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精霊物語  作者: aruria
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第二話 [ルカ・ハンプティ]



夜聖都市ル・ロンド。


この市の最大の特徴は1日のほとんどが夜になっていることだ。

街はほぼ1日中、発光樹の美しいイルミネーションで照らされている。


ルカ・ハンプティが座っているベンチの近くで五、六人の子供が話していた。


「今日はとうとう精霊試験だねー」


「俺は大きくなったら精霊試験受ける!」


「俺も!」


「私も!」


「三年に一回しかないんだよな精霊試験」


「もし合格したら今日精霊になる人がいるかもしれないのかぁ・・・」


「いいなぁ・・」


ルカはその会話を聞きながら思った


「(僕はその試験をあと三時間後に受けるんだ・・・)」


子供たちはなお精霊試験やそれが行われるタルス宮の話をしていた。


ルカは緊張してきた。


彼は精霊試験を受け、精霊になるためにこの街までやってきたのだった。


子供たちは話している。


「でも俺たち精霊術使えないからなぁ」


「これから使えるようになるよ!」


一人が柵の上に登った。

「精霊術が使えるようになれば精霊になれる!俺は絶対絶対精霊になるぞ!」


さすがに首都なだけあって街のはずれから少し街に入ったなんでもないところでも人通りがある。


道行く様々な人が自然と

その子供たちに視線が注がれた。


「おいガキーあぶねえぞ!」


通りすがりの男が言った。


上下水道に下はなっていて、下は水だ。


果たしてその子供は、


「おっうわぁぁぁっ」


ぐらりとバランスを崩した。


この街についたばかりのルカは知るよしもなかったが、ここは流れが急な部分でそれに加えて常時夜なので遠くまで見えない。


二重に条件の悪い場所だったのだ。


道行く人々の息をのむ音が聞こえる


おじいさん、おくさんたち、若い三、四人の青年、元気に駆けていた少女、おとなしそうな少女、急いで歩いてた痩せた女、


通行人全員がぎょっとして止まった。


突然子供が柵の上から倒れたので誰もが初動が遅れる。


動くことができたのは一一一


先程子供たちに声をかけた男が血相を変えて子供を掴もうと駆け寄り手を伸ばしーーー


ズボンの布が滑り、靴にかすり・・・・・男は掴むことができなかった。


「くっ・・・・!」


突然のことだったので周りの人間はほとんど対応することが出来なかった。


夢見る、まだまったく生きたりないであろう子供の命はここで尽きてしまうのか。


友達と別れて帰り道、この子供はきっといつものように「(おなかすいたなぁ、晩御飯なんだろう)」と思っていただろう。


そうだったはずだ。


刹那のことで人々は動けなかったのだ。


この子供も救うため動くことができたのは柵に登った直後から見ていた通りすがりの男とーーーーーーー



ルカ・ハンプティだけだった



男の脇から柵の下に必死に手を伸ばし、ルカは叫んだ。


「フェル-メリッサ-エキナセア!!」


呪文の詠唱


ルカの全力、咄嗟の中の渾身の精霊術だった。


ルカから透明で冴えた水色の光玉が広がり、上方向へその綺麗な水色の光は上り薄れた


ルカから命の輝きのように放たれる光それは脇の男や子供たちも包み込んで、ルカは精霊の輝きを帯びていた


子供がごうごうと流れる川の激しい流れに打ち付けられ、飲み込まれる直前、


川面が一気に凍りついた。

ピキピキピキピキとしたおととともに子供が落下した場所を起点にして半径5メートルぐらいが凍りついた。


子供は氷の川の上に落ち不思議そうにキョロキョロした。


極大の精霊術を発動してルカは疲労した。


ルカの息づかいは荒い。


疲弊した思考の中ルカは精霊へ感謝と尊敬の思いをただただ感じていた。


周りの人間はルカから発せられる光が途切れ始めたころ呟いた


「せ・・・精霊術・・!」


ワンテンポ遅れて通行人たちが子供の安否を確かめるため橋の下に駆け寄って覗いた。


人々は安堵のため息をつくこととなった。


それからロープでみんなで引き上げた。


「お兄ちゃん、ありがとう」


子供はまだ放心状態でそうお礼を言った。しかし目は本物の精霊術者を見たことで爛々と輝いていた。


どっとルカに人々が押し寄せた。


「いやぁあんたすごいよ!」


「こんなすごい精霊術を使うなんて!」


「これは絶対合格して君は精霊になれるよ!」


周りの人々が口ぐちにルカに言った。


精霊術が使えるのはこの世界でも一部の人たちに限られる。


だから彼らは知らなかった。この規模の精霊術を使ったルカのマナは枯渇してしまって1日は精霊術をもう使うことができないのだ。


つまり、精霊試験は受ける前から絶望的な状況になってしまったのだった。


そのことに思い立ったルカは青ざめた。



その一部始終を見ていた2つの人影があった。発光螺旋樹の上に座っている。



片方の目が髪で隠れている茶色の髪の刀を携えた十代後半の青年だった。


「へぇ・・・・あいつ、マナの総量がそう多いわけじゃあない。精霊との契約がとてもスムーズで・・無駄がない。」


「でも・・・たぶんマナを使い切っちゃったなあいつ。」


もう一人のオレンジの髪の少女が言った。


「不運だなぁ・・ま、ファティマ・アルファンデリのお導きかなってことで諦めるんだねぇ」



この世界の[ファティマ・アルファンデリのお導き]とは[運命]のような意味である。


この二人も精霊試験を受けにきたいわば、ルカのライバルだった。


それは過去形でありマナを使い切ったルカは、合格する確率が奇跡が起きないと合格できないぐらいまで下がったのでもう、この二人は歯牙にもかけない。


「こんなことになってしまうなんて・・・・」


あとはもうこの世界の神であるところのすべての精霊の主、ファティマ・アルファンデリに祈るほかなかった。

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