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転移する理由が見つからない 004

4話目です。

異世界に行った先達の様子を見ています。



転移する理由が見つからない 004





目を開けて周囲を見ると、まださっきのガキが生きていた。

驚いたことに、あの砂漠では死ななかったらしい。チッ。

どうやって生き延びたのか不思議でならない。


もしかしたら誰かに見つけて貰って救われたのか? とも思ったが、辺りには人気はない。

いや、明かりすらない。

それでも俺には周囲やガキの様子を確認出来た。


「…帰りたい」


半泣きで呟くガキの格好は、先ほどとは変わっていた。

その無様な姿を見ていると、頭の中にイメージが流れ込む。


オアシスの幻覚を見て走る。

流砂に飲まれる。

地下空洞を落下し、運良く川に落ちたが流される。

溺れかけながらもがき続け、たどり着いた地底湖から上がる。

出口を探して徘徊。

明かりを見つけて走り出し、溶岩に落ちかける。

苔と根だけが食料の日々。

地上を探す日々が続き、キレる。

喚き散らして疲れ、半泣きになってへたり込む。


…どうやら俺が見ていなかった間のガキの様子なのだろう。

コメント付きの写真のようにイメージとして見えた。

ダイジェストなのが凄く勿体無い気がする。

ちゃんと後ろで笑いながら見守ってやりたかった。

いや、多分途中で飽きるからダイジェストでいいか。


どうやらこのガキは運良く地下に落ちたおかげで生き延びたようだ。


そういえばジジイは観察する世界は幾つかあるが、共通したテーマがあると言っていた。

このガキの有様を見ていると、

【バカが苦しむ】

とかそんな感じにしか思えない。


…後でジジイに会ったら、どういうテーマなのか聞いてみよう。


いや、むしろ思ったのだが、この他人の経験を端で見ている、というのはそれなりに面白い。

特にバカなガキが苦しんでいるのは心が癒される。


言うなればバーチャルアトラクションだ。

もしかしたら転生だとかするよりも、こうやって見てる方が楽しいんじゃないか?


…よし。決めた。

死ぬまでジジイをこき使い、自由に見れるようにさせよう。


ガキはまだ死にたくないと言いながら、木の根がある辺りを掘っている。

どうやら上に上がっていけば地上に出れると判断したようだ。


スキルを貰っているようなことを言っていたのだが、それを使わない。

まぁ、地下で【一撃粉砕の拳】とやらを使ったら生き埋めになるかもしれないからな。

使っているのを見たことがないので、あるのかわからないが。


どっちにしても埋まりそうだけどな。


木の根に沿って手にした石で掘り進めていく。

どういう経路でここまで来たのかはわからないが、石と砂、土が混ざった感じだから、それほど苦にはならなそうだ。

だが、木の根って結構な距離伸びるんだよな。

特に水が少ないところの木だと、地上よりも長い場合もある。

岩盤とかの隙間を抜けて生えてるような物もあるしな。


どのくらい待っていたら崩落するだろうか、と期待に満ちた目で見守る。

しかし、明かりもない中で手探りで穴を掘り続けるとか、俺だったらやりたくないな。

やはり、あのジジイの観察する世界とやらはダメっぽいな。

他にもいるようなことを言っていたから、違う奴に変わらせるのもありか。


そんなことを考えていたら、あっさりと崩落した。

どうやら近くに空間があったらしい。

かなり大きな音が響いて、俺の視界も遮られる。


影響は俺にはないのだが、土に埋まっていくように感じで思わず目を閉じた。



それほど時間は経っていないと思っていたが、目を開けた時には景色が一変していた。


どうやら先程のイメージで見た地底湖から、そんなに離れていなかったようだ。

ガキが掘り進めだけた影響とは思えない範囲で崩落したらしく、空が見える。

地底湖側に崩れていったためか、こちら側の崩落度合いは控えめだ。


まぁ、ガキの姿はほとんど見えなくなっているのだが。

ちょっとだけ手が見えているので、土を被せてやろう。

あ、ダメだ。触れない。チッ。


遠くの方で声がしている。

どうやら、近くに人がいたらしい。

運が良ければ助けて貰えるだろう。


残念に思いながら、俺は目を閉じてジジイに戻すように呼びかけた。

戻り方聞いてなかったからな。これで戻れなかったら、ガキの続きをまだ見させられることになりかねない。

流石にもうこのガキは飽きたので、もしそうなったらなんとかしてガキには死んでもらおう。


この異世界に行った先達の様子を見るのは終了です。

主人公にとりあえずの行動指針が出来ました。


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