二話 魂助少年
「冥界はリンヤが思う通り、行き場のない魂が集まる場所。同時に、次の身体を待つ場所。私はそれを管理してるの。」
ウィルはそう説明した。
「次の身体…?」
次の身体とは一体なんなのか。考えられるとしたら…
「そう、転生。」
ウィルは俺の心の内を見透かしているかのように言った。それに俺は少し驚いてしまう。
「転生した魂は次なる時間を過ごすために、アルヘイトという国に行くの。だけど____」
ウィルはそこで言葉を区切ると、下を向いてしまった。悔しいのか、悲しいのか。俺にはわからなかったが、その小さい身体がかすかに震えているのを見た。そしてウィルは、顔をあげると、
「だけど、ある日事件が起きたの。ある魂が転生して、アルヘイトへ向かった時、急にその道筋に亀裂が入ったの。その亀裂は魔界に繋がる亀裂で、その魂は魔界に消えてしまった…。魔界は、魂を貪り喰らう悪魔でごった返しているわ……。だから、多分。その魂は次の時間を迎えずに本当の終わりを迎えてしまったに違いないわ…。だけど。アルヘイトまでの道筋は普通の人じゃ絶対に壊せない!!私にそんな力があっても私にはこんな事できない!!なのに、なのに。アルヘイトの人たちは全てを私のせいにして、私は冥界を追放されたの…。」
目尻に透明な涙を浮かべて言った。俺は馬鹿だから、ウィルの話についていけないところもあったけど、確かにこれだけは分かった。
「つまり、ウィルは罪を着せられたって事か?」
無実なのに罪を着せられてしまうのはよくある事だ。しかし、間違いを認めれば自然と解決に結び付く。人はそうやって誤解を解いてきた、と、俺は思う。だが、この少女の場合…。
自然と手に力が入る。こんなのおかしい。今まで安全に過ごして貰っていたのに、証拠もないくせに、勝手に殺人の罪をきせるなんて、俺だったらきっと人類に絶望していたかも知れない。
「だからね、私はもうこれ以上魂が終わりを迎える事のないように、魔界の王、魔王を倒す。だけど、一人じゃ不安だったの…。頼れる人はいないから。だから私はここに来たの。」
…… 俺は、しばらくなにも言わなかった。否、言えなかった。
俺の言動を見て、拒否と受け取ったのかウィルは
「無理しなくていいわ。こんなぶっ飛んだ話、いきなり呑み込めと言っても無理がありもの」
そう言って、木陰の奥に行こうとしたが、叶わなかった。なぜなら俺が手を掴んだから。そして。
「ウィル。俺、冥界に行く。冥界にいってお前をその罪から解放させて見せる!そのアルヘイトって人たちから見れば俺も悪役になるだろうけど、俺、今のウィルの言葉聞いて思ったんだ。お前はヒーローだ。人かから嫌われても救おうと努力する。それが、どんな形であっても。結末なんて分からない。だけど、俺はウィルを確かにかっこいいって思ったんだ。だから、俺も協力する。認められないヒーローになってみせるよ!」
少々力みすぎただろうか。がむしゃらに思いをぶつけたから、もしかしたら伝わってないかも知れない。
ウィルは、しばらく目をぱちぱちさせると、これ以上にないくらいの笑顔でこう言った。
「ありがとうリンヤ!これから宜しくね、」