転移する理由が見つからない 005
5話目です。
異世界の先達の様子確認は前回で終了しました。
転移する理由が見つからない 005
Q. 目覚めた時に見たことがあるジジイが見下ろしていた時、どうすればいいのか正しい答えを述べよ。
A.まずぶん殴ってから知り合いか確認する。
誰もが認める正しい答え。
反射的に実行した俺に対して、また何故か文句をいうジジイを無視し、辺りを確認する。
避けたくせに文句を言うなよ。理不尽か。
薄灰色の霧。
遠くの見えない、足場さえ無い世界。
どうやら戻れたようだ。
あの後ガキがどうなったのか少し気になったが、ちゃんと見つからないことを願う。
何故か憤り、文句を垂れているジジイに蹴りを放ち黙らせる。
クソッ。また回転して避けやがった。
微妙に届きそうな距離で浮いているのがイラつく。
どうにか捕まえて殴り…じゃない。
それは後で良いんだった。
「おいジジイ。他の奴のも見れるのか?」
「…見たいんなら勝手に見ればええじゃろ。【閲覧希望】と言えば一覧が出るわい」
人の話も聞かないクズとか文句を言ってたのは、ちゃんと聞こえてたからな?
質問に答えることを優先させるだけの常識があるようだから今回はスルーしてやるが、俺みたいに温厚な人間でなければ殴られてたからな? 注意しろよ?
後でその分も殴るけどな。
「よし…【閲覧希望】、と」
試しに言ってみると、ジジイと俺の間にタッチパネルのような物が浮かび上がった。
どうもこれも霧に投影されているらしく、全く見えない。
使えないな。やっぱり今すぐ殴るか…あ、触れた。
パネルを退けて殴ろうかと思ったが、退けようとした手に触れた。
どうやらサイズや場所も自由に調整出来るらしい。
携帯程度のサイズだったそれを拡大して、テレビ大まで広げる。
それでも文字が読みにくいので距離をとると、霧が濃く見えるようになり、見やすくなった。
ファイル名だろう、別枠で【世界名】と記載がある…が、読めない。
ボケたジジイが震える手で書き込んだのだろう。
象形文字と草書体の混じったような字だ。
当人は達筆だとか思っているのかもしれない。
その下には名前が並んでいる。
漢字…アルファベット…何語だこれ? アラビア語だっけ?
1ページに20人くらいの名前が並んでいる。
そのうちの1つ、【佐伯 直哉】という名前にだけチェックが付いていた。
多分、これがさっきのガキなんだろう。
同じページの中で2つ、名前が黒くなっているのは、多分そういう意味だろう。
残念ながらガキの名前は黒くなってなかった。
近づいてページを捲る。
10人くらい…合わせて30人弱、というところか。
「ジジイ、お前みたいな奴らはどれくらいいるんだ?」
「…敬意というものを知らんクズめ」
あ? 最大限に敬意を払ってるだろうが。
お前こそジジイの癖に敬意知らねえだろ?
そもそも、なんでジジイなんだ?
普通、異世界モノとか転生モノって言ったら美少女とか幼女とか女神じゃないか。
あ、なんか腹たってきた。
2回目のQ&Aです。
主人公の「正しい」はあくまでも彼の主観です。