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金欠主人公の学園生活は女難と共に

およそ一時間後

私立ユピテル学園高等部 学生協同組合販売部

「頼む!!これと食券と交換してくれ!C定食でいいからさ」

さっきハントした鉛筆を持って買取カウンターに向かって頭を下げているのは一正その人である。先ほどまで狩りをやっていたとは思えないくらい元気いっぱいだ。いや、鬼気迫る勢いだ。なぜなら、彼はある病に冒されていたからだ。周囲からもそう認知されていたし、彼自身もそう思っている。その病の名を“金欠病”という。

「無茶言わないで。鉛筆一本じゃ割にあいません」

そう言うカウンター向こうの女性は彼の幼馴染、伊藤かおり 黒髪美人と評判だが彼女の幼馴染は、気性は荒くて暴力的な女と判断しているようだ。ちなみにC定食は200円です。学食なのでかなり安い。

「じゃあ、これつけるから。炭素繊維のロープ2mあるんだぜ!」

そういって取り出したのは黒々としたロープ。若干使用感があるが

「ええっと、炭素繊維は1m30円ですね・・・・はい、合わせて70円」

中古品っぽいのに新品の値段をつけてあげたようだ。良心的だ。

「・・・・・・せめて100円・・・埋め合わせは必ずするから」

彼も好意的な取引だと自覚しているが、彼の懐事情はそれ以上に世知辛い。ちなみに彼が朝一番のバスに乗って来たのはハンター用のバスは無料だし、先ほどいた狩り場は比較的学園から近い。彼はハントの後、一時間かけて歩いて通学してきたのだ。さらに言えば金欠病の彼は昼食代を捻出も兼ねてハントを行っていたのだが、ものの見事に撃沈した。

「そう言って!」

バンっとカウンターの上に情報ウインドウを開く、物の見事に真っ赤な文字でいっぱいだ。

「こんなにツケが溜まっているんだけど?」

さすがの、かおりさんもこめかみに青筋を立てて怒り心頭のようだ。

「じゃあ」

彼は両手を合わせると

「かおり、金、貸してくれ!なんでも言うこと聞くから!なんなら一緒にねt・・・」

「何いってんの!ばかっ!!」

耳たぶまで真っ赤にした彼女の拳が彼の顔面を正確に捉えていた。

「な、なんで・・・ネトゲーに付き合うって言おうと・・・・ゲフッ」

一正はかおりがネットゲーマーなのを知っていてそう言ったのだが、わずかな勘違いが悲劇を生んでしまった。彼はそのまま仰向けに倒れた。薄れゆく意識の中で彼は幼馴染の謝罪の言葉を聞いた気がした。


交渉の結果

買取価格 70円

物品支給 ヨモギ印の絆創膏(定価150円)

幼馴染の気持ち プライスレス




「酷い目にあった・・・」

そういうが、すでに打撃のダメージはない。鍛えられた肉体と不幸体質が磨き上げたナノマシンが驚異的な回復力を彼に与えたからである。彼は生体ログを確認する。一分ほど気を失っていたようだ。

「ほんと、馬鹿力なんだから」

そう言うと彼は待合シートから体を起こした。どうやら彼女が寝かせてくれたようだ。すると始業5分前を知らせる鐘が鳴り始める。彼はやばいというなり駆けだしていった。


惑星ジエンドには学園、学校と呼ばれるのは一つしかない。それがユピテル学園である。初等部、中等部、高等部、研究部に分かれており、それぞれ6-3-3-4年を教育期間としている。しかし、留年、退学制度が充実していてストレートに卒業するのはかなり難しい。

「おす。みんな、揃ってる?」

そう言って入ってきた青いジャージ姿の女性教師は森岡ヒカリ(29歳独身)。ボーイッシュな格好をしていることが多く、性別の枠を超えて人気の高い先生だ。

「じゃあ、授業を始める。教科書の・・・・」

教室にいる全員が教科書かノートを広げ始める。一番下は12歳、一番上は32歳。人種も様々だがさらに言うなら出身惑星すら違う。中には2つほど先の星系から留学という名の明らかにお前、学生じゃないだろう!という人さえいる。それほどいい惑星(ほし)かね・・と考えながらもハチャメチャでそれでもごく普通な日常はまだ始まったばかりだ。


「コラ!寝るな!!」

早速、彼は居眠りをしていた様だ。ちなみに教科は分子生物学。確かに興味がなければ数秒で人を沈黙させる魔力を持つ教科だ。

「寝てません!目をつぶっていただけです」

どこの小学生だ?そんな視線があちらこちらから視線が刺さる

「ほう、じゃあ、続きを読んでみろ」

「すいません!寝てました」

「ここからだ。読め」

その時、にやりといやらしい笑みを浮かべた先生がいた。

「ええっと、『わたしはしょうらいカズマサくんのお…』ゲフ!!」

なぜか電子教科書には分子生物額ではなく、初等部文集と表示されていた。そしてなぜか彼は斜め後ろに座っていた顔を真っ赤にした幼馴染に完璧な奇襲で左方向に吹っ飛ばされた。彼の席は窓際であり、そして一正は窓を突き破り

「うわああああああ~~・・・・」

ダイブしていった。最後に何かが潰れるような音が聞こえたが、生徒全員慣れた手つきでそれぞれの宗教で冥福を祈った。


「死んで・・・たまるくわあああああ!!」

もし、柔術家がこの場を目撃したのなら泣いて弟子入りを請うような受け身をとった一正。このスキルは幼少からの鍛錬の賜物である。

間違いなく彼には女難の相が出ているに違いない。

具体的には吹き飛ばされて崩れた体勢を上半身のひねりで強引に整え、地面に着地するなり前方向に回転した受け身、いわゆる前回り受け身をとったのである。勢いを殺しきれず壁にぶつかったのは愛嬌だろう。

「酷い目にあった・・・」

よく見ると肘のあたりを少しすりむいている。

「いや、それくらいで済むのって先輩くらいですよ」

振り返ると一階の教室から彼の後輩がいつものようにしっとり感のある高級ティッシュを差し出してきた。

「おお、いつもすまんな・・」

そう言って2,3枚のティッシュを受け取った。もうすでに風物詩と化している一正の“窓割りダイビング”最初のころは教室中大騒ぎとなって授業どころじゃなかったようだが片手の数を超えたあたりからほぼ、通常通りの授業が進行するようになった。人間ってなれる動物だということが証明される光景だ。ティッシュを差し出した彼女は高等部1年のフレデリカ、落下物対処係という役職に就いている金髪美少女さんだ。

「あんまり窓割り続けると硝子を着けてもらえなくなりますよ?」

少しおかしそうに話していると

「ふ、大丈夫だ。ちゃんと弁償しているからな(かおりが)」

「それは残念です。私、一度、青空教室見てみたい気がします」

「おい、いつの間にか天井まで取り上げられるのかよ、おれ」

何とも言えない気持ちになりながらそう言い返した。

「え、まだ天井残っていたんですね」

「冗談ではなく、マジでそう思ってたんかい!!」

落下のショックのせいか突っ込みに切れがない。

「あ、まだ、授業中ですので、先輩、駄弁ってないでさっさとお帰りください」

奥をのぞくといつものことで皆、注目さえしてくれない。

「・・・そうだな・・・まあ、帰るか・・」

とぼとぼと帰りだす一正。やはり彼には間違いなく女難の相が出ているにちがいない。


やはり、勢いだけで書いています。今回は週2,3回の更新を目指します。

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