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マギカ・バディ(Magika Baddy)

 白い鳥は丸い眼をさらに丸くする。

『こ、この私を召喚した目的が……ひ孫さんの遊び相手……』


『そう思っておったんじゃが、その様子では、やっぱりお主では役不足すぎるなぁ。本当ならお主の、それこそひ孫、いや玄孫(やしゃご)階級の眷属に頼もうと思っておったんじゃが、まさか”頂点”が召喚されるとは予想外じゃった。ところで、もしお主がよければ、適当な下っ端の眷属を紹介してくれれば、ワシも助かるのじゃが……』


『フ……フ、フハハハハハハ!』

 白い鳥のくちばしから、笑いのさえずりが発せられ、虚空に満たされる。


『すまんのう。手間をかけさせてしまって……』

『何をおっしゃいますか! こんなおもしろいこと、我の眷属では力不足ですよ。人を楽しませる事こそ我等の義務! 使命! そして我等自身の愉悦、悦楽、そして楽劇!』


『その喜びようを見ると、お主のおる《地獄》とやらは噂通り、まさに人が夢見る理想郷、欲に満たされた場所みたいじゃな?』


『その通りです。そもそも、人を誘惑し導く所が苦痛に満ちた場所でどうするのですか! そんな場所、甘い誘惑で奴隷をつのる、貴女方の世界の”暗黒使役場”ですよ!』

 白い鳥は白い翼をフリフリしながら、意志に向かって得意げに講義を始めた。


『そもそも、神のつくった《楽園》とやらは、光も闇も、時間すら存在しない、まさに今、私たちがいるこの虚空といってもいいでしょう。神に造られ、そんな虚空に漂う貴方たちの祖先は、例えるなら、おもちゃ箱の中に放り込まれ、いつしか忘れ去られた人形! ああ、今でもあの時の彼らを思い出すと、私の胸は張り裂けそうです」


 そして、楽劇のような壮大なさえずりが虚空を震わせた。

「そして私は、人が我等のようにある為に、《欲の果実》を彼らに与えました。そして、欲を食した人は一つの魂、二つの性別、二枚舌、過去、現在、未来の三つの時、そして四肢、四面、五官、五感、五味、、五臓を。さらに六腑、六感、北斗七星、七不思議、八面、八方、八百八町、途中は省いて……繁殖する為の四十八手を手に入れました! ええい! もってけぇ! 泥棒!』


『一部変なモノがあるが、なるほど、お主の働きによって、今のワシがあるという訳か』


『そういうことです。とりあえず、何をしてひ孫さんを楽しませましょうか……。ん、先ほどから貴方の奥底に……《カバディ》と見えますが。これは?』

『ああ、お主から見れば異界の神の教えを元にした競技の名じゃ。ワシが役員を務めておる。競技への想いが強いからかのぉ、そちらからも見えるんじゃな』


 白い鳥は意志の奥底にあるカバディの、さらに奥底まで覗く。歴史、ルールから、意志の眼から見た競技者の表情まで……。


『……なるほど。これはおもしろそうですね。では、その異界の神と貴方に敬意を表してカバディと魔術、この二つを融合した新しい競技をつくりましょう!』


『なるほど! それはいいんじゃが……』

『何か……御懸念が?』

 白い鳥はほんのわずか、首をかしげる。


『問題は、ワシのひ孫が成長する十数年後に、その競技をやっている人間が何人おるかじゃ。カバディに限らず団体競技は、より多くの競技者がいれば対戦する相手も、チームも増え、おもしろさもそれに比例する。いつも同じ人間同士じゃつまらんからな』


『なるほど……。その程度ならご心配には及びません。数多くある競技、スポーツの歴史の中に、その新しい競技の歴史を”書き加えれば”よいだけです』


『歴史に書き加えるじゃと! 過去にさかのぼって、新しく歴史を作るというのか! いや待て、確かに、頂点に君臨するお主なら、それぐらい出来ても不思議ではない!』


『たいしたことはありません。歴史とは、いわば過去から未来へ流れる無数の川のようなモノ。時にはいくつかの川が交わる事もあれば、突然消滅する川もあります。そんな川の末席に、さきほどの新しい競技という川を付け足せばよいのです』


『やれやれ……どうもワシはとんでもないモノを呼び出してしまったようじゃな。ところで、まずはその新しい競技の名前を決めなくてはな……。ん、その顔を見ると、何かいい名前が浮かんでおるみたいじゃな』


『はい、《マギカ・バディ(Magika Baddy)》と言う名は、いかがでしょうか……』

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