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転移する理由が見つからない 016

まだ蠅の観察世界を見物しています。

転移する理由が見つからない 016





運ばれた先は病院とも研究施設とも思える場所だった。

あちこちに監視カメラがあり、廊下は区画で区切られている。

途中に幾つかの検閲場の様な場所があり、事務員っぽいのが書類のチェックや端末への入力をしている。

檻の中でぐったりしたままの男を運んでいくのは、軍人っぽいのから研究員っぽいのに代わっていた。


見た感じでは、銃などは持っていない様だ。

足運びからしても、鍛えていない感じがする。

台車を押している姿も、辛そうだ。


話す余裕はなさそうなので、そいつらを見ていても仕方がない。

目的地に着くまでは他を見ていた方が面白そうだ。


廊下には幾つかのドアがあり、センサー系の電子錠がかけられていたが、俺には関係無い。


ゆっくりと流されながら、壁に突っ込んで抜ける。

何となく息を止めてしまうのは何故だろう。


壁の向こう側は研究室らしかった。

らしい、というのは何やら変な機械や資料が並んでいて、研究員たちがディスカッションしていたからだ。

ただ、何の機械でどんな資料で何を話しているのかが全くわからない。


言葉がわからない訳では…ある。

いや、「そうじゃない」「こうしたらどうだろう?」みたいな事を話しているのはわかるのだが、出てくる単語が聞いたことのないものばかりで理解が出来ない。

…他の部屋に行くか。


ダメだった。

人がいても、やっていることに俺の理解が追いつかない。

俺の頭が悪いからではない。俺の頭でさえ理解出来ないほど、専門的なことをやっているのだ。多分。


退屈を潰したかわりにストレスが溜まった様な気分だ。

考えてみれば、この【観察】って現場の状況を見られるだけなんだよな。

その世界の状況も、そこに至った背景とかも全く知る手段が無い。

学生とかが授業しているところを見られれば、多少は理解し易いかもしれないが、そう都合良く行かない。

背景とか関係なく、その場の状況が面白いということでもないと、見ていてもしょうがない気がしてくるな。


そういう風に考えると、前回のガキは優秀だったな。思い出すと笑えるし。

今回の男は、未だにマトモに話しているのを見ていない。

檻の中にいるから、意識が戻っても動けないだろう。

研究員どもに交渉して自由になるくらいのことが出来る奴なら良いんだけど。


お? 下に引っ張られる。

どうやら男が地下に運ばれて行くみたいだ。

離れていられる距離に限りがあるから、離れすぎるとこんな風に運ばれるのか。


床に体が沈んでいく。

潜水する感覚になるのか、顔が沈む前に大きく息を吸い込んで止める。


さて、地下には何があるのかな?


…長いな。


……まだか?


…………く、長いぞ! 息、息が!


あ、壁の中でも呼吸出来た。

某ゲームだった死んでたところだ。

一応、男のところまで戻っておくかな?

いや、地下の部屋に出たな。

また研究室かよ。飽きてきたな。


地下も似た様な研究員…こいつら、一応髪型とか性別とか個性はあるんだけど、ほとんど動かないから見ていてもつまらないんだよな。


うーん、移動出来る範囲で少しうろついて見るか。

基点になる男は動いてないみたいだし、見物してから戻っても問題ないだろう。

どうせ檻に入ってるんだし。


あれ? なんか広い部屋に出た。

…運動場か? 随分天井も高いな。

運動しているのは…研究員じゃないな。

というか、何だ、あれ?


専門家が頭を突合せて研究内容を討論しているところに基礎知識も事前情報も無しでちょっと覗いて理解するのは無理、という大慈の状況。

プライベートの予定やデートの話などの雑談もなかったため、現地の生活に関しての情報を得ることは出来なかったようです。

次回はちょっとだけ現地の情報が得られるかもしれません。

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