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転移する理由が見つからない 049

大慈は小休止を兼ねてハルと立花りっかの2人と会話をするようです。

転移する理由が見つからない 049





観察者は残念な奴ばかりだということを改めて噛み締めながら、背中を壁につける様にしてもたれかかる。

休憩所で死に物狂いで身体を動かしたおかげで、身体の感覚が昔に戻っていた。

よく兄弟喧嘩をしていた学生時代を思い出す。


正中線を三連蹴りで駆け上がり前宙して延髄に踵を捻り込む、とか。

歳を重ねてから出来なくなっていたが、今なら楽に再現出来そうだ。


適当な的が無いので試せないのが残念だ。

弟は大抵の打撃を「痛えだろコラ」で済ませるから、練習にはちょうど良いのだが。

生まれて初めていないことを残念に感じたな。


ハルにやったら死にそうだ。

観察者だから平気な気もするが、一応は命の恩人らしいからやめておこう。


六花にやるのは元から選択に無い。

女性だから蹴れないとかではなく、良くて躱される。

下手をしたらカウンターを食らいそうだ。

ただ立っているだけなのに隙が無いし。


そんなことを考えていたのが分かったのか、指先を上に向けて曲げ伸ばしする彼女。

相変わらず無表情だが、その指先が楽しんでいるように見えて乗りたくなる。


いや、落ち着こう。

実際、あれだけ動いたばかりだ。

傷が治ったとはいえ、少し休むべきだろう。


「ハルのテーマはどんなのだ?」


六花の誘いは魅惑的だが、そもそも俺自身はそんなに好戦的では無い。

少し雑談でもしてのんびりしたい。


「僕のテーマは【専門】! 初めてのトレードだから、今なら基本の知識をサービスするよ!」


…【専門】って、何の?

疑問に思ったが、ハルは初めてでテンションが上がっているらしく、こちらの様子を察することは無い。

まぁ、放っておいてもしゃべり続けるから、聞いていれば分かるか。


身振り手振りを入れて話をするハルの姿は、男の子が玩具やゲームの話をしている様で、微笑ましいものがある。

見た目のせいで若干の不気味さがあるが、愛嬌だと思う。


もしかしたら見た目の通りに幼いのかもしれない。

ちょこまかと元気良く動いている様は演技の様な感じは無い。

子供が元気なのは良いことだな。


動き回りながら説明するハルを見ている、六花へと目を向ける。

一瞬、肉食系の動物とイメージが重なる。

ハルの動きにつられて、腕や足がピクピクと反応している。

なるほど、鍛錬して身体を整える努力タイプではあるが、そもそもは本能的に戦いが好きなタイプなのか。


多分、どうやったらハルの動きを封じられるのか、そんな動きになるだろう。

彼女の手はたおやかで、あまり打撃戦には向かなく見える。

鞭打とか出来そうだから一概には言えんが。


むしろ六花の方が微笑ましく感じて、その反応する姿を見ていたら目が合った。

ちょっと眉が寄って顎を引いた。

ムッとしたというよりも、見られたことが気恥ずかしい、という感じか。

余計な動きが無い分、仕草に気持ちが出易い。

彼女を見ているとそんな風に感じて、裏表がないんだな、と好ましく思う。


「と、いうことで、ぜひ転移しましょう!」


語り切ったらしいハルが、俺たちに向かって両手を広げた。

忘れてた。説明させてたんだったっけ。


六花に睨まれ、彼女も話を聞き流していたらしいと気づく。

ちょっと彼女も気まずそうだ。

聞いていなかったことに気がついたらしく、


「何で聞いてないんですかー!」


と再び地団駄を踏んでジタバタし始める。


六花を見ると見つめ返された。

俺が何とかしろ、ということらしい。


「悪い。興味が無い」


正直に言ったら、ハルが崩れ落ちた。

何か悪いことを言っただろうか?


お忘れかもしれませんが、大慈は善良な小市民(自称)であり、子供好きです。

立花も子供好きな、善良な小市民です。

2人の違うところは、子供が悪いことをした場合を例にするとわかりやすいでしょうか。

立花は子供に、何故悪いのかをどうやって理解させるかを考え、時に一緒に反省します。

大慈は子供の親に、何故悪いのか理解させていないことを反省させるため、いろんな手を使います。

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