転移する理由が見つからない 024
女神枠の観察世界のテーマは何なのでしょう?
転移する理由が見つからない 024
カラカナ、というのがこの女神の名前らしい。
蠅とは違い、自分で
「カラカナって呼んでネー」
と言ってきた。
挨拶が出来て、名前も名乗れるとなれば、ぱるみら程度には人間的だ。2歳児だと思って相手をすればいい……うっ。
悪が…悪が俺を見つめて囁いている。
「ほほう。私が2歳児ならば、将来が楽しみだとは思わんかね?」
と。
悪とは、かくも雄弁に語り、人の心を掻き乱すのか。
「あ、触るカナ? 触ってもイーヨー?」
「なにっ!」
カラカナの言葉に、つい声が出た。
さ、流石は女神だ。
人には出来ないことを容易く許してくる。
…これが神の度量というものか。
巨悪改め巨神の器は、見た目通りに偉大なものなのだな。
ではありがたく…。
「でも触ったら転移してネー?」
その言葉で我にかえる。
落ち着け俺。冷静になれ。
無意識に伸びた右手を、慌てて戻す。
…少しだけなら…い、いや。ダメだ。
こんなもん、ボッタクリの典型じゃないか。こんな罠に騙されるな、俺。
クソッ。やっぱりアレは巨悪なのかっ!
あぁ、でも餌は美味そうだ…!
「みかりんは触ったヨー?」
「な、違っ! アレはカラカナさんが無理矢理っ!」
……。
みかりんを見ると、立ち上がってこちらを見ていた。
猫背のせいで目線が合うが、視線は落ち着きなく俺とカラカナを彷徨っている。
触りはしたんだな。
んー、でもなんだろう。
見た目が女の子にしか見えないせいか、あんまり羨ましくない。
「じゃあ、みかりんが転移するのが先だな。さらばみかりん。異世界に行っても男の娘として達者でな」
「嫌ですよっ! カラカナさんの世界なんて! それと男の娘って言わないでくださいっ!」
顔を赤くして拒絶する姿は、知らなければ女の子にしか見えない。
だからって女の子とは言えないしなあ。
しかし、新入社員とか言っていたが…声変わりとか無かったのだろうか、こいつ。
声だけ聞いてると、もっと若い娘に感じる。
うん、男らしい要素がないな。
一応、骨格は男の様に見えなくも…無いかなあ。
「なんデヨー? どの世界でも、モッテモテになれるヨー?」
「そ、そういうのいいですからっ! 元の世界に帰らせてくださいっ!」
毎回ハキハキと喋って、というかツッコミ入れて疲れないのだろうか。
ここまでにわかったみかりんという奴は、見た目良くて声が良くて言葉をハッキリ喋れて、カラカナみたいな奴を相手にしても殴らない。
…俺が人事担当者だとしても、試しに数日は受付に置くかもしれない。
ネタ的な意味でも客受けしそうだし。
「むー。みかりんはなんで嫌がるのカナー? 【ハーレム】をテーマにしているノニー。貴方は【ハーレム】でモッテモテになりたくないカナー?」
抗議し続けるみかりんを尻目に、巨悪…もとい、カラカナが俺に問う。
【ハーレム】…だと。
大慈は自他共に認める「おっぱい星人」です。
「大きいことは良いことだ」と妄信しているため、交渉に使われると容易く惑わされます。
ちなみにカラカナと対話するとき、9割は巨悪を見ながら会話しています。