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エピローグ

 星々が綺麗だった。

 いつも以上に綺麗に見えた。

 降り注ぐ光は私の心の中に染み込んでくる。

 優しく染み込んできて、疲れや苦悩で蝕まれている心を癒してくれる。

 本当に。

 告白の後に立ち寄った近江公園から見える星々はいつも以上に眩しく輝いていた。

 私は手を伸ばしてみる。

 微かに届いた気がする。

 さっちゃん先輩と悠姫先輩に。それにここまで支えてくれた七海や翼。それと鮫島先輩や真鍋先輩に淡島先輩に。

 気のせいじゃない。

 確かに届いたと思える。

 とそこで、聞き慣れた声に私に話し掛けられた。


「宮﨏さん」

「月島君」


 月島君がいた。

 いつの通り色々なカメラの機材が入っている重そうなスポーツバッグを肩に掛けて。

 月島君は私の傍にゆっくりと近づいてくる。


「すっきりしたみたいだね」

「うん」


 傍に寄ってくると、彼は私の顔を見てそう声を掛けた。私は穏やかな笑みを浮かばせて頷いた。

 そう、全部すっきりした。

 今の今まで背中にのしかかっていた重みはすっかりなくなり、空を自由に羽ばたけると錯覚するほどに軽かった。

 迷いはない。

 怒りはない。

 ただ、今の私は真っ直ぐな瞳でこの夜空を眺めていられる。


「良かった。僕も安心できるよ」

「ごめんね。心配を掛けちゃって」

「謝らなくていいよ。元気になってくれさえすればいいよ」


 月島君は笑いながら、そう言う。

 私もこれ以上の謝罪の言葉は意味がないし、彼の行為を無駄にすると思ったので止めた。それで良いと思えた。


「星が綺麗だね」

「そうだね」

「あのさ」


 なに、月島君は言葉を返してくる。

 私は少し深呼吸をしてから続きを口にする。


「ありがとう」

「え?」


 月島君は何がありがとうなのかと、首を捻る。

 あははは、また先走ちゃった、と心の中で苦笑する。


「悩んでる時や苦しんでる時助けてくれてありがとう」

「ああ、そのことか」


 月島君は得心言った風に頷く。


「うん。どういたしまして。僕にはそれくらいしかできないからね」

「それくらいって……話を聞いて、手助けできることは大変なことだよ」


 かもね、と月島君は呟く。


「でも、もう少しいい言葉が思いついていれば宮﨏さんはあれ以上苦しんでいなかったと思う。僕以外の人だったらもっと上手く励ませていたよ」


 そんなことはない、と思う。

 月島君だからこそ、私は救われたのだろと思う。

 だから、その気持ちを口にする。


「月島君だったからどうにかなったんだよ。だから、月島君は誇っていいよ。自分のやったことを、自分が言ってことを」

「本当に?」

「うん」


 私は断言する。

 嘘なんかなもんか。

 私がこうしていられるのは全部月島君のお蔭だ。


「宮﨏さん、ありがとう」

「えへへへ、どういたしまして」


 自分が言いだしたことだけれど、すごく照れてしまう。

 頬の好調を隠すために、私は夜空を見上げた。

 夜空で輝く星々は先ほど以上に輝いていた。

 眩しい。

 とても眩しい。


「あのさ、宮﨏さん」

「なに?」

「宮﨏さんの写真撮っていい?」


 その言葉に私の心臓が跳ね上がった。


「今の宮﨏さんは良い顔をしているから、撮りたいんだよ」


 月島君は私が今まで見た中で一番の温かい笑みを浮かべた。

 私の心臓は先程よりも強く跳ね上がった。


「宮﨏さん?」

「ああ、うん、良いよ」


 心配そうに尋ねてくる月島君に、私は慌てて了承する。

 そして今高鳴る鼓動の正体を知り始めていた。

 でも、どうすればいいんだろう。

 私は迷った。

 そして、すぐに思いついた。

 伝えればいいんだ。


「ねえ、月島君も一緒に写真を撮らない。タイマー機能もあるでしょ」

「あるよ。でも、僕もかー。宮﨏さんだけでも良い表情しているのになあ」

「大丈夫。月島君も良い表情をしているよ」


 そう捲し立て、私は月島君と一緒に写真を撮ろうとする。


「うん。分かったよ」


 月島君は三脚の上にカメラを乗せ、タイマーの準備をする。そして私の右隣に急いで駆け寄ってくる。

 私と月島君は夜空にとても眩しく輝く星々を背景に、お互いにピースをしながらシャッター音が鳴るのを待つ。


「あのさ、月島君。私――」


 カシャ、というシャッター音と私の声が重なる。

 ここから先の言葉はまだ秘密だ。

 だって違うお話なんだもん。

                                       おわり


 どうもこんにちは日野空です。

 今回で花月は完結となります。

 最後は「えっ!?」みたいな終わり方ですが、狙い通りだったりします。花月というタイトルにはなっていますが、あくまで宮﨏桃花と松原聡と月島拓実のやり取りが花月であり、最後の続きの物語というのは全く別の物語になってしまいます。ですから、このような終わり方になっています。


 さて、最後ですからキャラクターについて語ります。

 今回から初登場である増田七海は桃花とよく似ています。口調とかも見分けやすくするのに苦労しました。

 似ているのは人に甘えるところです。ただ違うのは誰にでも甘えるところでしょうね。桃花は基本的に聡だけなので。

 ただ、色々と親友のために動ける良い人間です。


 次は佐藤翼について。

 彼女も少し口調で困りましたが、とても快活な方で良い人間だと思います。七海同様に親友のために真摯になれる、真っ直ぐな人間です。


 最後に月島拓実について。

 今回の主役でもあり浮かれですが、登場が一番最後となり大変申し訳なかったです。

 でも、その分桃花を励ましたり、導いてくれた良い人間です。今までこういった青少年を書いたことがなかったので、新鮮でよかったです。


 前作『星に願いを』から続いて登場したキャラクターもいますが、桃花と聡に拓実の三人がメインなため、ほとんどは物語にそこまで絡んできませんでしたが、十分活躍してくれました。

 

 さて最後に。

 今回のお話は『片思い』や『甘くて苦い』、そして英語の副題『あなたに伝えたい思い』をコンセプトにやってきました。

 人生は失敗しても成功を掴むことができます。

 ですから、あきらめないでほしいという思いを込めながら書いてきました。それが少しでも伝われば幸いです。

 それではここまでお付き合いしていただいた皆様、途中まで読んで頂いた皆様に最大限の感謝をこめて、読んで頂きありがとうございました。

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