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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
27/115

ごめんなさい

 ――夏大会地区予選二回戦 大凶魔學院 VS 龍堂学園


 その日、巻き貝池ゴルフ場地下のマギカ・バディ競技場はあらゆる脅し、すかし、恨み、怨念によって満たされ、まるで魔女の釜ゆでのように沸騰していた。

 大凶魔學院の応援席のみならず、競技場のサイドにある一般観客席まで大凶魔學院の生徒、OB、さらに大凶魔にくみする術師、術遣いや別の学校の生徒までもが占拠し、一般観客は龍堂学園応援席へと追いやられた。


「うわ~。いや確かに天下の大凶魔が出るけどさ、たかだか二回戦、しかも一年生同士の試合で、この熱気は尋常じゃねぇな!」

「もはやこれは試合じゃねぇからな。”裏切り者”に対する

 ”制裁”!  ”粛正”! ”見せしめ”! 

 そして”殺戮(さつりく)ショー”だよ。

むしろ観客は試合よりも、そっちの方を見に来たのさ」


 先日、台貴知高校と龍堂学園の試合を見に来ていた男子学生AとBは、おもしろい物見たさにこの試合も観戦しに来たのだが、競技場内に漂うあまりのおどろおどろしさに腰が引け、おそるおそる龍堂学園の空いている応援席に座る。


「ふぅ~。でもよ、こういう雰囲気なら、逆に龍堂学園を応援したくなるな」

「お、おい! 滅多なことを言うな!」

「ん? なんで? ここは龍堂学園の応えん……」

 大凶魔の応援席や一般席に座れない大凶魔派の人間達が、龍堂学園の応援席でありながらも、後ろ半分以上を占拠していた。


 彼らは龍堂学園を応援する人間を、串刺しにするほどの鋭い視線やプレッシャーを辺りに放っていた。

 龍堂学園の応戦席である為、大凶魔を応援することはマナー違反となり、《神の眼》から注意、下手したら”強制退場”になる為、あえて大凶魔の名前は出さないが、百や二百できかない”圧”が一般観客、そして龍堂学園の生徒の体を押しつぶそうとしていた。


 その為、龍堂学園の生徒、風紀委員の竹ノ内でさえも口をつぐみ、手にした竹刀を握りしめていた。

(も、もしうちの生徒に手を出そうものなら……あたしが殿しんがりとなって!)

 そして竹ノ内は自分の真ん前の席、最前列のど真ん中の空いている席に目をやる。

(龍造先生まだ来ないのかな? ……あたし一人じゃ心細いよ~)


 そしてその強大な圧は、選手控え室にいる龍堂学園メンバーにも届いていた。

 学ラン姿の目黒が手のひらに拳をたたきつける。

「いいねいいね~! このアウェイ感! 逆に闘志が高ぶるってモンだ! 見てな、俺様が全員静かにさせてやるからよ!」


 白いタキシードにシルクハットを被った白鳥が

「ブーイングを歓声に変えるのはマジシャンとしてのほまれ。腕どころかシルクハットの中の”鳩”も鳴いておりますよ。ポ~ポ~! クルッポ~!」


 巫女装束姿の鳥居が

「ま、あたしは魑魅魍魎(ちみもうりょう)百鬼夜行(ひゃっきやこう)に慣れているからさ、これくらいは何ともないけど……。珠洲(すず)、大丈夫か? 気分悪くないか?」


 魔女コスプレの金剛が杖を両手で握りながら

「大丈夫だよ珠美ちゃん。この”念”は……あたし達に向けてじゃないからさ」


 ”ガチャ”とドアが開き、その”圧”、”念”が向かう先である甲斐が、白いナイトドレスを纏って、ややうつむき加減に入室してきた。


 紺のスーツに黒縁眼鏡、黒のストッキングを履いた稲津が

「会長、校長先生からの電話はなんと……? 《魔回線》ではなく一般回線なんて珍しいですね」

 ”ハッ!”と甲斐は顔を上げ、そしてみんなを見渡した。

「う、うん。その……『大変だろうが頑張ってくれ』ですって」


「なぁに、たとえ大凶魔派が競技場になだれ込んできてもよ、俺一人でぶっ飛ばしてやるぜ!」

 目黒のその言葉に、甲斐は何か覚悟を決めたように口を開いた。


「みんな、私のわがままのせいでみんなを巻き込んで……ごめんなさい」


 そう言うと甲斐はゆっくりと頭を下げた。

 そして、顔を上げると無理に笑顔を作る。

「でも安心して。龍堂学園生徒会長として、マギカ・バディチームのキャプテンとして、そして……ディフェンダーとして、なにが起ころうとも……」

 甲斐は皆をまっすぐな眼で見据えてから、体中から覇気(はき)を飛ばし、誓うかのように宣言した。


『みんなを必ず”生きて”帰すから!』


 スポーツにおける熱狂的なファンは、時に贔屓のチームの勝敗に関わらず暴走をする。

 試合が始まる前、相手チームの選手が泊まるホテルの周りに集まり、夜通し騒ぎ立てたり、試合が終われば、相手チームのバスを取り囲んだりして威圧するなど……。


 ましてや、魔術が絡むこのマギカ・バディ。

 そして、大凶魔を抜け、龍堂学園に入学した甲斐が率いるこのチームが、大凶魔派の人間からどういう思いでどういう扱いを受けるか?


 もっとも、競技場内での不埒者は、《神の眼》の絶対的な力によって注意、そして警告と言う名の【沈黙】の術がほどこされ、さらに暴れたりでもしたら”強制退場”と言う名の


【どこに飛ばされるかわからない転移の術】


をかけられ競技場内から”排除”されるが、競技場から一歩外に出れば、いくらでも”事故”として”処分”できるのである。


 目黒が「おい、ちょっとこれは……まずいんじゃねぇの?」

 白鳥が「いけませんね。我々の”おちゃらけ”が、ここまで会長を追い詰めてしまっていたとは……」

”えっ!”と甲斐は軽く目を丸くする。


 鳥居が「もういい加減、ぶっちゃけてもいいんじゃないか?」

 金剛が「……だから、もっと早く言おうって言ったのにさ」

 稲津が「それじゃ、みんな~いくわよ! せぇ~の」


『『『『『会長! ごめんなさい!』』』』』


 五人が一斉に甲斐に向かって頭を下げた。

 さらに、白鳥が脱いだシルクハットから白い鳩が顔を出し、”クルッポ~!”と鳴きながら甲斐に向かって頭を下げた。

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