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精霊物語  作者: aruria
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第九話 [牢屋]

司教は四人を牢屋に入れて置くように命じると自室に逃げるように篭った。意地の悪いことに司教はルカたちに食事は出さないこと。衛生状態も悪く、凍えてしまう最悪の状態の牢屋に入れること。それらを命じた。


煌びやかなル・ロンドの表街はまだ祭りの様相が見えた。


賑やかな祭りの様子。二年に一度の精霊試験の日。


牢屋内


暗く、じめじめした石畳がむき出しの牢屋にルカ、アルヴァス、エルそして謎の女性は放り込まれた。


アルヴァスが石畳に放り込まれて、苦しそうに呻く。


「けが人には優しくしてよ!」


エルは牢屋の外にいる衛兵に抗議するように言った。


「普通の扱いだ。これが殉教者の扱いだ。」


衛兵は乱暴にそう言い、分厚い扉を締め出ていった。


「あいつらこんなにやらなくてもいいじゃない!」


エルはアルヴァスの怪我の具合を見て言った。


アルヴァスの怪我が一番酷かった。


「いってぇ・・・・あいつら・・・殺してやる」


喋っても体が痛むようだ。


「・・なんであんなに暴れたかなぁ・・暴れなかったらこんなに酷くはならなかったのに。」


とエルは言った。


「そりゃあな、やつらが鼻持ちならなかったからだ。」


「(痛くない訳ないのに)」


とエルは思った。


アルヴァスは壁にもたれかかっていた。そうしてルカの方を見た。


「あんたに斬りかかって、悪かったよ。昔から俺はそうなんだ。一つの目的があるとそれに向かって突っ走っちまって、他のことはほとんど目に入らなくなっちまう。」


「いや。いいよ。うん。そうか。」


とルカは何か納得したような様子だ。なるほど彼はこういう気性なのか。と。


この反応にはアルヴァスの方が驚いたようだった。てっきり恨まれているかと思ったからだ。


「・・・・・・・・・」


沈黙するアルヴァス。ルカの人質の作戦を向こう見ずな突進で邪魔してしまったというのに気にしていないかのようなそぶりにアルヴァスは今度は呆れた。


ルカはというと本当に気にしていなかった。むしろそういうアルヴァスのことを好ましく思っていたくらいだった。


「周りのことに目が入らないと言ったけど君は傍らの女の子が苦しんだときだけは我にかえったじゃない。」


「なっばっ・・・・・・」


アルヴァスが慌てた。


エルはキョトンとルカの顔を見てからアルヴァスの顔を見た。


アルヴァスはなんと言ったらいか、つまりはなんとも言えない顔をしていた。


エルは顔をほころばせた。


「えへへ~~」


と、エル。肩まである活発そうな印象の髪を揺らして嬉しそうだ。


アルヴァスも慌てて挙動不信になっている。それでも何も喋らなかったが。


少しの間せわしなく顔とか体が動いていたが、急にピタッと止まると、エルは上目でアルヴァスを見た。


「あの時・・・・かばってくれてありがと・・・。」


「・・・・ああ」


暫く沈黙してからアルヴァスは言った。


ルカは何故かここに捕まってきた謎の女性を見た。彼女ならあの包囲網は簡単に突破出来たはずだがそうとはしなかった。



ルカは拘束具を調べていた。


「(この拘束具は鉄か。鉄の鎖に・・・マナの循環を阻害する術式が掛けられている。)」


強度も当然硬い。引きちぎるのはまず、不可能そうだった。


「(あくまで僕の通常の力では・・・)」


先ほどのあれは何だったんだろうか・・・人に対する憎しみが再現なく溢れたような・・。自分の力ではない何かがこの身に巣食っているのが分かった。

ただそれはなんなのかルカには分からなかった。自分の記憶まで曖昧なのだったから。


エルは拘束具を調べていたルカに向かって言った。


「ねぇ。ありがとう。さっきは助けてくれて。」


「うん。」


「なんのために司教があんなことをしているか誰か思い当たらない?」


ルカは面々を見渡して言った。


「おい、そんなことどうでもいいじゃねぇか。」


とアルヴァスはぶっきらぼうに言った。


「嫌々ながらも納得してあの頭のおかしい司教に従ってたみたい。」


とエル。


「この街のため・・・と言っていたな。」


謎の女性が初めて口を開いた。


ルカは石畳をゴッ。と叩いた。ジャラランと鎖の音も付随する。


「何か事情があるにせよ、人を無理やりおぞましい形に変えるなんて司教は間違っている。」


「そうだ。許せねぇ。あの糞司教を殺すまではこの街からでないことに決めた。」


アルヴァスは合格者であるアルヴァスたちを生かして放すつもりは、あの司教にはないだろうと言うことは分かっていたが、そう言った。


「うん、許せないよ」


だいぶ傷んでいたうえ、後ろにまわした腕が拘束されていたので、四人はもぞもぞと、あるいはよたよたと動いた。


何かしらのシンパシーを感じ取ったのかもしれない。

四人は向かいあった。



「私はエル・レラルダ。」


「なぜ、エルは精霊の力を欲したのだ?」


と真紅の瞳の女性。


「精霊の力を手に入れたらお金儲けになるかなぁって思ってこの街に来たの。精霊試験なんて全部嘘っぱちだったけどねっ。」


エルが明るくそう言った。


「はいアルヴァス君も自己紹介して。」


「くっくっく。明日にで処刑されかねないオレたちが自己紹介かよ。カビくせえなかで手を縛られた四人が座って向かい会いながらこんにちわか。糞司教め。腹が立つ。」


アルヴァスはふーっと体を脱力させ、上を仰いだ。頭を少し振り、髪が目に掛かるのを払った。

鉄格子から緑色の夜の光がアルヴァスの顔を照らした。


「オレはアルヴァス・ジークハルト。よろしく綺麗なヒトと男前のぼっちゃん。つっても握手はできねぇな。」


ニヤリとアルヴァスは笑った。


「二人とも逞しいんだね。」


ルカを微笑をみせた。


「僕はルカ・ハンプティ。歳は15歳。」


「へぇ、もう少し上かと思ったぜ。」


と、アルヴァス。


「私はもうちょっと若いと思ったよ。」


にししと笑うエル。


「実は記憶が曖昧なんだ。彼女が僕の記憶に関わりがあると思ったけど、どうかな。イスラとそれが確かめたくて彼女を追っていたらあそこに出くわしたんだ。」


「えっ。あなたたち連れ合いじゃないんだ?なんだか雰囲気が似てると思ってたんだけどなぁ。」


とエル。


「よろしくルカ。」


「よろしくね。ルカ」


アルヴァスとエル。


「よろしくね。アルヴァス。エル。」


3人は朗らかな顔をしていた。明日にでも処刑されるであろうと言うことは3人はくちに出さずともよくわかっていた。


それらを口に出して、嘆いてもなにも問題は解決しないことも3人はよくわかっていた。

落ち着いかなければならないことと結束が大事なことだ。


ルカ、アルヴァス、エルが一堂にが真紅の瞳の女性の顔を見る。


「次はあなたのことを聞かせてよ。」


とエル。


「名前を教えてよ。」


とルカ。


「あなたは何なのか・・・・そこから僕は知りたい。人間なのかあなたは。」


ルカが何を言ってるのか良く分からないエルとアルヴァス。


「私はファティマ・アルファンデリ。年齢は_____そう__だな。人間の尺度で言うなら2000年ほど生きていることになるか。」


光が溢れ、髪がなびく。

そして、拘束具が壊れた。

キラキラと破片になって消失する。


圧倒的なマナの奔流が循環阻害の限界を超えたために、簡単にあっけなく彼女の力は拘束具を破壊した。


「嘘だろ・・・・」


アルヴァスが呟いた。

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