クランは
一正は家に帰ると意外とかわいらしい寝顔で寝ている後輩を叩き起こす。
「おい!起きろ!」
「・・・・うにゅ~~、あれ?先輩?ここどこですか?」
「俺の家だ」
「え!・・・・先輩、後輩を酔いつぶして家に連れ込むなんて・・・犯罪ですよ?」
冗談めかして言っているが、目がマジだ。
「お前が勝手に飲んで酔いつぶれてたんだろうが・・・それはそうと・・」
一正はそういって名刺を渡す。
「ん?これは?」
「さっき惑星管理部イレギュラー対策室を名乗る人物から呼び出された。まあ、自称ではあるが。遠まわしに事件かもと言われた。心当たりは?」
「ちょ、ちょっと待ってください。事件なのですか?」
「maybe」
「・・・煮え切らないですね・・・まあ、心当たりは山ほどありますよ」
「あるのかよ!」
「私、エリートですから・・・・」
往年の名優みたいな感じで言った。
「・・・・・よし!俺は関わらないようにする!お前は遠くで幸せになってくれ!」
「ちょ、かわいい後輩に向かって!ここは“俺が守ってやる”くらいくさいセリフはいえないんですか!」
「ふっ。俺は無駄なカロリーは使わない主義だ」
「・・・・・・・・・・・・・事件に応じて食事を奢りましょう。瑠璃ちゃんの分も含めて!」
「俺が守ってやる!」
「・・・・・・・・・先輩・・・いろいろがっかりです」
「・・知ってるか?お金って大事なんだぞ」
「・・・・・」
一正には後輩の冷めた目が痛かった。
「それはさておき、実際どうなの?惑星間を超えてまで事件を起こせる奴なんてそう多くはないだろ?」
「先輩、甘いですね。それくらいできるのは私が思いつくだけでもダース単位でいますよ」
「・・・・お前・・何してたんだ」
「内緒です」
そういうとフレデリカは自分の端末を取り出し、メールを打ち始めた。
「・・・先輩」
「なんだ」
メールを打ちながら器用に話かかけてくることに少し驚きながらそう聞き返した。
「私とクラン組んでくれません?」
「・・・・・・なるほどな・・・俺でいいのか?腕利きならもっとたくさんいるぞ」
クランとはいわゆる“狩り”におけるチームのことを指す。特に人数制限はないが、通常5~6名というところだろう。
「先輩、それはギャグですか?ワイバーンを単独で討伐できるなんて学園内のトップランカーたちでさえ出来るかどうかなんですよ?」
「そうかもしれないが・・・お前の方からトップランカーのクランに入るっていうのはどうだ?」
「トップクラスだと3年生主体ですよ。長期化も予想されますし、一年もないクランでは不安です。かといって同級生は現段階では・・・」
「なるほどな。まあ、俺、無所属だからいいが、ほかの面子はどうすんだ?さすがに2名じゃつらいぞ」
「そうですね。やはりあと何人かほしいですね・・・・何とかそろうように探しておきます。とりあえず先輩にはずっと付き合ってもらうってことでいいですね」
「いやそれは・・俺にも予定とかあるし」
「お金も出しましょう」
「何なりとお申し付けください。お嬢様」
「「ちょっと待った(てください)!!」
ガシっという音が聞こえるほど強く一正の足を強くつかむ腕がある。しかも二本。
そこにはまるでゾンビのように這い出した妙齢の女性が2名。
一正の幼馴染と妹の2名がそこにいた。
「何のことかわからないけど、お金のやり取りするなんてよくないよ!しかも、つ、付き合うなんてまだ早いとお姉さん思うな」
お姉さんって誰だ!一正はそう心の中で突っ込む。
「お兄ちゃん!勝手にクランなんか入っちゃダメ。6年生になったら私もクランに入れるんです。その時までお兄ちゃんはフリーじゃないとダメなんだからね!!」
おお、妹よ。未来の計画より明日の食費だ。いよいよ二人に向かって文句を言おうと口を開きかけたその時、
「ちょうどいいですね。皆さんも一緒にクランに入ってください」
な、なんですと!!
その場が騒然となった。
ちょっと短めです。最近、調子が上がりません。