サプライヤー試験
新規登録の学科試験が終わると、男女別に分かれて、CTスキャンの様な医療機器に寝かされて体を調べられた。
(そう言えば僕の魔因子ってどこにあるんだろう? ん? 頭の方を何回も調べている?)
次は実技試験に向かう。
やはり魔術や術を使うマギカの試験会場は広い部屋で行われており、大勢の人で賑わっていた。
時折、誰かが大技の魔術を唱えたのか
『おお! さすが名門の○○家!』
と歓声が上がる。
逆にヒーラーとサプライヤーの適性試験は受ける人も少ない為か両方いっしょに、学校の保健室ぐらいの部屋の中で行われていた。
龍一が中を覗くと、ヒーラーとサプライヤーの試験場所は衝立で区切られており、サプライヤーの方には誰も並んでいなかった。
部屋をのぞき込む龍一の後ろで、ついさっき聞いた黄色いさえずりが近づいてくる。
「……なんで、みんなついてくるのよ!」
先ほどの金髪女生徒を先頭に、大凶魔學院の高等部一年生の集団が、部屋に向かってきた。
「だってぇ、更新終わったから、中等部の新規登録が終わるまで暇になるしぃ~」
「中等部の登録が終わらないと、学校のバスが出ないからね」
「ヒーラーの試験ってあまり縁がないのね。でも、せっかくキャプテンがヒーラーの資格をとるんなら見学させてもらいま~す」
「私は”先輩”を見習って、”嗜み”程度に、ヒーラーの資格を取るだけなのにぃ……」
金髪女生徒が段々と声を落としながら、言い訳のように呟いた。
「本当にぃ~? ”倒れた誰かさん”を癒してあげたいんじゃなくて~?」
「だったら、魔術だけでなく、”体”も”鍛錬”しなくちゃねぇ~」
「いい加減にして! そんなんじゃないんだから!」
後ろの部員に怒鳴った金髪女生徒が前を向くと、部屋の前にいる龍一と眼があった。
「あ!」
「あ!」
と、ほぼ同時に、一つの言葉が二人の口から放たれた。
『龍一よ、おなごとドアでかち合ったら”おなごさんお先にどうぞ”って言うんだぞ』
『”れでぃふぁーすと”だろ! ようちえんじでも知っているぞ!』
「あ、ど、どうぞ!」
龍一は龍造の言葉を思い出してか、一歩後ろに下がり、腕を入り口に向けて伸ばした。
”きゃあ!”と後ろの部員から黄色い声が上がるも、金髪女生徒は龍一に一瞥もせず、そのまま部屋へ入室した。
他の部員は会釈したり、”ありがとう”と小声で龍一に礼を言った。
「……意外と紳士ね」
「ちょっとかっこよかった?」
「別に……あんなのパパの故郷じゃ普通だし」
憮然とした表情で金髪女生徒は呟いた。
「失礼します! よろしくお願いします!」
龍一は、元気よく挨拶をして、魔力ゴーレムの隣に座る白衣を着た年配の男性試験官に書類を手渡した。
「ほほう、サプライヤーを専門で、しかも新規で受ける方はめずらしいですね。普通は熟練の選手の方が、資格を増やす程度で受けるんですが……」
会場を区切る衝立の影から、先ほどの大凶魔の女生徒達が、ちらちらと覗いていた。
「あの子、サプライヤーだって」
「めずらし~」
「試験する人、あたしはじめて見る……」
黄色いさえずりを耳に受けながら、龍一の顔は若干紅く染まる。
(金剛先輩が言ったとおり、やっぱりサプライヤーってめずらしいんだな)
試験官は書類に眼を通した後、ストップウォッチを手に取り、龍一に説明をする。
「それではゴーレムに向かって十秒間、【マギディ】を唱えて下さい。魔力がゴーレムのひざの下の赤い線まで溜まったら合格です。準備はいいですか?」
「はい!」
龍一は両手両足を広げて構える。
「では落ち着いて用意、スタート!」
「マギディ、マギディ、マギディ……」
龍一は、消防用のホースで蒼い水を勢いよく注ぎ込むかのごとく、魔力ゴーレムに向かって魔力を注入する。
……そして十秒後、そこには全身が蒼く光輝くゴーレムが誕生した。
「な! こ、これは! そ、そんな! いや、もしや貴方様は、どこか偉大な家系のご子息様とか?」
眼をまん丸に見開く試験官の問いかけに、ふと甲斐からの忠告を思い出した。
『”庵堂”の人間なんて絶対に言わないように! 下手したらサプライヤーとして他校に誘拐されちゃうわよ!』
「あ、え~と、合格ですか?」
「は、はい! もちろん合格です!」
試験官は蒼く輝く《魔印》で龍一の書類に合格のスタンプを押し、龍一に手渡す。
「じ、じゃあ、失礼します!」
「あ、お、お待ちを! ぜひお話しを!」
騒ぎに巻き込まれないよう、龍一はわざと人混みの中へと走っていった。
「ふぅ~終わった。ん? みんなどうしたの? 固まっちゃって……」
ヒーラーの試験が終わった金髪女生徒は、サプライヤーの試験会場を覗いている部員の上から顔を覗かせると……
「え? え……、ええぇぇ~~~~~~!」
ただでさえ狭い試験会場は、少女の絶叫で膨れあがった。




