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転移する理由が見つからない 057

大慈、立花、あるむは勇者への道を選ばないようです。

彼らはこの後どうするのでしょう?

転移する理由が見つからない 057





あるむは勇者になりたがっている厨二病な奴かと思っていたが、本人曰く違うらしい。

変態金髪が、


「私は勇者に成り得る者を転移させる者。その資格があるならば新たな世界へと誘おう」


とか、言ったそうだ。

頭の悪い誘いだが、それに乗る方も大概だな。

まぁ、あるむは転移する気も無くなって、


「もういい。元の世界に帰らせろよ」


と不貞腐れている。

まだ顔が赤いが、からかうな、と六花に視線で釘を刺された。


ちなみに俺たちも勇者にならないか? と誘われた。

六花は保育士の仕事に誇りを持っているようだし、転移する気自体がないようだ。

俺はまぁ、言うまでもない。


他人のために自分を犠牲に?

そんなこと、社会に出たら多かれ少なかれやらざるを得ないもんだろう。

やりたいことだけやっていたら、勤め人なんて絶対出来ないぞ。

しかも俺は家庭を持っていないから、まだマシな方だ。

世の中の真っ当な親は、子供のためにどれだけ自分を犠牲にしていることか。

そういうのを勇者と呼ぶならまだしも、引きこもって肥えていくだけの奴が勇者だと?

鼻で笑うわ。


そのまま言ったらイジケた。

メンタル弱いな変態金髪。


だが正直、こいつのメンタルが折れようが首がもげようが、どうでも良い。

問題なのは、ハルに慰められているこいつが、


「もうこれ以上は無駄だ。こいつら異端者共に機会を与える必要も無い。ハルよ、終わりの時も近い。お前も己が世界へと戻る備えをするがいい」


とか言い出したことだ。


「トレードは終わりかー。でも楽しかったよ! また誘ってよね」

ハルは変態金髪に告げ、六花に手を振る。

「あれが終わりの合図かな? 他の皆にも挨拶しておきたかったんだけどな」


そう言って指差した方を見て、恐怖を感じた。


俺の視覚には【ガラスと明かり】がある。

他のトレード対象者や観察者が明かりとして、どの方向にいるのかが確認できるので、これまでも活用してきた。


だが、指差されたその一角に見えた明かり。

それが消える瞬間が見えた。


今の俺の視界がどれくらいの距離になっているのかはわからないし、距離感を比較するものが無いこの場所では、対象との距離を測るのは難しい。

だが、明かりを消した奴の正体は一目でわかった。


苔を思わせる緑色の球形。


「…スライムだ」


赤い観察者の休憩所で出会った、あのスライムは、明かりに向かって突進を繰り返していた。

それが重なる度に明かりが消えていく。

そして緩やかにだが、こちらへと向かって進んでいる。


「…お前らの世界を見ている時って、俺たちはどうなっているんだ?」

「意識の一部を繋げているだけだ。この場にある本体はそのまま、奴が来れば食われるだろうな」


異世界に転移したら逃げられるだろうが、変態金髪は転移させる気が無い。

ハルに至っては、あれが話したスライムだと理解して気絶した。

くそっ、役に立つ観察者がいねえ。


「なんかよくわかんないんだけど…せっかく異世界に来たんだから、スライムくらい倒して行けってこと?」


あるむに小首を傾げて尋ねられる。

スライムの恐ろしさを知らないからな。

あぁ、でもあいつ最初の液状スライムじゃなくて、ゴム毬スライムのままだな。

あれなら、倒せなくも無いか?




あるむは大慈から体験談を聞いておらず、「スライム=序盤の雑魚」と認識しているため軽く見ています。

逆にハルは対抗手段が自分にないことをわかっているため早々に現実逃避しました。

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