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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第四章 ハーフタイム、そして後半戦
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叱責

 コートチェンジした龍堂学園では、金剛が甲斐に進言する。

「会長、次のレイダーは私が行くね」

 散歩に行くような軽やかな金剛の声であったが、甲斐は異議を唱えなかった。

「お願いします金剛さん。あ、耳栓ね!」

 甲斐は胸の谷間に指を入れると、白鳥、目黒の眼が……

「ウォッホン!」

 稲津の咳払いに慌てて背を向ける男子達であった。


「会長、みんな、ちょっと……」

 鳥居がみんなを集めて口を開いた。

「……どうもあの夜長ってキャプテン、ウチらがレイダーの時に私たちの表情を読んでいるぞ」

「じゃ、じゃあ、私の【カミナリ】がすんでの所で気がついたのも!」

 稲津が大きな口を開けるが、慌てて手で押さえた。


「ああ、白鳥の奇術も会長が慌てて【マギディ】を唱えたからな。何かあるとふんだんだろう」

「ご、ごめんなさい。私、大凶魔のサインをみんなに教えるのを忘れていたわ。てっきり、私が”こちら側”にいるから、サインを変えるだろうと思って……」

 甲斐の謝罪に、皆は笑顔でこたえた。


「終わったことは仕方がない。だから珠洲(すず)のレイダーの時は、なるべくみんな祈るような、悲壮感(ただよ)う顔をしてくれ。ん~珠洲が相手の魔力を減らす為に、自ら人身御供におもむくような感じかな」

「よっしゃぁ! まかせておけ! 全力で祈ってやるぜ!」

「武雄、アンタのそういうわざとらしさが相手に読まれるのよ」


 大凶魔學院コートでは副キャプテンの美月が夜長へ進言する。

「夜長様、マギディ・コルドロンが成功したとはいえ、奴らの手の内は読めました。これからは各個撃破すべきかと」

「そうね、たとえどんな奇策が来ようとも、力でねじ伏せなさい! 全力攻撃を許可します! 我が大凶魔の力を龍堂学園、そして、中立を決め込んでいる高校や術者共に見せつけなさい!」


『『『『『御意!』』』』』


『龍堂学園メンバーは相手コートのアタックサークルへ 十……九……』


「あ、【マギディ】は大丈夫だから、みんなも休んでね」

 金剛の声に、龍堂学園メンバーは思い思いのポーズで腰を下ろす。

「やっぱり、つらいんだな」

「ああ、魔力は回復しても体力まではな……」

(会長……みんな……がんばって!)

 マギディ・コルドロンは成功したが、龍堂学園応援席では男子学生A、Bをはじめとする観客達に重い空気がまとわりついており、それを払拭するように竹ノ内が祈っていた。


 金剛は走ってアタックサークルへと向かうと、正面には夜長。

 向かって左にはストライカーの倉が、

(我らの【マギディ】によって魔力は回復したとはいえ、夜長様のダメージは深刻だ。あの魔女コスプレ女がどんな術を唱えようが、俺が肉の盾になってやる! そのあとは!)

と、熱い闘志を燃やしていた。


 右には土属性のマギカの洞が、

(夜長様の前に【魔岩盾(まがんたて)】を展開した後、美月様、火室、氷耶麻の風、氷、炎の術が三方から放たれる。そして私は《魔岩石(まがんせき)》を上空から降らせてやる! これで詰みだ!)

 その落ち着いた風貌に似合わず、魂を溶岩のように燃え上がらせていた。


 アタックサークルに入った金剛の左後ろは火室、右後ろには氷耶麻、そして真後ろには美月がポジションに着いており、定位置であるアタックサークルと各ラインの中間地点よりもかなりサークル側へと近づいていた。

 

『龍堂学園レイダーはカウントテン以内に攻撃を。十……九』


 金剛は杖を振り回すと

『クパンテクパンテ、リドリドミ~!』

『ワヨウシワヨウシ、ホズミズミ~!』

『ウトイメウトイメ、サクサクチ~!』

『マヤリモマヤリモ、タキタキタ~!』

『ラムカナラムカナ、トナトナミ~!』

『ワガカナワガカナ、ナミナミナ~!』

と、一つずつ『なごみ姫 レインボープリンセス』の呪文を唱え始め、呪文が終わる度に、その杖の先を大凶魔メンバーへと突きつけていた。


 もうそんな奇策に惑わされぬと、大凶魔メンバーは金剛の術の発動のみに注視し、夜長はコートに座っている龍堂学園メンバーを見つめていた。


(甲斐や他のメンバーは顔を背けたり下を向いている。やはりコイツはただの【マギディ】要員で、我らの魔力を消費させる為の捨て駒としてレイダーへおもむいたのか? しかし、マギディ・コルドロンが成功している【マギディ】要員をわざわざ捨て駒に? それとも稚拙(ちせつ)な術を最大限使って、少しでも私たちにダメージを与えるつもりか?)


『ぉぉぉぉおおおおおお!』

『ピィー! ピィー! ピィー!』

 競技場内は異様な雰囲気に包まれていた。

 神聖なる競技場でおちゃらけた術のまねごとをしている金剛に向かって、容赦ないうなり声や口笛のヤジが圧となって金剛を押しつぶそうとしていた。


『三……二……』

 

 神の眼のカウントダウンがゼロに近づくに比例して、観客のヤジも比例して高まっていった!


『……一……』


『静かにしなさぁぁぁぁ~~~~~~~い!!』


 突如放たれた、叱責のような金剛の”怒鳴り声”!

 それは、『その言葉を理解できる人間』から『発することのできる言語』を奪い去っていった。

 一瞬のうちに静寂に包まれる、『観客席含む競技場全体』。

 その中で、


 美月が体を回転させながら(【風の刃】!)

 火室が(【我が蒼き血で作られし白銀の投槍(ジャベリン)】!)

 氷耶麻が(【魔炎弾】! 乱れ撃ち)

 洞が夜長に向かって(【魔岩盾】!)

 そして倉が己の体に(【加速】! 【跳躍】!)

を唱えたつもりだったが、耳から聞こえるのは、術の詠唱にともなうう、


『ローブやマント、衣服のこすれる音のみ』!!


 静寂の霧は、大凶魔メンバーも容赦なく包み込んでいた!


『What happened?』

『What was going on?』

『生了什么事?』

『Que s'est-il passé?』

 金剛の言葉の意味を理解できない人間のみが、競技場に起こったことに対して、彼らの母国語で戸惑いを発していた。


 大きく息を吸った金剛は、戸惑う美月と氷耶麻の間をすり抜け、一気にミッドライン側へ走り出す!

(!)

 何かに気がついた夜長も、金剛の背中を追って一気に走りだした!


(夜長様!)

 あるじの体にこれ以上負担させるわけにはいかぬと、倉もまた術が付与されていない生身の体で一気に駆けだした。

(ぬああおおぉぉぉぉ!)

 腕を振り、膝を上げ、短距離ランナーのように走る倉の体はすぐさま夜長を追い越し、マントを羽ばたかせながら走っている金剛へと肉薄していった。


「は、羽斗く~ん! う、受け止め、てぇ~!」

 日本語が消え失せた競技場にただ一つ、金剛の声だけがコート上を貫いた。

 すぐさま立ち上がった白鳥は【マギディ】のように両腕両足を広げ、目黒と鳥居もまた白鳥の後ろを支えていた。


(逃がすかあぁぁぁ~!)

 魂の咆吼(ほうこう)が顔に表れたかのような形相(ぎょうそう)で、倉は金剛の背中に狙いを定めながら右拳を握りしめた!

(背骨を……叩き折ってやる! うおおぉぉぉ!)

 金剛は少しでも体を軽くする為か、空気抵抗を減らす為か、首元で縛られたマントのひもゆるめると、白鳥へ向かってジャンプした。

「きゃあぁ!」

 目黒、鳥居に支えられながら、白鳥はミッドラインを超えて飛んできた金剛を受け止めた。


(なにぃ!)

 倉もまた、放った拳にマントに絡まると、走った勢いのままミッドラインを超え、龍堂学園コートへと前回り受け身を行った。


『龍堂学園レイド失敗!』


『『『『『いやったあぁぁぁ~!』』』』』


 何度もあっけにとられる甲斐。

 それ以外のメンバーは、まるでレイド成功以上の喜びを体全体で表していた。

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