をする暇はない。

立花も興味がないのか、スライムだけを見ている。

そのスライムは、真っ直ぐ餌に向かっていく。

俺は回転するように周囲を落下し続け、スライムの後ろへと移動する。


少しして、激しい打撃音と、かすかに変態金髪の悲鳴が聞こえた。

ショックで死んだかもしれないが、確認は後でもできる。

まずはやるべき事をやろう。


今スライムは蠅が生み出した【足場】にぶつかって、めり込んでいる。

このスライムは赤い観察者が何かしたために、本来とは違いゴムボールのような物になっているためだ。

そのせいで転がったり弾んだりする物になっている。

それが【足場】に正面からぶつかるとどうなるか?

答えは簡単。反対側に跳ね返るわけだ。

ほんのわずかな時間、球形が歪んで形を変える。

【足場】を中心に食い込んで、反対側の中心点がより顕著に盛り上がる。

そこへ、


「ウオラァァァァッ!!」


全力の一撃を、雄叫びと共に叩きつけた。

全体重と回転と重力加速度を併せた一撃は、跳ね返ろうといていたスライムの表面にあった庭石を震わせる。

そのまま振り抜くように力を込めて、叩きつけた釘バットもろともに【足場】をイメージして抑えつける。

インパクトの衝撃で腕が弾かれそうになるのに併せて、重心を90度移動。

落下の勢いと弾かれた勢いを利用して、スライムから離れるべく再び落下する。


現実では絶対に出来ない移動を一瞬のうちに済ませ、落下しながら振り返った。


両側から抑えつけられ、スライムはその勢いもあって一時的に球形から楕円形になっていた。

身動き出来なくなったスライムの姿に、まるでカビた今川焼きみたいだ、と思いながら痺れた腕を振る。

さて、あとは任せて大丈夫かな。

とりあえず、重心移動で落下を止めないと、うっかり着地したら死にかねんし。



あるむよりも立花のほうが速かった。

俺がやっていたように落下をしているのではなく、【足場】を使って跳んで移動していく。

あるむは走って移動しているだけのため、機動が立体的でない分、遅いようだ。


2人にやってもらったことは単純だ。

蠅が受け止めて、俺が抑え込んだ。

その2ヶ所の【足場】が消える前に、球体が飛び跳ねないように周囲を【足場】で固める。

俺たちのように足の裏で立つのと違い、スライムは全身で移動している。

つまり、全身が接地先になっているわけだから、それで動きを封じ込めることができるだろう、と考えたわけだ。


もちろん、一時的に動きが止まった時でないと封じ込めは難しい。

普通にやっても跳ねてしまうため、ああやって無理矢理動きを止めたわけだ。


フォロー役に回った蠅が奇妙な軌道を描いてスライムの周囲を飛んでいる。

全方位を固め続けて、ジジイを切り取れば良い。

倒せたとは言えないが、一応目的は果たせそうだ。





どうやら大慈は釘バットを使うことにためらいがないようです。

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