二話
「さて、いきなり現れたお主は、誰だ……?」
魔王はこっちを怪しんでいる!
当たり前か。いきなり家の中に誰か入ってきたら怪しむよな。
「僕はスミ=オオヤと言います。今、ちょうど異世界から転送されて
きたのですが……場所を間違えたらしいですね」
「転送…?そういえば人間族の王が異世界の人間を召喚するといううわさを聞いたが、本当
だったのか。しかしそれにしても魔王城に転送されるとは……
運が悪かったなッ!!」
魔 王 が お そ い か か っ て き た!!
身長よりも大きい剣を普通の人間には見えない速度で打ってきた。
が、その手が止まる。
剣は、空気中にぴたりと止まって、ぬいつけられている。
「……サイコキネシス」
僕は魔王の身体を丸ごと空中へ持ち上げる。
どんなにスピードが速かろうと、どんなに力が強かろうと、動けなければ何もできない。
「なめるなよっ、エレキッドサンダー!!」
ものすごい雷が僕の身体を襲う、その前に、避けるようにして、はじかれるようにして雷が上へと逃げていった。
空気中の元素を一部固定すれば、そこをどんな物質だろうと通しはしない。
こんなの朝飯前だ。
魔王は呆然としてこちらを見ている。
「なっ……召喚されたばかりのレベル1が、どんな防御力だ…」
あ、やっぱりレベルとかあるらしい。
「くっ……殺せ、殺すがいい……」
あきらめたように、魔王はつぶやいた。
「それで人間族は平和になるのであろう……?せいぜいかりそめの平和を楽しむがよい」
「なあ、そんなことより聞きたいことがあるんだけど」
「何だ、魔王族に伝わる世界の秘密か、それとも、元の世界への戻り方か?」
くはは、とあきらめたように魔王は笑った。
「それよりも重要なことだ、なぁ、」
僕も笑ってみた。
「アイスクリームって知ってるか?」
「あいす、くりいむ?それは、何の秘術のことだ」
空中に縫い付けられ、動くことの出来ない魔王はぽかんとした顔で聞きなおしてきた。
どうやらないらしい。あの少女め……
『ちょ、ちょっと待って、転移しないでよ!』
いきなり頭の中に声が響く。
『一ヶ月後まで、戻ってこられたら困るんだってば!』
そんなこと知るか。アイスのない世界で一ヶ月とかそれこそ困る。
困りすぎる。
『あいすくりーむって名前じゃないけど、それっぽいものはあるから!』
何……?
『この世界で探してみて、そこの魔王さんに聞けばわかるはず!
魔王城に転送されて良かったね、結果オーライ!あと誤転送ごめん!』
おい。
『てへぺろ!』