理不尽なる異世界召喚
勢いで書いた作品なので読みずらく、誤字、脱字があると思うので暖かい目で見守ってて下されば光栄です。
『現実は時に残酷』
この言葉は日常生活で誰もが思っている言葉だと思う。
人々は過酷な現状下に置かれた時、この言葉を脳裏に浮かぶはずだ。多分。
たとえば、自分の現状をもう一度確認してみる。
――今、自分の居るところはアパートの一室。自分が学校に通うために借りた部屋であり、高校生である自分の『城』そのものだ。
だが、窓の外を見てみると、中世ヨーロッパのような建物が遠方にずらずらと並んでおり、窓からはとても現代では見れない綺麗な景色が(といっても周り一体は草原や砂利道、遠くに山々が見えている)広がっている。
「いったい俺が寝てる間に何があったんだか」
寝癖のひどい髪をぼりぼりとかきながら気だるそうにつぶやいた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
昨日の自分の行動を振り返るかぎり、おかしな点は一つもなかった。ただ、いつものように学校(高校)に登校、下校し、放課後に友人達と遊んで帰った。その後は普通に夕食をとり、風呂にも入った。その後、普通に深い眠りについたはずだ。はずなんだ。
――そして今日になり、起きて窓を見たら、いつもの住宅が密集している景色ではなく、天然水のコマーシャルを作るのにちょうど良い壮大な自然が広がる景色が見えた。
……あくまでも捕捉だが、空気は洗練され、とてもおいしい。
「ほんといい迷惑だ」
一人でぶつぶつと文句を言い、少し現実逃避をしようとベッドにもぐった時、目覚まし代わりのチャイム音がけたたましく鳴り響いた。
「……ったくうるせーな」
足に重りのつけたような重い足どりが寝起きの体に響く。その重い足どりで玄関に向かった。
「ハイハイ、どちらさん?」
少し苛立った口調で扉の向こうの相手に応答した。そして、玄関に向かい、少し立て付けの悪い古くなった木製の扉のドアノブに手をかけ、鍵を開けた。
「はい、どちらさん?」
「これ一体どうゆう事だよ!? なんか知らねーのかよ祐、この状況!」
「なんだ、大介か」
こいつの名は、亀井大介だ。こいつとはいわゆる「幼なじみ」というやつだ。俺と同じ高校に進学し、野球部に入部している。高二だが、野球のセンスがあり、毎回スタメン入りを果たしている。ちなみにこいつは学校の中では五本の指に入る程のイケメンで、とても優しい性格という女子なら憧れてしまうステータスの持ち主だ。もちろん女子生徒の人気が高く、ついでにいえば、男子の支持率も何故か高い。このリア充め。
ちなみに僕の名は、若狭祐だ。ルックスも成績も普通ななんの取り柄もない男子高校生だが、このリア充の模範である大介とは、同じアパートの住人であり、お隣さんでもある。
ここのアパートは、大家さんの自宅も含めて6室ある。僕は二階の201号室で、大介はその隣の202号室に住んでいる。
「朝起きたら普通に窓からファンタジーっぽい風景があって、ホントびっくりしたぞ。ホント寝てる間になにがあった?」
「知らん。 朝起きたらこうなっていた」
少し落ち着いた口調で僕は言った。
「まぁ、そうか」
そう言って彼は少し納得した。正確に言えば認めたくない現実が目の前にあったので、認めざるおえないということだ。
「…どうすればいいんだ? 今後」
「まあ、生きてくうちに何とかなるのが世の中だよ」
「……いやどうにもならんだろこれ、能天気だな祐」
男二人で玄関でそんなことを語りあっていた。
その時、一階のほうで悲鳴らしき奇声が聞こえた。
「きやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
あまりにも大きく、誰もが振り返るような大声だったので、二人とも振り返った。
「な、なんだこんどは!?」
「多分大家さんじゃない?」
「じゃ呑気に言ってる場合じゃねーよ。 速くいくぞ」
そう言うと、大介は獅子たる速さで一階に向かった。
「――仕方ない、いくか……」
重い足どりで僕も亀のごとく一階に向かい、 何十年の月日が経った古い階段をかけ降りた。
――特に代わりはない。 ……いつも見ている景色ではないことを除いてだが。
一階に異常は無く、心の中で「異常なし! 目標ベッドの中!」なんてことを思いながら二階にある自分の部屋に帰ろうとしたその時だった。
「きゃぁぁぁぁ!」
大介の悲鳴が聞こえた。多分管理人室(101号室)からだろう。
行きたくはないが、とりあえず行くことにした。
コンコン、と扉にノックする。
「失礼します」
きちんとノックをして室内に入った。
周りを見渡す。異常はない。大家さんの整理整頓された埃ひとつ無い部屋、そしてこのアパートの管理人兼住人の大家である神野兼雄が部屋の中心に倒れており、大介もまた部屋の隅に倒れていた。
「おーい、大丈夫ですか?」
返事はない。多分気絶していると思う。
とりあえず寝かせておいて自分の部屋に帰ろうとしたその時だった。
「あのぉ、待ってください」
後ろから声がした。少々ソプラノトーンの声が僕を呼び止めた。
「……誰ですか?」
そう言い、後ろを振り返った。
――振りかえると、そこには白いローブを着た一人の女の人がいた。顔は見えないが、多分自分よりも少し年齢が高そうだなと感じた。
「私の名は、ミエン。この世界の創世の神です。実はあなた方に話があってここに参りました」
「はっ?」
あまりにも唐突な話しで、気の抜けた返事でしか返すことができなかった。まったく馬鹿馬鹿しい、笑える設定だ。
「あんたの説明していることがよく分からん。寝起きの頭でもしっかり分かるように説明しろ」
「分かりました。ではご説明を」
二人して管理人室にあった座布団に適当に腰掛ける。
「あなた方に来てもらったのは他でもありません。実は、この世界に突如現れた魔王『デビルデーモン』を討伐していただきたいのです」
「……それで?」
「その為にこの世界に召喚させていただきました」
「……帰る。てか早く元の世界に帰せ!」
とても理不尽な神様の言い分に、少し突き放した口調で言った。
現実世界ではとてもあり得ない――あり得たとしても物語の設定上でしかない御伽噺な話を現代人はまず必ず疑うだろう。僕もその一人だ。
「ですけど……『予言書』に書いてあった通りにしたんですけど……」
「……かなり分厚いなそれ。ちょっと見せてみろ」
そう言って神様から多少強引に『予言書』をふんだくり、見てみると、見たことの無い文字が書かれていた。
「おい、神――いや、駄神この『予言書』を通訳しろ」
「ええ~、駄神なんですか私?」
「そうだ。早く読め」
「……分かりました。――責任もちょっぴりありますもんね私」
ブツブツと文句を垂れながら読み上げた。
【予言書 勇者召喚の儀】
一、 少し大きな人気の無い広場で見よう見まねのざっくりした適当な『魔方陣』を地面いっぱいに書く。
二、 その魔方陣にお供え物(そこら辺の雑草や石)をする。
三、 さあ、呪文で勇者を召喚しよう。
『汝この世界を救う六人の勇者よ。我の前にて魔王の野望を打ち消すため、この地に馳せ参じたまえ』
※ 勇者(笑)はランダム召喚です。まあ頑張れ。 著者より
「……まあ、このような感じです」
「はあ? それだけ? ……ふざけてんのか」
国語辞典みたいな厚さの『予言書』に書かれていた『勇者召喚の儀』はたった数十文字の詠唱で召喚が出来るというとても胡散臭い『予言書』をミエンからふんだくり、床に叩きつけた。
本当役に立たない――他人(僕も含む)に迷惑しかかけない神だと改めて感じさせた。
「ああ、なんてことを」
「なんてことをじゃねーよ。人様に迷惑かけあがって。しかも使えない『予言書』だな、千ページはあるんだろ? ならもっと良い召喚方法があるだろう? 例えば無いのか、この世界の英雄を召喚させる『英雄召喚』とか?」
「この召喚方法だけです。前八百ページが全文で、この召喚方法の一ページの後に後書きがきます」
「ますます使えないな、その『予言書』」
「……ですね」
この時ばかりは神であるミエンも同情した。元といえば全ての元凶はこいつなので、少しばかりムカついた。
「で、今さらだけど二つ質問していいか?」
「はい、何でしょうか?」
少し首を傾げてミエンが答えた。
「まずひとつ目、なんで大介や大家さんが気絶してるんだ?」
「それはですね……」
うーんと唸りながらミエンは頭を抱えた。
二分後、「はっ!」という声がしたので、ミエンの方を向く。
「思い出しました。……ええと、名前は……」
「裕、若狭裕だ」
「では、裕さん。言いますよ」
「早く言え」
ミエンはこのような事態になった事件や発端を聞き手の僕になるべく分かりやすいように言っているつもりだが、僕にしてはただの子守唄にしか聞こえなかった。
眠落ちしないように心がけていたが、あまりになかなか前置きが長いので、すごく眠く少しイライラとしていた。さっさと言えばいいものの、溜めてくるので正直ミエンを拳骨したくなった。
「早く言えって言ってんだよ!」
「はい! そこに倒れているのは、私が眠らせたからです」
「なんで?」
「そこのご老人がそこにおいてあるもので、「出てけ! 泥棒め」と叩いてきて仕方なく眠りの魔法を発動させたら、偶然にそこの彼が入ってきたので、二人に魔法を発動してしまいました」
そこに置いてあった箒を手に取り、ミエンが身ぶり手振り訴えた。
「目覚めるだろ?」
「はい、あと数分たてば起きます」
大介や大家さんの安否が確認できて、胸を撫で下ろした。もし、この二人が目覚めず、永遠の眠りについたらどうなってしまうのかと少しヒヤヒヤした。
「じゃあ二つ目、元の世界に今すぐ帰れんのか?」
「はい、帰れません。実際はあなた方『勇者』が魔王を討伐すれば帰れます」
「……どっちにしろこのアパートの住人が勇者になって魔王を倒せと」
「はい」
――絶対に倒せない。まず、何も武器を所有していない時点で魔王どころかゴブリンの一匹も倒せないと思った。非現実的な話よりも非現実的夢を見ている方がマシだ。
「魔王討伐なんてお前一人でやっていろ。俺は寝る」
そんな捨て台詞をミエンに言い、自分の部屋に戻ろうとした。
だが、ミエンは両足に引っ付く感じで泣きじゃくりながら訴えてきた。
「お願いします。見返りをあげますから」
そう言ったので、話を聞いてあげることにした。
「なんだ見返りって?」
「それは、『特殊能力』ですね」
「つまり魔法みたいなものか」
「はい、そうですね」
つまり異世界召喚でいわゆる『異能力』を手に入れて無双するみたいな事なんだなとおもった。……厨二病患者かよ、恥ずかしい。
「わかった。やってやるよ魔王討伐」
「え、本当ですか。ありがとうございます」
「どっちにしろ元の世界に帰れないからな」
魔王を討伐しないと帰れないので、大介辺りにチート能力を使わせてさっさと帰ろう、と心の中で決めていた。まあ、大介のあの甘いマスクとコミュ力があれば大抵のことはやってくれるだろう。
「……っふあぁ~、裕いるか?」
「おはよう」
「おはようございます」
大介が眠りから帰ってきた。あとは大家さんだけだ。
「――ってだれだよソイツ」
「はじめまして、大介さん。私は創世の…………」
「んー、おはよう」
「あ、大家さん。おはようございます」
「ああ、裕君おはよう…ってお前さっきの」
「ひええ~」
この世界の『創世の神』であるミエンの悲痛な叫びがこのアパート――いや、この世界全体にこだましていった。
いずれ彼ら彼女らは知ることになるだろう……。
この世界の事、色々な国、そして魔王『デビルデーモン』の事も……。
例えこの世界が理不尽な事だらけでも……。
初めまして、煙大佐です。
中学校三年の現役の受験生です。
勉強疲れを少しでも和らげるため書いております。
投稿ペースは受験勉強等もあるので、一、ニ週間はかかると思うのですが、そこは温かく見守ってください。