昔の偉い人は言った“常在戦場”と
惑星ジエンドの街並みは巨大な軌道エレベーターを中心に円状に広がる中心街と各地に拠点として整備された村規模の街が無数に存在する。ちなみに一正とかおりは中心街のかなりはずれにある住宅地に住んでいる。
一正とかおりは住宅地のすぐ近くにある昔ながらの商店街に来ていた。もう日はかなり傾き、夜になるまであとわずかな時間帯、人通りは大分少なくなっている。
「で、なにが必要なの?しょうがないから奢って上げるわ」
「・・・おれの金なのに・・」
「なんか言った?!」
「いえ、何でもありません。かおり様・・」
「よろしい!」
周囲にいる商店主や買い物客、通行人の主に男性が憐みに似た視線を送っていることに一正は気づいてはいなかった。
しばらく歩くと鉄製のハンマーの看板のかかった店が見えてきた。鍛冶屋である。
「ちょっとここに用事が・・・」
見るとかおりさんもようやくやる気になったか、と言わんばかりに腕を組み
「じゃ、入りましょう」
なぜか笑顔だった。
「いらっしゃい!」
入るとごく普通?のマッチョなTシャツのおじさんが気さくに声をかけてきた。そこは壁にはいくつかの刀身や数個の金属の立方体がおかれた小奇麗な部屋が広がっていた。
「すいません。刀身の修理をお願いしたいんですが・・・」
そういってヒビだらけになった大刀を取り出した。
「なんだこりゃ。いったい何しやがったんだ?坊主」
さすがに驚いたらしく大刀と一正を何度も見比べた。
「ちょっとワイバーンに襲われまして・・」
「「ワ、ワイバーン!?」」
おじさんとかおりが同時に聞き返した。
「あんた、学生だろう!!どうやって中級レベルエリアに入りやがった?にいちゃん死ぬ気か!?」
「ちょ、初めて聞いたんだけど!だから、こんなにお金持っていたのね!いくらお金がないからってやりすぎよ!死ぬ気なの!?」
二人の怒声を聞き流した一正は
「・・・言っとくけど、俺がいたのは低レベル森林エリアだ。向こうが勝手に来たんだ。まあ、フレデリカをおって来たらしいが・・・」
「イレギュラーって奴か。そんな大物がなるのは珍しいな」
「フレデリカって銃砲科の?ちょっとどういうことなの?」
再び同時に口を開く。こいつらワザとやっているじゃ、そう思いながら一正は
「フレデリカとはたまたま途中で会っただけだ。それはそうとこれ治ります?」
かなり傷んだ大刀を指差しながらそう聞いた。かおりの機嫌は急降下中なことに彼は気づいていなかった。
「うーん。無理じゃないが、新品と同じくらい掛るぞ?いっそ新調したらどうだい?」
「これ、使えませんか?」
そう言って出したのはワイバーンからのドロップアイテムの合金のインゴットだった。
「こりゃあ珍しい!ルナニューム合金か。あー、一応使えるが」
「え、そんなに悪い物なんですか?」
チラッとかおりの持つ財布を見る。歯切れの悪い鍛冶屋に原料が使えないと思ったからだ。使えないと加工料に加え原材料費とかなり高いお金がかかってしまうのだ。
「いや、上級素材だぞ。ただの鋼より硬くて粘りもある。若干、重くなるが、それ以上の耐久性がある物になる」
「じゃあ、何も問題ないですね!一正がせっかくやる気になったんだもの!これからは少しでもいい者を使った方がいいわ!気が変わらないうちにさっさと作っちゃいましょう!!」
かおりのほうがノリノリだ。一正も
「じゃあ、加工料だけで済みますね」「おう、そりゃもちろん・・」「じゃあ、まあ、いいか・・・お願いします」「それでいいなら・・」
決め手は値段でした。
明日の昼までに仕上げることを約束し、次の店に向かう二人。
鍛冶屋を出て少し進んだところにこの商店街最大の店舗がある。
スーパーよしだ
特になんということもない、ごく普通のスーパーだ。何とそこでかおりさんが夕食を奢るという爆弾を投下した。
「・・・・あの、かおりさん?」
恐る恐るといった感じで聞く一正。
「何かしら?荷物持ちさん」
そこには大量の食材を買うかおりの姿があった。しかも微妙に高い物ばかり
「そちらの食材の山はいったい?」
「もちろん今日の夕食の分よ?」
この大量の食材でいったい何を?ていうか料理できないだろお前!内心そう思っている一正だがさすがに口には出さない。かわりに
「さすがにその量は食いきれないと思うんだが・・」
「大丈夫!私も食べるから!あっ、もちろん瑠璃ちゃんの分もあるわよ」
一正は3人分でもその量ないわ、そう思いながらもせっかく奢ってくれるんだから多少食材が余るほうが良いと考え直しこんもりと膨らんだカートを押した。すると
「お兄ちゃん?」
そこには一正のシスター、瑠璃が少ししか中身の入っていないカゴを持って立っていた。
「瑠璃ちゃん、久しぶりね!最近、なかなか姿見せてくれなかったから心配してたのよ」
かおりは微笑みながら瑠璃に近づいて行った。
「・・・ひさしぶりです」
プイとかおりを避け、一正の後ろに隠れる瑠璃。見るとピシリと固まっているかおりがいた。
「・・・昔からそうだった気がするが、瑠璃、もうちょっと人見知り治せ」
一正がそうフォローするが
「・・・かおりお姉ちゃんは苦手です・・」
保護欲をマックスにそそるしぐさで一正に甘える瑠璃。多少そっちの気がある人なら『萌え~~』と叫んでしまいそうだ。
「うう、なんか嫌われること私したかな~。一正」
かおりはそういって涙目でうなだれている。
「・・そうやってお兄ちゃんを顎で使っているところが嫌いなんです」
小声で文句を言っている瑠璃。ただ小声過ぎて一正にも
「ん?なんか言ったか?」
と聞かれる始末だ。
「・・・なんでもないよ。お兄ちゃん」
どうやらこの瑠璃という妹はかなりのブラコンであるらしかった。この普通のスーパーで幼馴染と妹というなんかのフラグが立ちそうななかでさらにフラグが投入された。
「あれ?先輩?奇遇ですね」
かなり棒読み口調のセリフは後輩のフレデリカであった。
余談ではあるがフレデリカの住居はここよりかなり中心部のほうにあり、よほどの用事がない限り辺鄙な商店街には姿を現すことはない。
ここまで読んでくださってありがとうございます。拙文でスイマセン。筆の進みが遅くてなんか空き時間では文章が長くなりにくいです。励みになりますので以下略~