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文明の濫觴  作者: 烏木
第2章 開拓を始めましょう
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第8話 周辺調査(北・東)

今度は北側を攻めてみます。

とはいっても北側は少し行くと恵森になるし、森の中を詳細に測量するつもりはない。森林資源的な意味で森の概要が分かれば御の字と思っている。

それと、肉食獣がいる可能性が高いというのも忘れてはいない。


考えられる肉食獣は、本命が狼、対抗が熊、大穴が虎や豹で、これらは俺らへの脅威度も高いので居るなら何らかの対策が必要。

その他に脅威度が低い肉食獣としては、狐、狸、(むじな)、テン、(いたち)、山猫などが考えられるが、これらは基本的には放置もしくは狩猟対象で特に安全上の対策は考えていない。農作物防護の観点の対策はするけど……

猪と鹿がそれなりの頻度で獲れているので捕食圧はそれほど高くはないと思うが、野放図にはなっていないので何らかの捕食者は居ると思っている。

恐らく現状で一番の捕食者は俺らだろうけど……


ちなみに普段パトロールしている政信さんや文昭には実包とライフル銃を渡してある。万一撃つ事があったらその時は可能な限り薬莢を回収して欲しいとお願いしたら、政信さんは慣れた手つきで薬莢受けを装着していた。


肉食獣がいる可能性が高い森に無防備で入るほど俺らはアホ垂れでは無いので今日は全員ハンター仕様だ。ギリースーツなんかじゃないよ。オレンジ色の派手な格好だ。

猪や鹿は色の見分けが弱いので緑でも橙でも違いはないから他のハンターから分かり易いように明るい色の着衣が推奨されていて、オレンジ色のベストとキャップが猟友会から支給されているぐらいだ。中には仕方なく着ているって感じのハンターもいるけど、巻狩りとかだと誤射されないために必須の装備でもある。

無線機の状態を確認して実包を装填したライフル銃や散弾銃を持って森に分け入る。


そこそこ鬱蒼とした森をしばらく進んだところで見つけたのは岩だった。

横幅二メートル奥行四メートル高さ一メートルほどの赤茶けて一部が黒ずんでいるどうという事はないような岩だったが、将司と佐智恵が食いついた。……別に噛り付いた訳じゃないよ。


「芹沢さん!これって」

「……隕鉄。隕鉄の可能性が高い。ホバ隕石とタメを張る大きさじゃないか」

「義教!サンプリングに端っこ割って」

「義教、頼む」

「……道具取ってくるからここらに居てくれ」


珍しく将司が興奮しているので逆らわない事にする。

これが隕鉄なら入り江がインパクトクレーター説の蓋然性が俄然高くなるな。


石工道具を持って戻ってきたら雪月花が一人所在無げに(たたず)んでいる。

将司と佐智恵は隕鉄(仮)に夢中。

匠と文昭は三角点を設置していた。

美野里の背負い籠、奈緒美の頭陀袋と背嚢が一杯になっていた。


「将司、佐智恵、どこ削ればいい?」


一旦、メンバーの事は棚上げして指定された場所に石鑿(いしのみ)を当てて剥がし採り欠片を手渡すと将司と佐智恵は欠片と割口を見ながらウィドマンシュテッテン構造がどーだとかあーでもないこーでもないと話しをしている。


「雪月花、特に何も無かったとは思うけど大丈夫だったか?」

「ええ特に何もありません。いつもの事ですわ。フフフフ」


あらら……冷や汗が止まらない……どうなっても知らねぇ……

「そうか。多分必要になるだろうから俺はここまでを測量しておくわ」


能面の様な表情の雪月花をよそに、匠と文昭が設置した三角点から美浦までの地形を測量していく。恐らく何度かは来る事になるだろうから地図を作っておこうという訳だ。決して雪月花が怖くて逃げ出した訳じゃないからな。匠も文昭も大変協力的だった。


その後、鉄資源として使うべきという佐智恵と天然記念物として保全すべきという将司の激論はあったが、鉄資源は黒浜の砂鉄があり、大川もおそらく上流にいけば砂鉄があるだろう事、それと森の所々で小振りな隕鉄を幾つも見つけたので保全という事になった。


「これだけあれば流星刀は打てるだろうから良い」


決定打は後者の小振りの隕鉄のようだ。

一日で幾つも隕鉄を見つける事ができたのだから、入り江がインパクトクレーターであるのは確定的に明らかだ。なので入り江は「星降湾」と名付けた。


さて、もう一つというか当初の懸念である肉食獣だが狼のようだ。しかし痕跡の分布や数とか鹿などの生息密度を考えるとウルフパックではなくローンウルフの様に思える。それと、熊の痕跡は見つけられなかった。もっと奥にいけばいるかも知れないけど……

なので美浦の防御は一旦は狼を前提とした構えを採る事にした。


ざっとではあるが恵森の森林資源は悪くないというか、豊富な方と言える。

陽樹林から陰樹林への遷移途中らしく樹種も豊富にあった。この内、有用な樹種は近場(多分永原あたりになると思う)に挿し木などで増やす事になるだろう。


ただ、個人的には今日一番の成果は「椎茸」である。異論は認める。

将司や佐智恵にとっては隕鉄だろうし……

まだ小さいが椎茸の子実体(しじつたい)を見つけたのだ。子実体ってのはいわゆる「キノコ」の部分の事。

椎茸だと美野里が太鼓判を押しているので間違いない。食える物の知識と判断について彼女の右に出る者はいないので疑う余地は無い。

もちろん、ここで採るなんて事はしない。今後の為に胞子を掻き集めるのが優先事項なので、育つまでに他の動物に食われないようどうやって保護(?)するかを美野里と奈緒美の二人と相談する必要がある。


■■■

今度は東です。

実は日付けは飛んでいる。田畑を何日もほったらかしにはできないし、溜まる仕事もある。

ただ、東側は余り見るところは無い。

永原は多少起伏はあるが基本的には平坦で、氾濫原でも無いようだ。

蜜蜂さんも今のところ元気にすごしているようで胸を撫で下ろしている。

そうそう蜜蜂の巣箱は三つに増えている。キイロスズメバチと闘えなかった分と言っては何だけど、他の群もご案内さし上げた。毎週地曜日に点検しているが三つとも順調だ。


測量は順調に進み、大川からこっちは河口まで測量できた。

大川の向こう岸は渡る手段を確保してからという事でまた今度。

両岸の標高を測ったが、向こう岸の方が低いようだ。安心材料の一つ。


東側の重点は「どこに水路を引くか」というもので、少し恵森に食い込むが流路の想定はできた。今年の水田の様子などから来年必要とする水量の推量をして水路幅や取水装置の規模を詰めていく事にする。


■■■

最後の西と言いたかったけど雨です。雨天中止。

連日の雨です。梅雨に入ったんじゃないかと思われます。

ちょっと田んぼの様子を見てきましたが、用水路も水田も特に問題なかったです。西は梅雨明けまで御預けにした方が良いかな?


大広間でそれぞれ何かしらの作業をしているが、普段より人数が多いのに興奮したのか高速ハイハイを身に付けた和広ちゃんと江理ちゃんのタッグが遊びに来る。

もう立てるんだから次は歩こうよ。

二人が這い寄って来たので作業を中断して危ない物を脇に隠すと、和広ちゃんが笑顔でよじ登ってきて、江理ちゃんも負けじと抱っこしろアピールをしてくる。

二人を抱っこする形になり、顔をペチペチされたりと一通り玩具にされたら「もういい降ろせ」アピール。

そっと降ろすと次のターゲットに向かって高速ハイハイ……

匠の作業を邪魔しても匠が怒らないツーマンセルは見ていて飽きませんが竹笊作りの作業を再開します。あっ今度は佐智恵に絡んでる。佐智恵も二人には敵わないようで手を止めて相手をしている。

でも不思議とクリティカルな時には来ないんだよね。あの歳で空気読んでるよ。

俺のところには代わりに史朗くんと宣幸くんが……

興味あるなら竹細工を仕込むぞ。


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