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文明の濫觴  作者: 烏木
第1章 開拓地を求めて
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第2話 移民団結成

「今の状況とこれからの事でお聞きしたい事があります」

リーダーらしき男子が口を開く。

「私達も今までその事で話し合っていたわ。楠本さんと漆原さんともその事でお話するつもりだからよかったら一緒にどうかしら」

左右を見る仕草をしながら雪月花が答える。

「ありがとうございます」

中々礼儀正しい子達だ。まぁ説明は一度にすました方がいいからね。


夕食と飲み物と設営(一度仕舞ったけどもう一度出してきた)と両家の招聘は俺らがやるのが筋なので手分けして取り掛かった。


楠本さんと漆原さんと高校生(?)を前にして雪月花が状況説明からはじめる

「先ず、例の声についてはよろしいですか?」

「ええ」

「我々の推論ですがここは紀元前五千年ぐらいの先史時代と考えています」

「縄文時代あたりですか?」

「そうですね。ここが日本列島なら縄文時代の前期あたりと思われます……仮に推論が間違っていても救援などは期待できない状況である事には変わりありません」

ざわつくかと思いきや落ち着いて聞いているようだ。

「それでこの土地ですが、大変拙い状況です。外をご覧になられるとお分かりでしょうが外は荒地です。ある程度作物の種は持っていますので作物を育てられるか検討しましたが、収穫できるまでに何年も掛かりそうです。更に周りの森林も生長不良のもやし林です。原因は分かっていませんが致命的な問題を抱えている可能性が高い状況です。つまり内側で何とかするしか無いのですが、色々検討しましたができるだけ頑張って作物を育てたとしても半分以上……おそらく七割近くが飢死します。全滅も有り得る状況です」

「……………」

「開墾できて土作りや灌漑ができて作物の種や苗が潤沢にあって一人前の農家が栽培するのであれば百五十人以上は暮らす事もできるとは思いますが、それまで生き残る食料の目処がありません……我々の結論はここに居ては『未来が無い』です」

「……………」

「未来が無いのはここだからであって、他の土地に移れば未来が拓ける可能性があります。我々はここを去ってもっと有望な土地で未来を作りたいと思っています。成功する可能性はけして高くはありません。ある意味、博打である事は自覚しています」

水田が作れてある程度食糧源がある土地を見つけられたら勝ちだとは思う。

動物の分布状況にも拠るけどこの位の人数だったら何年かは食べていけるだろうし、九割以上成功できると思ってる。

人数が多くなると共倒れになって失敗するから「高い」とは言えないか。

「ただここにいては限りなくゼロに近いので我々としては躊躇する理由にはなりません。少ない食料を自分達で独り占めにして他人を追い出したり口減らしをしたりして生き残れる可能性がある三十~五十人に入れない限り生存率はゼロです」

カルネアデスの板のように助かる可能性のある人数が限られているのだから他人を押し退けるのが悪いとは言えないけど

「その三十~五十人に入れそうなのは、宗教団体かここのスタッフでしょうね」

「……………」

空気が重いがしようがない

「そこでみなさんにご提案です……我々と一緒に新天地に向かいませんか?」

これで「いやだ」って言える奴はどれだけいる?

「但し、人数をこれ以上増やすことは困難です。二年程度は狩猟採種生活になると考えていますが、歴史をみても定住して農耕が行われるまで、つまりは狩猟採取での集団の人数は多くて三十人程度と考えられています」

本当かよ?どうなんだ匠?考古学取ってるんだろ?……匠もポーカーフェイスか。

人数を絞ったのは備蓄食糧の関係が主因だと思っていたんだがなぁ。

「少ないと狩の効率が悪く獲物が獲れませんが、多いと食料が行き渡りません……ですのでみなさんのご協力が得られるなら他の勧誘はいたしません」


まぁ「よろしくお願いします」「一緒に頑張りましょう」しか無いよね。

人数も大人二十人に子供五人とまずまず良い線が集まった。

もうね労働力としては中学を卒業したら大人って扱いにしないとやってられないから高校生組も大人勘定だよ。食糧消費量を考えてもね。


それじゃぁ我らが移民団のメンバーを確認しようか。


先ずSCCから。全員春からは院への進学もしくは進級が決まっている二十二歳

代表取締役社長の芹沢(せりざわ) 将司(まさし)

真面目な奴でブレーキ役をする事が多いな。

余所からは「SCCの良心」なんて言われているが、それって俺ら他のメンバーが難有りみたいで……難有りが多いのは認めよう。

俺らは怒るラインを心得ているので滅多に怒られないが怒ると誰も逆らえない。

色々面倒見がいいからかよく貧乏くじを引かされている。

これまででも分かるようにリーダーシップは凄いんだよ。

専攻は電気工学。電装品が多いEVには欠かせない人材でもある。

趣味は天体観測で、趣味に走った際はブレーキにはならない辺りは同類・類友か?


代表取締役常務の南部(なんぶ) 雪月花(ゆづか)

名前は「ゆづか」と読む。「す」に点々じゃなく「つ」に点々。

親御さんは娘の名前を正しく読み書きさせようなんてこれっぽっちも思ってなかったんじゃないか?

母親が北欧の人で亜麻色の髪の美女。それでもって逆らってはいけない人その二。

理詰めで小一時間問い詰められると涙目になる。ちゃんと是々非々は弁えているから決して理不尽ではないんだが、逃げ道が塞がれたまま怒涛の正論攻めは辛い。

基本的には渉外及び頭脳労働担当で深謀遠慮をめぐらして交渉事をまとめる手腕が抜群な実に強かな女史である。他のメンバーが強すぎるだけで人並み以上だとは思うけど俺らの中では一番体力が無い。

専攻は薬学で西洋薬に留まらず漢方薬にも手をだしている。


工務担当取締役の東山(ひがしやま) (たくみ)

実験考古学を専攻している。実験考古学ってのは当時の技術水準や資源で作った道具を実際に使ってみて推定した用途であっているかなどを考える学問だそうだ。

両方のお祖父ちゃんが名人級の職人で小さいころから英才教育を施されていて、設備と材料があれば大抵の物は作れる。良くも悪くも職人気質ってところもチラホラ

英才教育に俺も巻き込まれた事もあるがそれはまた別の機会にでも


経理担当取締役の天馬(てんま) 佐智恵(さちえ)

物理化学専攻のサイエンティストだけど頭に狂の字が付くともっぱらの評判。

人呼んで「暁大のミラー伍長」

爆発する物とか爆発する物とかそれから爆発する物とかポンポン合成しないでください。それから刃物の作成。何とかに刃物を地で行かないでください。

両方とも後始末が大変なんです。

物事に熱中すると比喩でなく寝食を忘れ周りが見えなくなるのはいただけません。

幾ら同じ誕生日で生まれたときからの腐れ縁でも限度ってものがあります。

最後に黒ずくめの格好が好きなのは分かりますが気配を消さないでください。

特に夜だと心臓に悪いです。「闇夜の佐智恵」は駄目です。

未だに気配を消している佐智恵は検知できません。

止めてください。本当にお願いします。俺にもプライベートって物があります。


平取の江戸川(えどがわ) 美野里(みのり)

専攻は家畜史

海に山に獲物を狩っては食うプレデターな肉食系女子。

ゲテモノだろうが何だろうが食う悪食で、美野里が食えない物は人類が食えない物だと思わせるぐらい何でも食べる。別に大食いって訳ではないが、食に向ける情熱は他の追随を許さぬレベル。

評価基準は「食べられるか食べられないか」がいの一番にくる。

後ね、料理は普通に作れば上手いのに創作料理を作りたがるんだよ。

これが自動拳銃でやるロシアンルーレット。奇跡が起きないと酷い目にあう。


敷島(しきしま) 文昭(ふみあき)早乙女(さおとめ) 奈緒美(なおみ)の二人も平取

この二人は凄く飲む。酒をこよなく愛している二人。内緒だけど奈緒美がアルコール発酵実験の廃液を誤飲したのを見たことがある。後はアルコールと水の共沸実験の蒸留物の廃液も誤飲してたなぁ……廃液は一斗近くあったけど二人で一週間もかからず誤飲し尽くしたみたい。専攻は、文昭が機械工学で奈緒美が発酵学。


最後に代表取締役専務の俺、東雲(しののめ) 義教(よしのり)

建設学科都市計画を専攻している。個性的なメンバーから色々な被害を受けている。

誰か優しくして欲しい。将司ぐらいかな?俺を酷い目に遭わせなかったのって。

特技は佐智恵のお守り……好きで身に付けた技能じゃありません。


続いては漆原(うるしばら)さん

お祖父さんの源次郎(げんじろう)さんは漆器職人で息子さんに代を譲って今はご隠居さん。

お祖母さんの静江(しずえ)さんは昔は和裁の先生をしていて今は趣味の編み物で色々小物を作っているそうだ。夫婦そろって矍鑠としたご様子

お父さんの剛史(たけし)さんは個展を開くレベルの陶芸家(漆器職人はお兄さんが継いだ)

子煩悩な感じのお父さんです。

お母さんの(めぐみ)さんは現在は休業中だけど理容師さん。

お子さんは三人で、長男の史朗(しろう)くんが五歳、長女の美恵(みえ)ちゃんが三歳、次女の江理(えり)ちゃんが十ヶ月


その次が楠本(くすもと)さん

お父さんの政信(まさのぶ)さんは「公務員です」と言っていましたが文昭の知人(師匠)で佐世保から習志野に転勤するのに伴う休暇中だったそうなので、恐らく山中にナイフ一本で放り出されても生きていける人だと思う。

お母さんの奈菜(なな)さんは元看護師で今は専業主婦をしているとの事。多分オタク。

お子さんは二人で長男の宣幸(のぶゆき)くん四歳と次男の和広(かずひろ)くん十一ヶ月


最後に高校生組

自転車でキャンプに来ていた幼馴染で同じ高校の二年生

はじめに話しかけてきた榊原(さかきばら) 謙二(けんじ)くんが今回のリーダーだそうだ。

ワンゲル部の部長でアウトドア担当らしい。

安藤(あんどう) 一平(いっぺい)くんは水泳部所属で水関連の時はリーダーを勤めるそうだ。

釣りが趣味と言ったときに奈菜さんが「名前通りだ」って呟いたら「年配の人から偶に言われます」と余計で間違った事を言って大林さんに叩かれてました。

うっかりさんなんでしょうね。

伊達(だて) 素弘(もとひろ)くんは柔道部の部長で体力に自信があるそうだが、政信さんや文昭を前にすると霞むとしょげていた……人外の徽章を持っていると思われる政信さんや予備自衛官の訓練を身体が鈍ると愚痴る文昭のような人外を比較対象に持ってきちゃいかんよチミ。

周りにミリオタとばらされたとき奈菜さんの目が光った……

志賀(しが) 希美子(きみこ)さんはワンゲル部の副部長で今回の副リーダー。姉御肌っぽい。

大林(おおばやし) 早苗(さなえ)さんは色々なクラブから助っ人を頼まれる万能少女と安藤くんが言っていたが、基本は帰宅部で三十坪ほどの家庭菜園の世話をしていると言っていた。

岸本(きしもと) 由希(ゆき)さんは無口なのか緊張しているのか人見知りなのか分からないが、ボソッと一言「文芸部」とだけ。はいはい奈菜さん分かってます。


後の方がお座成りだけどSCCとそれ以外は付き合いの長さとかあるから……


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