転移する理由が見つからない 026
カラカナの観察世界を見物します。
転移する理由が見つからない 026
用意した世界、という意味を確認したかったが、とりあえずは後回しにした。
実際にどんな世界なのかを見てからでもいいだろう、と思ったからだ。
【ハーレム】を用意してあると言われて、それを後回しにする理由はないと言われそうだが、前例を考えるに確認しないのはあまりに危険だ。
一度見ておけば危険の度合いも測れるだろうと考えるのは、必然と言える。
だが、見なければ良かったと後悔するのはすぐだった。
みかりんがやめた方が良いと止めてくれていたのに、何故俺は見てしまったのだ。
悔やみきれない。
カラカナの世界というか、選んだ【柿崎】という男が転移した世界は、いわゆるファンタジー系の世界だった。
彼は召喚された異世界の勇者で、その血統を取り込むことは王族の義務となっている、という設定らしい。
召喚儀式が行えるのが百年に一回とか限られていて、既に前回の召喚対象は他界しているらしい。
まぁ、国賓というか、王族として埋葬されたようだ。
異世界の血統を取り込むのは、血が混ざることで異能に目覚めた子供が生まれる可能性が上がるとか。
そのため、たくさん子供を作ることが召喚対象の義務になるらしい。
まぁ、異世界召喚のハーレム系ではテンプレな話なのだろう。
説明を聞いていた【柿崎】も納得していたようだ。
ちなみに、【柿崎】は俺よりも大分年上…たぶん50半ばの、マッシブダンディーなオヤジだった。
【ハーレム】って年齢関係無いのか。
だが、そこから後は見せられる俺にとって地獄だった。
そうだな…まず、【ハーレム】の候補から説明するのが早いだろうか。
第一王位継承者、第二王位継承者、それらの教育係。
騎士団の団長が団の数で3人、魔術師団の団長は2人と、その副団長や補佐役が8人。
国防大臣、財務大臣、ギルド長と商会連盟でこの国の担当官など、各種官民のトップと、その秘書や部下。
王位継承者たちのいとこや、幼馴染。
…ざっくりと、国の運営に必要な人物のほとんどと、その関係者たち、と言っても良い。
まぁ、これに更に各地域の有力者とか、貴族の子供たちとか、他国の王位継承者とかもいるらしい。
30人を超えた辺りで数えるのはやめた。
名前は最初から覚えてない。
で、【柿崎】は【ハーレム】に対しての抵抗は全く無かった。
元々そうした素養があったのか、そうした部分に悩みを持っていたケースなのかは不明だが。
改めて、俺には無理だと思った。
見ているだけで吐き気と怖気と眩暈がして、立っている事さえ気持ち悪い。
ある意味、【柿崎】は俺にとっては尊敬に値する人物だった。
全ての人物のフルネームと顔、立場や血縁関係、特技や好みまでをも一度見聞きしただけで覚えていた。
営業職についたこともある俺でも、あそこまで正確に記憶するのは無理だ。
もし【柿崎】が営業マンなら、素晴らしい成績を残しているだろう。
更に【ハーレム】要員が修羅場になっても、笑顔を絶やさずに対応していた。
…俺なら殴っているところを、我慢する素振りを一切見せない。
恐ろしい程の、人間的な器だ。
壊れて穴が開いているのかと疑うほどだ。
そして何よりも、絶対に俺が耐えられないことを、彼は受け入れていた。
…【ハーレム】って全員自分と同性でも成立するんだな。
うん、ちょっと吐いてくる。
大慈は「おっぱい至上主義者」で男性と幼児と老人は性的観点の対象外です。
柿崎は「愛せない人間はいない」という性的観点なので、喜んで転移しています。
なお「血統を取り込む」のはハーレム要員の奥方で、夫婦そろって柿崎の毒牙にかかっています。
大慈が見た範囲は「妻を抱かせるのか」と警戒する男性陣を柿崎が口説き落とし篭絡し虜にしていく光景でしたが、大慈の許容量を超えたため作中では表現されません。