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転移する理由が見つからない 050

観察者ハルが観察している世界について、ちょっと聞いてみるようです。

転移する理由が見つからない 050





崩れ落ちてへこんだハルは、六花が頭を撫でてやると容易く復活した。

若干、鼻声になった説明を要約すると、ハルのテーマは職業選択に近かった。


心臓や脳のオペを困難な状況でも行う天才医師。

超絶技巧で緻密な絵を描く週刊漫画家。

目的地まで如何なる障害があっても送り届けるドライバー。

王族から信の厚い工事をしない配管工。

絶望の代名詞とされる魔物を狩るハンター。

そうした職業について、最高峰を目指すという感じらしい。

基礎知識がどうの、と言っていたのはそういうことか。


「それで、ハルは六花を勧誘していたのか?」

「そうなんだけど、お姉ちゃんってば睨むばっかりで転移してくれないんだ。おじちゃんも説得してよ」


おじ…まぁ、そう言われる様な年だけどな。

お前の方が長生きしてるんじゃないのか。

まぁ、折角知り合ったんだから同じ世界に行けるなら説得できるか考えるが、どうせマトモな世界なんてないだろう?

俺としては、ちゃんと再会出来るなら妥協して元の世界へと帰っても良いからな。


「お姉ちゃんは保育士よりもハンターの方が向いてると思うんだ。なんで転移してくれないのかな?」


保育士。

そうか、六花は元の世界では保育士をしていたのか。

ハルの説明を聞いていた時の様子を思い出す。

ハルを転がそうと身体が反応していた。

あれは暴れたり走り回る子供たちを、安全に大人しくさせるために身につけた習慣の動きだったのか。


多分、子供が好きなんだろう。

崩れ落ちたハルをすぐに抱き起こして頭を撫でていたし。

そういう気持ちを無視して、戦闘能力という一点だけで勧めても、そりゃあ無理だ。


六花に目をやると、真っ直ぐ見返したままで首を横に振った。

だろうな。

長剣片手に、赤く返り血を浴びた鎧姿の六花も見てみたいが、保育士として子供たちに囲まれている方が見たい。


「六花は元の世界に帰りたいのか?」


尋ねると、僅かに固まった。

帰れるという可能性を考えていなかったのか。

ハルに目を向けると、


「え? トレードなんだから帰るなんてありえないよ」


と返された。

あぁ、説明するやつが理解してないのか。


「トレードはともかく、出せたんだから戻せるだろう?」


交換したやつは入れられるのに、そっちは出来ないとは思えん。


「えー? そりゃあ出来るだろうけど、なんでそんな意味ない事するのさ?」


その言葉に確信を得たのだろう。

六花が俺を見て目を閉じ、軽く頭を下げた。

多分、協力してほしい、という意図なんだろう。

もちろん協力する。

命の恩人の頼みだからな。


「えー? もー! なんで? 転移者の人たちって何考えるのか全然わかんない」

「お前だって帰る家くらいあるだろう? いきなり連れてきて帰らせない、とか言われて納得するやつがおかしいんだ」


まあ、今までに見た奴らってだいたいおかしかったけどな。

そんなのばかりと話していれば、俺たちみたいなマトモな奴らがおかしいと感じてしまうのもわからなくもない。




ハルの観察世界は大慈たちのいた世界に近いもので、努力が実を結ぶのを見るための世界でチートが存在しません。

しかしトレードについて初体験であるため、それを要点として認識しておらず、説明には含まれていません。


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