イーリヤの孤島
こんな夢を見た。
私は一人砂浜に立っていた。
目の前は広大な青い海が広がっている。
島影は一つも見えない。
後ろを振り返ると大きな洋館が見えた。
その洋館を見て思い出す。
私の使命は洋館に行って人を起こすことだと。
砂浜を歩くと階段が見える。
それを登ると洋館の裏庭へと繋がっていた。
綺麗に整えられていない裏庭は草が生い茂っている。
草をかきわけて洋館の裏口を開いた。
思ったよりも明るい室内に驚く。
まっすぐ進むと正面玄関のようだ。
私は左手にある階段を上り、2階へと進んだ。
2階には左右に4部屋ずつある。
私は言われた通りに右の部屋へと向かう。
手前の1室に入り、起こすことが出来なければ次の部屋へ行くのだ。
入った室内は暗く何も見えない。
重いカーテンが光を遮っているようだった。
暗闇に慣れるまで扉の前で立ちつくす。
やがて暗闇の中にベッドが見えた。
ベッドの前に立ち、寝ている男を見下ろす。
持ってきたナイフで自分の指先を傷つけた。
ぷくりと血が盛り上がり、男の唇へ落ちた。
もしこれで男が目覚めなければ、次の部屋へと向かうこと。
それが使命だった。
幸いなことに男は目覚めた。
血で濡れた唇を舌がゆっくりと舐める。
そうしてもっと欲しいとでも言うように唇を動かした。
ゆっくりと血を堪能した男は目を開ける。
男は金色の美しい目をしていた。
その輝きに目を奪われる。
「お前は永遠を望むか?」
男の問い掛けに私 は首を傾げた。
「永遠か死か、どちらを選ぶ?」
「どちらでも。貴方の好きにして」
私には帰る場所なんかないのだ。
だからここに来た。
生きるも死ぬも同じことだ。
私の言葉に男は緩く笑う。
「面白いことを言う。
人とは永遠を願うものだろう?」
私はまた首を傾げる。
人とは永遠を願うものなのだろうか?
分からなかった。
「では、お前に永遠を与えよう。
ずっと私の傍にいるがいい」
男の指が私の頬に触れる。
その冷たさに驚いた。
永遠を約束する男。
彼は何者なのだろうか?
「我がイーリヤの一族はお前を歓迎しよう。
今日から仲間だ」
男の冷たい唇が私の唇に触れる。
私は静かに目を閉じた。
口の中に何か液体が入ってきた。
鉄の味?
嫌悪感が込み上げるも吐き出すことは出来ない。
私はそれを飲み込んだ。
男が満足そうに微笑む気配がする。
唇が離れて 男が問い掛ける。
「名前は?」
「アルマ」
「いい名前だ。アルマ、お前の身体は徐々に変化していくだろう。
だが、怖がることはない。
それは永遠に生きるための変化なのだから」
愛おしいものに触れるように男が私の頬に触れる。
その指はもう冷たくない。
「さぁ、寝よう。朝は寝るものだ」
男が眠そうにあくびをする。
私は誘われるままに男の隣に横になり目を閉じた。