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文明の濫觴  作者: 烏木
第11章 来訪者
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第9話 会議運営

「よし、今日はここまでにしよう。持ち帰っての課題は、先ずは名字を付けるのかどうかで、次に付けないならどうやって同名を区別するのかと、付けるとしたらどの範囲に付けるのか。最低でもここまでは押さえておきたい。その後は名字を付けるばあいの話になるが、集落名との関係をどうするのかと、これまでの命名規則との兼ね合いをどうするのか……これぐらいかな?」

「名字のバリエーションをどうするのかってのが」

「うん。そうだな。それも追加で。他には? ……では、各自持ち帰って再度検討という事で」

「ほいほい」


名字問題の会議は一旦は休会になった。

第二世代だけで話し合いをさせると、連鎖式に話が進んで検討範囲が広がっていくと“次回までに各自で考えて再検討”とやってもう一度原点から再検討となる事がよくある。


俺ら第一世代は、複数の有力選択肢がでてきた時は『この選択肢(複数もあり)に決める』つまり『選ばなかった選択肢はこれ以上深く検討しない』という決定をして検討する範囲を絞った上で議論するので原点から再検討という事は先ずない。


将司はここらの匙加減や選んだ選択肢のセンスが優れている。

それに、持ち越し課題にしても検討範囲を絞って各自がやる事を明確にしている。


今回の例だと『全世帯に名字を付ける。集落名は名字に使わない。美浦と川俣の住人の名字も使わない。その条件で名字のバリエーションを各自二〇個以上考える事』とか『全世帯に集落に(ちな)んだ名字を付ける。各集落の名称由来の名字案と地勢に由来する名字案、産業に由来する名字案をそれぞれ五つ、計十五ぐらい考えておいてくれ。オリノコは誰々と誰々が、ミツモコは誰それと誰それが……』といった感じで締める。


どれにするか迷う場面で色々な案を掘り下げていっても得る物はあまりない。

一つの課題に三つの選択肢があったとして、その選択肢にも三つの選択肢が……となると三段階掘り下げると二七通りの選択肢ができてしまう。

そして採用された一つを除いた二六通りの選択肢の検討に要したリソースは丸々無駄になる。

それならば、各段階で三者択一を三回繰り返した方がよっぽど良いから、誰かの権限で『この選択肢でいく』と決めた方がよいのだ。


もちろん、理由があってで意図的に風呂敷を広げさせる事もあるが、そういうときは将司がきっちり畳む。

それと将司から『そっちに広げると畳めない』というサインがでたら雪月花や俺が軌道修正を入れる。


対して、第二世代は全員に意見を出し尽くさせて、それを持ち帰って熟考させて再度最初から擦り合わせて他の選択肢が無いかという検証を繰り返していって決めるのを好んでいるので、第二世代だけで検討させると往々にしてああなる。


こういった合議を徹底して決める方法で第二世代は今のところはそれなりに上手くいってはいるし、検討漏れや検討不足になる事が少なくなるし、参加者の納得性が高い案が決められるので必ずしも悪い方法ではないのだが、実はこういった手法は時間が掛かるという欠点以上の致命的な問題をはらんでいる。


合議を徹底する手法の致命的な欠陥というのは、人を選ぶという事と少人数だから成り立つという物。

つまり、現在の美浦の第二世代だけでやっているから可能な方法でしかない。


だいたい『持ち帰って検討』と言われて真面目に検討する勤勉な人間が揃っていないと駄目な方法なのだが、そういう勤勉な人間だけで構成されている組織や集団は希有な例と言わざるを得ないので、一般には通用しない。


それと、合議制というのは、会議の参加者の()()が『自分が決定権者であり責任者である』という自覚のもと『決断に至るために必要な情報を集めて、その時点で正しいと考えた判断を行う事』と『決断に従って実行する事とその結果に対する責任を背負う事』ができないと真っ当には機能しない。


そういった()()()()()だけではない構成の組織や集団――極一部の例外を除いた組織や集団――が合議制を行うとどうなるかというと『そもそも何も決められない』とか『決断までに時間を要して手遅れになる』とか『前例の有無で決定される』とか『誰も望んでいない決定がされる』といった感じになる。


誰も望んでいない決定がされる事はあり得ないと思うかもしれないが、実は全員が他者に忖度して嫌だと思いながらも拒否しなかったため全員が嫌だと思っている案が採用されるという『アビリーンのパラドックス』というものがあって、これって結構陥りやすい罠なのだ。


合議制は会議体の構成員の全員がそれなり以上の人格と能力と覚悟を持っていないと真っ当には機能しないという重大な欠陥があるが、それ以外にも独裁制と比べると結論を出すまでの時間が長くなるし、思い切った施策が採りにくいという欠点もある。


ただ、時間が掛かったり思い切った事ができないという欠点は、安定した状況であれば大きな問題にはならないというか、屡々(しばしば)起きる(ワンマン経営などの)独裁者の暴走や無能による地獄絵図を避けられるという意味では擁護する事ができる点でもある。


安定した状況では擁護もできるというのは、逆に言えば、不確定要素や未知の要素が多くて先の見通しが不透明すぎたり時間の制約が厳しいといった、非常事態、緊急事態、不測の事態に対しては合議制の欠点は致命的で、そういう状況では即断即決で思い切った事ができる独裁制の方が適性がある。

だから、合議制を採用している民主国家でも非常事態には首相や大統領などの特定の人物に権限を集中させて事に当たる規定があるのが普通。


全て手探りで確かなものが何もなかった最初期の美浦は、名目上はともかくとして、実態としては将司の決定が移民団全体の決定とする独裁制を敷く事で対応した。俺らSCCの連中も将司の独裁権確立に積極的に動いたしな。


その後も第二世代に移譲するまでは、形式上と建前上は直接民主制ではあったが、内実は将司による独裁制もしくは将司・雪月花・俺の三者による寡頭制で、美浦総会や各種委員会で様々な要望や意見が出されてはいたが、それはパブリック・コメントや公聴会もしくは説明会のようなもので、最終的に決断し実施と結果の責任を担ってきたのは将司・雪月花・俺の三者、もしくは将司である。


このような少人者によって組織や集団を動かす寡頭制は権力が少数者に集約されているので独裁制の一部とされているので、実は美浦は民主制(多頭制)ではなく、将司(もしくは雪月花と俺を加えた三者)による独裁制であったわけだ。


ただ、これは三人の権力欲とかではなく、ある意味では必然的なものでもある。

最初期は誰も正解が分からない状況で即断即決が必要だったためだし、ある程度安定してからも『ありとあらゆる組織や集団は、発展していくと最終的には少数者が多数者を支配する寡頭制になる』という『寡頭制の鉄則』からは逃れられず独裁体制が続いたという事。


組織や集団の構成員の全員が全員、高い知能と勤勉さと決断力と責任感があるというのはどだい無理な話だし、組織や集団が大きくなると中には高い専門性を要求される場面も多くなっていくが、全ての分野で高い専門性を兼ね備える人材などあり得ないし、ましてや構成員の全員がそういう完璧超人という事など宇宙規模の奇跡が起きても無理。


そこまでいかないにしても、決定権者としてそれなり以上の適性を持つ人間はごまんといるが、小規模な組織や集団を除けはそういう人間が組織や集団の大多数を占めるということはほぼあり得ず、むしろ『自分で考えるという事ができない者』『自分の言動に責任を持たない者』『自分の利益や他者の足を引っ張る事にしか興味がない者』『当事者意識が無い者』など、決定権者としての適性に欠く者の方が大多数を占めているのが現実。


それに、多数者が一つの結論に合意できるほど人間はできていないので『全会一致の幻想』のように表面的には合意できているように見えても実際は合意などとれておらず、多数者が合意して決断するという事自体が人類には到達できない境地といえる。


多数者が合意して決断する事ができない以上は『少数者が利害調整などを行ってどうするかを決めて、多数者がそれに従う』という形態、つまり寡頭制にならざるを得ない。

事実、どの組織や集団にもキーパーソンやキーマンなどと呼ばれる組織や集団の決定に大きな影響力を持っている人間がいるものだが、このキーパーソンの集合が組織や集団を動かしているし、少数者が多数者を支配する構造、つまり寡頭制を成している。


一人による独裁についても、規模が大きくなると一人では手が回らなくなるので、これも拡大にともなって寡頭制に移行しないと詰んでしまう。


これを『寡頭制の鉄則』という。


なお、寡頭制にならなかった、もしくは、なれなかった組織や集団は小規模のままか四散五裂して消え去っていく。


第二世代は各々がそれなりに優秀だし、バックボーンがほぼ同じで、ある意味では全員が物心つく前からずっと一緒にいる幼馴染で気心も知れているから現状では徹底した合議制でも機能しているが、それは一般には通用しないし未来永劫使える手法ではない事を理解させないといけない。


美浦も今後発展していくと高い専門性を要求されるようになり、一部の者しか話についていけなくなるし、今はまだ合意できる人数ではあるが、人数が増えると合意が無理になり、合意できたように思えてもそれは幻想でしかなくなる。


実務の移譲をされて以降の理久くん嘉偉くん義智の三人衆は、第二世代では標準のそういうやり方は拙いと分かったようで色々と画策しているが、今回来ている八人は義秀を除けばその辺りはまだまだ不足している。


義秀は、復旧支援隊で苦労したからか、そこらはある程度は分かってきているようで、最近では“自分の責任にしていいからこうしよう”とか“司くんの権限で枠組を決めてくれ”といった感じに誘導しようと努力しているように見える。


■■■


司くんに乞われて組織運営・会議運営のサジェスチョンをして以降は、徐々にではあるが決定までの時間は短くなってきたし、不必要に風呂敷を広げることも少なくなってきた。

そして名字問題については『ホムハル集落群の全世帯にも名字を付ける』『首長には集落名由来の名字を付ける』『現状では他集落を含めて同じ名字は付けない』などが決まった。


そんなある日、少し話があると義秀と朱美が揃ってやってきた。


「ノーちゃん、名字授与式だけど、マサ小父さんとユヅ小母さんに出張ってもらうのはあり?」

「……無理とは言わないが、止めといた方がいいかな?」

「だよねぇ」

「…………それだけ?」

「いやぁ……輝政くんと帆奈さんに腹括らそうと思って。これ以上ごねるならマサ小父さんとユヅ小母さんに出張ってもらうことになるけどそれで良いの? って」

「……そういう脅しをかけるような真似は感心しないな」


冬季はあまりやる事・やれる事が無いので、暇に飽かして名字関連の講義をした。

講義内容は、(うじ)(かばね)・家名・名字・苗字はもとより、夫婦同姓と夫婦別姓の関係(美浦では同姓でも別姓でもよいことにしている)と子の名字の関係(美浦ではどんな名字を付けてもよいが、通例では父母どちらかの名字をつけている。成人後は新たな名字も含めて子の好きにさせる事にしているが通例では親が付けた名字をそのまま使用している)とか、名前の方では(いみな)(本名)と(あざな)(呼び名・仮名)といったあたりまでの多岐広範囲に及んだ。


そして、氏姓制度は時の権力者(ヤマト王権)が有力者に対して(うじ)(かばね)を授けたわけだし、苗字必称義務令以前の名字の中には自称だけでなく権力者が名字を授けた事例もあることなどから、美浦から各世帯に名字を授与するという形態をとる事と、命名した名字を広く周知させるために名字授与式を行うのはどうかという提案があがってきた。


その提案を出したのが輝政くんなんだけど、名字授与式で自分が矢面に立たされることに気付いた帆奈さんがごねて、言い出しっぺの輝政くんに押し戻そうとして……といった下らない攻防が行われている。


朱美(あけちゃん)、あまり二人を追い詰めないであげて欲しいな」

義秀兄(ヒデにぃ)、少なくとも名字授与式を実施するなら帆奈さんか輝政くんが執り行うのが上策なのは間違いないでしょ?」

「それは否定しない」

「それにこれは今後も使えるんだから、二人は滝野のトップに立ってもらわないといけない。これは二人がマサ小父さんとユヅ小母さんの子に生まれた以上は逃れられない宿命みたいなもの。美浦なら理久兄や嘉偉兄がいるからお目こぼしも許されるけどここでは駄目。だから高が名字授与式程度で四の五の言う甘えは許しちゃいけない。だから採れる手段は何でも使って覚悟決めさせないといけないの。違う?」

「……それでもマサ小父さんとユヅ小母さんまで出すのはやりすぎだろう。もう少し……こう……何というか……手心というか……」

「覚悟を決めさせる方が二人の為になるのです」


朱美が難儀な状態になってるな。

朱美は自分が正しいと思っている事柄については梃子でも動かないんだよ。


“輝政くんと帆奈さんが将司と雪月花の子(正確に言えば雪月花の子)である以上は逃れられない”と朱美が言う根拠は二人の風貌にある。


将司の黒髪黒目の遺伝子は雪月花の御父上同様ユーティライネン家の遺伝子に完敗し、雪月花の子供の全員が金髪碧眼だった。将司の遺伝子が完勝したのが明らかなのは輝政くんの運動神経ぐらい?


金髪碧眼は美浦ではもう見慣れたという感じだが、ユラブチ集落群の人達にとっては金髪碧眼が初めて見る特異な風貌である事は否定できない。

特に帆奈さんは雪月花によく似ていて、滝野の祠に祀ってある雪月花の像のモデルと言われても違和感が行方不明になるぐらい似ている。


その雪月花はホムハル集落群では『天空の(アメ)太陽の(ケレ)女神(ミメ)』と神格化されているし、それを利用すべく本人が各種行事でもそのような振る舞いをしてきた。


その流れを汲むと、雪月花に瓜二つの帆奈さんが名字授与式を執り行うのが最適で、次善が輝政くんになるという朱美の意見は決して間違ってはいないし、その手法は今回に限らず有用だというのも強ち間違いではない。

だから、帆奈さんか帆奈さんと輝政くんの二人が滝野のトップに立って滝野の顔になるべきと朱美は考えているようだ。


確かに朱美の考えも一理はあるが、前提と結論の間に論理の飛躍があって誤った結論に至ってしまっているのだが、本人は論理の飛躍に気付いていないという感じだな。


前提の『名字授与式や今後も含めた儀式的な物の権威付けに二人は有用』というのは二人の風貌によるもの。

そして結論の『だから二人がユラブチ集落群との対外窓口の責任者(トップ)になるべき』となっているが、二人の風貌は対外窓口の責任者として必要不可欠な能力というわけではない。


朱美はなぜ俺が司くんをトップに据えているのかまでは頭が回っていないな。

理久くんと嘉偉くんは統治者としての資質や能力があって俺らが育成や補佐をすれば大丈夫だと判断したから権力の移譲を行ったのであって、金髪碧眼だから移譲したのではない。

ただ、全面的に任せるのに不安もあったし、どちらか一人に背負わすのもアレだったので義智を加えて三人態勢にはしたが。


そして、残念ながら輝政くんも帆奈さんも統治者や対外窓口のトップとしての適性には疑問がある。

そりゃ三人衆の弟妹に適任者がいたらその者をトップに据えた方が座りは良いとは思うが、輝政くんも帆奈さんも義秀も朱美も本質的には定められた範囲内で自由裁量を振るう方が能力を発揮できるタイプの人材で、他者に枠組を示す側になるトップに据えるには不向きと言える。

それに、枠組み内で自由裁量を振るう効果も大きいからトップに据えるのはもったいないとも言える。

適材適所は大事です。


一方の司くんだが、別に彼が年長だからトップに据えたわけではなく、対外窓口の責任者としての資質があるからトップに据えている。


交渉というのは『利得』と『損失』を巡って互いの『条件次第では譲ってもよい妥協可能な範囲内での鬩ぎ合い』と言える。

そして『条件次第では譲ってもよい』といってもその条件は様々ある。

『面子を立ててくれるなら譲っても構わない』という事もあれば『破格の利得がなければ譲らない』ということもある。


普通は自分のそれはある程度は分かっても、相手のそれを捉えるのは中々難しかったりする。

司くんは相手のそれもある程度読めるという敏腕セールスマンや手強い交渉人(タフ・ネゴシエーター)のような能力を持っているので、ユラブチ集落群との対外窓口の責任者に適していると判断した。


ただ、彼我の妥協点が読めて交渉の落としどころを想定できたとしても、その落としどころに持って行くには理論も技術も経験も足りていない。

料理のレシピを知っているからといってその料理を作れるとは限らないのと同じ。


だから、今の司くんは落としどころに持って行くための考え方やテクニックの指導や補佐が必要なのだ。何れ経験を積んで自力で研鑽できる水準まで引き上げられたら大船に乗った気分で任せられるようになるだろう。


これらの人事は派遣隊の人選時に三人衆、将司、雪月花と話し合って決めた内容でもある。


「ノーちゃんはどう思う?」

「さっきも言ったが、そういった脅しをかけるような真似は感心しない」

「…………」

「あとね、名字授与式と滝野のトップは紐付けちゃいけない。別個で考えないと」

「…………」

「第一、トップというのは見た目だけで勤まるほど軽いものではないぞ」

「…………」

「不向きな役割を押し付けると押し付けた方も押し付けられた方も不幸になる」

「…………」


お望みの回答がでるまで粘る積もりか。

この方向では駄目みたいだから別口から攻めるか。


義秀(ヒデ)、名字授与式の段取りはどこまで決まっている?」

「いや、誰を主軸にするかがまだだから」

「そこのバイ・ネームは後でいいから、ヒデは司くんと相談してスケジュールと式次第を先に決めてしまえ。それと、二人がそれでもごねるなら“後ろで座っているだけでいい”とでもすればよい」

「……成る程。式次第が決まっていたらその中での役割の一つと二人も妥協できるかもしれないし、後ろに座っているだけってのも、もったいぶる感じでありだね」

「そゆこと」

「つまりは、権威と権力を分けるって事?」

「ご名答。その方向で司くんと協議してくれ」

「ほーい」

「あけちゃん、二人を権威付けに使うという案は良い案だが、そこに必要なのは権威だけだ」

「…………」

「そうそう、ヒデ、名字授与式で何を贈るかも検討するよう司くんに言ってくれ」

「……何をって……記念品みたいな?」

「表札とか授与状とか家紋とか色々あるじゃん。匠が目の色変えてやってくれると思うぞ」

「成る程。ああ、司くんから上げたらタク小父さんも喜ぶか」

「じゃ、よろしく」

「はい。んじゃ、あけちゃん」

「…………」

「あけちゃん、これ以上拗ねてノーちゃんに迷惑かけない」

「拗ねてない!」

「分かった。なら司くんとこ行くぞ」

「…………」


朱美の“拗ねてない”は、酔っ払いの“酔ってない”より信用できない。

まあ、拗ねるというのはある意味では甘えているという事なので拗ねられているうちが華とでも思おう。


拗ねた朱美の機嫌の取り方は親の俺もよく分からないのだが、司くんは的確に対処できるので、俺は密かに『司マジック』と呼んでいる。

婿殿、すまんが朱美を頼む。


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