表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/93

転移する理由が見つからない 047

大慈が意識を取り戻しました。

身体の状態はどうなったのでしょう。


転移する理由が見つからない 047





どうやら夢を見ていたらしい。

俺の身体には、美女はしがみついてはいなかった。


それを残念に思うが、無くしたはずのシャツを着ていることに気付いて周りを見る。


落下している俺の足元。


夢で見た美女がいた。

正面から俺の全身が見えるように、軽く膝を曲げた体勢で俺に合わせて落下している。

隣になんかいるが、まぁそれはどうでもいいや。


重心を変えて落下を弱めて、向き合う様に体勢を変える。

俺を見ている美女の目は鋭く、表情は無い。

まるで彫像の様な綺麗な顔からは感情が伺えないが、視線は俺から離れない。


長いストレートの黒髪はつややかに鎖骨あたりまで伸ばされており、襟なしのサマーセーターとの隙間から見える細い首の白さを際立たせている。

片手で折れてしまえそうな繊細さを感じながら、下へと目を向ける。


同じ様に細さを思わせる中で血塗れのヒマワリが笑っている。

多分、あれは俺の血なのだろう。

よく見れば全身に血の跡が付いていた。


エプロンの腰は理想的な曲線美。

伸びた足は隠れてほとんど見えないが、更に下に目をやればジーンズが見えた。

黒いパンプスとの隙間には、やはり白く細い足首。


全体的に細身だが、よく見ると筋肉で締まった細さだ。

体脂肪率とか10%くらいしか無いだろう。

鍛え方がしっかりしている、そんな身体の作られ方と、俺の動きを見逃さない視線。


ちょっと確認したくなり、左足を引いて腰を落として構えを取り、意図的に左手を下げてみる。


彼女は少し半身になり、手首を隠して左手を前に。

体重は左足に乗せ、軽く上げた右足首を一度だけ上下させる。


その気なら、足先が俺の頭に入る距離だと、その動きが答えていた。


あ、やばい。

この女、メチャクチャ好みだ。


構えを解いて、頭をさげる。

試す様な真似もしたし、俺から名乗るのが礼儀だろう。


「命を助けて貰った恩は絶対に忘れない。出来る限りのことはする」


名前を伝えて、感謝を述べる。

彼女がいなければ。あるいは、見過ごされていたら。

あの苦痛の中で、俺は死んでいただろう。


「あ、あのー。治療したのは僕なんですけど」


さっきから視界の端で、俺と彼女の無言の語らいを遮ろうとしていた奴が、堪えきれずに声を出す。

仕方なくそちらを見ると、俺の腰くらいの背丈の奴がいた。


一見するとペンギンの着ぐるみの様だが、違う。

デカイ目もクチバシも、全て赤茶けた革で出来た丸い頭。

同じ素材が縫い合わされて全身に繋がっていて、腰から先が広がっていて足元は見えない。

ちゃんと指先まで覆われていて、短い指で自身を指している。


狂った医者とか、マッドサイエンティストとか、そんな言葉がよぎる。

うん、無視しよう。


「名前を教えてくれないか?」


彼女へと視線を戻し、大事なことを確認する。

そこにいる観察者っぽい奴なんて、それに比べたら何の価値も無い。


「六花」


涼しさのある声が答えてくれた。

りっか。

確か雪の結晶とか、雪の種類を意味する言葉だったか。


白く冷たいイメージのある名前を持ち、それに見合った姿の彼女を見ながら。


血塗れが似合う女ってのは、そうは居ないな。


そんな風に思って笑みを浮かべる。

無言のままで表情を変えない彼女の代わりに、


「何で二人して無視するんですかー!」


叫びをあげたペンギンもどきが地団駄を踏んだ。

あ、普通に足あるのな。


大慈は基本、「会話ができない相手」を毛嫌いする傾向がありますが、立花は行動で回答しているため「会話ができる相手」と判断しています。

「助けた相手でも必要があれば蹴れる」と回答した立花の性格を好ましく思ったようです。

口には出していませんが、「もっと大きければ完璧だ」と思っていたりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ