表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/93

転移する理由が見つからない 010

振り向くと自分と同じ大きさの蠅が!

>戦う

 アイテム

 逃げる



転移する理由が見つからない 010





ベルゼブブ。バアル・ゼブブ。ベルゼビュート。


サタンにも比肩すると言われる大悪魔。


ゲームをやった事がある奴なら、少なくとも一度は名前を聞いた事があるだろう。

最もわかりやすくイメージが浮かぶ魔王と言っても過言では無い。


「うおぁぁぁぁっっ!!」

「ぶゃぁぁぁっ!!」


無意識に絶叫しながら、ぱるみらを守る様に抱きしめて全力で走る。

背後から追ってくるのは、正にその名を背負うに相応しい姿。


【蠅の王】


某ゲームで髑髏の錫杖を持っていたイメージ。

何かの小説で読んだ着ぐるみっぽいディフォルメされたイメージ。


そんなイメージを消し飛ばす程、背後に迫る物はおぞましい。


自分と同じサイズのリアルな蠅。

ただの蠅に対して、これ程に精神的なショックを受けるとは。


全力で走っているとは言え、子供1人を抱えながらだ。

視界を邪魔する黒い霧は、走る速度に対応し切れていないのか、だんだん暗くなっている。


ついさっきまで見えていたジジイは、俺が向かってくる事に気付き姿を消している。

霧が晴れないのもジジイが邪魔しているせいだとも思える。


そこまでして俺に殴られるのが嫌か! 意地でもブン殴ってやるからな!


絶叫をねじ伏せ、歯をくいしばって走り続ける。

たまに先回りして【蠅の王】が姿を見せるのが、非常に厄介だ。


「お待ちを。あ、待ってくだ」

「クッソォォォッッ!」


反射的に蹴りを入れそうになる足。

それを無理矢理、足場を踏んだイメージをねじ込んで、駆け上がる様にして躱す。


蹴りつけて中身が飛び散っても嫌だし、本当に魔王的なものだとしたら効かないだろう。


少なくともあれは俺の知っている蠅とは違う。

蠅なんてアスワンツェツェ蝿と横浜銀蝿くらいしか名前を知らないが、絶対に別物だ。


触れたら腐るとか、卵を産み付けられるとか、あるかもしれない。


…正直、ぱるみらを抱えていなければ、もっと動きやすくなる。

極論すれば、ぱるみらを【蠅の王】の犠牲にして逃げる、という手段もある。


だが、俺はそれだけは絶対にしない。

子供を犠牲にして逃げるなんてことは、人間がして良い行動じゃあない。


「絶対に! 渡してたまるかっ!」


子供の命を守ることは、人間以前に生物なら基本的な本能の話だ。

それすら出来ないのなら、生きている価値は無い。

少なくとも俺は絶対にそんな奴は認めない。


「渡さんか、このかどわかしめ」


突然、目の前に黒い物が湧いて出た。

避けきれずに頭を掠め、バランスが崩れる。

抱えていた重みが急に消えて、更にバランスが崩れる。


身体の中で重心が流れていくのを感じて、その流れに合わせて身体を回転させる。


あ、これジジイがやってた回転だ。


視界がグルグルと回る中、そう感じる。

回転する視界に、ぱるみらを抱いて【蠅の王】の後ろに立つジジイが見えた。


手には先ほど俺の頭を掠めたものだろう。

うちでの小槌の様な、打撃面の大き目のハンマーを持っていた。

色からして鉄製っぽい。


「っのクソジジイ!」


回転の勢いをそのまま、ジジイの方へと重心を移動して、そちらに向けて落下する。


回転と体重による速度を活かした拳を、あの憎たらしい顔面に叩きつけてやる!


「お待ちを。まずは挨拶を」


【蠅の王】がジジイの前に立ち塞がる様に手足を広げた。


身をひねれば容易く躱す事が出来る。

俺はそう判断して突き進み、


グベンッッ!!


派手な音が鳴り響いた。


蠅の手の横、空中に浮かんだ俺の顔面から。


「なんで…?」


そう思いながら意識を失う俺を、ジジイが蔑んだ目で見ていた。


だいじはちからつきた…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ