表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/93

転移する理由が見つからない 034

トレード場所におけるトレード対象者の視界について、体液等の摂取が必要であることが判明しました。

結果、大慈がバッドステータスが発生したようです。

転移する理由が見つからない 034





「見知らぬ場所で何も見えないのは怖いですから、それなら殺風景でも今の景色の方が良いですね」


みかりんが安堵混じりに感想を漏らす。


「感謝してネー。お礼に転移しないカナー?」

「しませんよ」

「…みかりんはケチダナー」


和やかな2人の会話が続くが、俺はそれどころではなかった。

足を止めたまま反応が無い俺に気付いて、心配そうな声をかけてくる。


あぁ、やっぱりこいつらは良い奴らだ。

苦悩する善人を心配するのは、善人だけだ。


違う世界に別れるとしても。

全く異なる存在なのだとしても。

俺はこいつらが裏切らない限りは、敵になる事は無いだろう。


だが、ジジイと蠅。

お前らは殺す。

特にジジイは、必ず殺す。


俺の視界、【ガラスと明かり】は蠅から手に入れたものだろう。

だが、蠅から何かを分け与えられた記憶など、一つしかない。


気を失っていた時に、額と瞼を冷やしていた、濡れた蠅の手。


あの液体…体液を、俺は受け入れてしまったのだろう。

点眼なのか口径なのか、摂取方法はわからない。

どっちも嫌な事には変わらないが。

気にしない様にしてたのに、結局その事を確認する羽目になるなんて不快としか言えない。

この不快感は、蠅に責任がある。

何しろ俺は何も悪く無いのだから。


そして、ジジイ。


俺は意識がある時に、あいつから何かを貰った事は無い。

ハンマーの一撃くらいだが、それは別物だろう。


だとすると、いつ俺は【薄灰色の霧】の視界を手に入れたのか?


…この場所に来た時の記憶は無い。

だが、目覚めた時。

ジジイは、俺の顔を覗き込んでいた。

殴りつけたが躱されたのを思い出す。


あの時、もしあのジジイが、覗き込んだのでは無いとしたら?

覗き込んだのでは無く、離れていく時に俺が意識を取り戻したのだとしたら。


その前に、ジジイは俺に何をしたのか?


「……ウワァァァァッッ!!」

「ヒャッ!?」

「わぁっ!?」


カラカナの世界で見たもの。

みかりんが見ない方が良いと止めてくれた、見てしまった光景。

そして、ジジイの纏っていた、見慣れない服装。

あの服装は、俺がこの2人を見つけた時、みかりんが来ていた服装に似ていないか?

カラカナがみかりんに着せていたのは、どんな服装だったか。

セーラー服、バニー、猫耳、裸エプロン、大きめのシャツのみ、巫女服、シスター服。

それ以外にも、見た事の無い世界の服装。

全て、女性が着ている事を前提とするような。


絶叫した俺に慄きながらも、心配そうな目を向ける2人の姿に、泣きそうになる。


だが、脳裏に浮かんだおぞましい想像が、俺に最悪の言葉を囁いた。



白雪姫はどうやって目覚めた?



「ァァァァッッ! 嘘だァァァッ!」




錯乱して走り出した俺が疲れて動け無くなるまで、どれだけの時間が経ったのか。


足が動かなくなって立ち止まっても、拒否感は消えない。

もどそうとする身体の反応に、空っぽで何も出ないと答えを返し続ける。

体力的にも、精神的にも限界に至った俺は、俺はだんだん意識が遠のいて行くのを感じていた。


再び目覚めた時、同じ悪夢が訪れない様。

誰に願えば叶うのかもわからず、祈りの言葉すら思いつかず。

俺は、再び意識をなくした。


バッドステータス【錯乱】になると言動や行動が自意識で制御できず、反射的な行動が優先されます。行動内容は対象者の生活習慣に依存する傾向があります。また、症状が解消するまで反射的な行動が続くことがあり、行動内容が途中で変化することもあります。身体的ショックなどで解消することもあります。

大慈の場合は生活習慣から「倒れるまで逃げる」が選択されたようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ