転移する理由が見つからない 048
さて、立花という女性と革製のペンギンもどきの2人が登場しています。
この2人はどんな人物なのでしょう?
転移する理由が見つからない 048
あまりにペンギンもどきがうるさく主張してくるので、仕方なく相手をしてやる。
「僕は観察者のハルシュタイン・ブッケンマイヤー。ハルって呼んで。死にかけてたのを治療して元気な状態に戻しました。ふふーん、褒めていいんだよ?」
よし、名前は聞いたからもういいな。
「六花、と呼ばせてもらって良いか?」
「あっ、また無視っ! 何で!?」
お互い視線は外さない。
半身になり軽く溜めをつけた姿勢は、俺の動きに対処するためか。
正面を向いて両手を広げ、手のひらを晒す。
足は軽く開いて均等に体重を乗せる。
彼女がどんな動きをしても、こちらは何もしないという意図を見せたのが伝わったのだろう。
姿勢を正し、頷きを返す彼女。
そして綺麗なお辞儀をして、黒髪がさらさらと流れる。
着物とかチャイナドレスとか着たら、すっげえ似合うと思う。
くそっ。何でカラカナがここにいないんだ。
あいつがいたら絶対に服装を変えているはずだ。
ここにいるのはペンギンのハルだけで、こいつが同じことが出来るとは、とても思え…ん?
あれ? 確か俺の黒シャツって、スライムから逃げるときにダメにしたよな。
ズボンもかなりボロボロになって、池にも入ったから全身酷いことになっていたはず。
だが今は綺麗なワイシャツとズボン、ベルトまでしている。
池の青臭さも土埃の匂いもない。
「ハルだっけ? 着替えさせたのはお前か?」
「はいハルですっ! 僕がやったよ! 格好だけでも綺麗になったでしょう? お礼とか言ってもいいんだよ?」
くそっ…ダメだこいつ使えねえ。
カラカナと同じく人の服装を変えることが出来る癖に、何でその能力を有効に使わない。
カラカナって腐っても女神枠だったから、やっぱりそれなりに有能だったのかもしれない。
「…」
「…?」
六花のチャイナドレスが見たいです。
流石に本人を前にして、それを口にするだけの蛮勇さは俺にはない。紳士だからな。
視線をシャツ、ハル、六花へと変えていく。
ハルが視線を追って六花を見るが、察しが悪い。
首を傾げて俺を見返した。
「あ、あー、六花が俺の血で汚れたからな。彼女も着替えをしたいんじゃないかと思うんだ」
六花がこちらを見ているのが、下心を見透かされている様で気まずい。
「あ、そうだった。忘れてたよ、ごめんねお姉ちゃん」
六花の身体に光が走り、一瞬姿が見えなくなる。
再び姿が見える様になった時、汚れが消えて綺麗な格好の六花と目があった。
何で同じ格好なんだよ!
ハルを睨みつける様に目を向けると、腰に手をあてて胸を張っていた。
何でドヤってんだこいつ。
2人との会話というよりも大慈の紳士っぷりが発揮されただけのような気がしますが、たぶん気のせいです。