一話
ある天気のいい昼下がり。
「いい天気だ……」
大谷 澄こと、僕は公園のベンチでのんびりしていた。
日曜だが、公園には人がまばらにしかいない。
近くのコンビニで買ったアイスは、期間限定の、「みたらしドリアン」味だ。
どんな味か、わくわくしながら口に運ぼうとしたとき、いきなり周囲が白い光に包まれた。
「……?」
目をあけると、そこは一面真っ白な世界だった。
公園にいた数人も、一緒にいて、驚いた顔をしている。
いや、それよりも大事なことがひとつある!
「僕のみたらしドリアンは無事だったな」
手に持っていたものは、そのままだったらしい。
僕は安心してそれを口に運んだ。
うん、不味い。安定の不味さだ。
「お待たせしました、今から説明を始めます!」
一人の少女……10代半ばぐらいだろうか、
金色の長い髪をして、蒼い目をしている。
おしとやかなお嬢様……お姫様といっても過言でない容姿だ。
横目で見ながらみたらしドリアンをもう一口。
ぶれない不味さ。
ちらっと周囲を見ると、ここにいるのは出っ歯の男、
ショートカットで黒髪の少女、茶髪の少女、イケメンの4人だった。
意外と少ない。みんな呆然と少女の方を見ている。
「あなたたちは、選ばれました!今からあなたたちは、今までとは違う世界……
異世界へと転送されます。そちらでは今、ある国の王様が召喚の儀式を行っています。
いきなり召喚されても良かったのですが、これから行く世界のことをチュートリアルとして、
簡単にここで説明させてもらうのです!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!いきなりそんなこと言われても……」
「待ちません~!ちょっと時間が押してるのです!
これからの世界は、剣も魔法もあるファンタジー世界!
あなたたちがいきなり行って戦うのは厳しいので、ちょっとした
サービスでチートをひとつさしあげるのです!」
少女は腕時計をちらっとみながら早口でしゃべる。
「もうめんどくさいのでチートはランダムにさしあげます!
向こうの世界で確認してください~では!
いってらっしゃい~!!」
周囲の人が次々と光につつまれ、消えていく。
この状態ならばれないかな……ちょうどみたらしドリアンもなくなったし。
僕は公園へと転移した。
シュン、と一瞬にして戻る。そこには誰もおらず、
それ以外は最初と全く変わらない状態だった。
さて、帰るか。
「ちょ、ちょっとなんで勝手に帰ってるんです!?ていうか何で帰れるんです!??
いいから戻るのです!ほら!」
僕の周囲がまた白い光につつまれ、先ほどの白い部屋へ戻ってきた。
「何であなただけ転送されなかったです……?」
「僕が、自分で転移したいところに移動したからな。」
僕は生まれた時から転移の能力があった。
それから、サイコキネシスで物を動かすこともできる。
寝ながら物をとってくることができるから便利だ。
「と、とにかく一人だけ転送されないのはダメなのです!
もうあなたはリストに載っているのです……困るのです……」
少女はうるうるさせた目でこちらを見てきた!
全く心は動かなかった。
僕が死んだ魚のような目で見ていることに気付いた少女は、
「あなたは何が好きなのです?」
物で釣ろうとしてきた。
「先ほど持っていた……あいす?あいすが好きなのです?
異世界ですよ~、今まで食べたことないあいすがあるかもしれませんよ?」
ん?ほんとだろうか。
今まで食べたことないものが……?
ちょっと興味が出てきた。
「他にも、美味しい食べ物があるかもしれませんよ~?
どうです?行ってみたくなったでしょう??
とりあえず、1ヶ月後に災害が起こるので、それが起きるまでは
帰ってこられては困るのです!では、行ってらっしゃい~!!」
僕は、今度はおとなしく転送されることにした。
優しい光につつまれる。
その光がおさまったとき、僕は広間の中にいた。
お城の中だろう、天井が高い。そういえば王様が召喚したとか言ってたっけ。
しかし何か違和感を感じる。
「誰だ?お主は……!?」
出てきたのは、ツノを2本はやして、黒い翼を持った大柄で色黒の男だった。
どう見ても魔王です。本当にありがとうございました。
ということはここはもしかしなくても魔王城。
「転送まちがってるし……」
そういえば時間押してるっていってたっけ。