VS アースドラゴン後編
一瞬だけアースドラゴンと目が合う。そしてそれはかおりを見るとにやりと笑ったような気がした。
「やめろ!!」
一正の絶叫が響く、そして
かおりが宙を舞った。
「かおりーーー!!」
見ると腹部から赤いシミが広がっているのが見える。そしてそのまま2,3回地面を転がる。
「かおりーー!!」
我を忘れて駆け寄る一正。
「まだ・だいじょうぶ!」
無栗と起き上がるかおり。その手には信号銃が握られていた。
『パシュウウウ』
独特の風切り音を響かせながら信号弾はアースドラゴンの頭部に向かって飛んでいく。低速の信号弾ではまず命中しないはずだが、よほど油断したのかすんなりと鼻先に命中した。
『カン!』
硬い音が響く。信号弾は簡単に弾かれる。もちろん、かおりはダメージを与えることを狙ったのではない。
『!!』
一拍、間を開けて強烈な閃光があたりを包む。さすがのドラゴン族も目の前に強烈な閃光を浴びて目をそむける。やっとのことで閃光が収まるとそこには2人の姿はない。2度3度、アースドラゴンはあたりをうかがうように見渡したがこれ以上の追跡は不可能と考えたのか巨体をめぐらすとそのまま去って行った。その姿はまさに陸上の王者といった風格があった。
「畜生!かおり、大丈夫だ!もうすぐ治療が受けられるからな!!」
一正は必死に走って行た。かおりをいわゆるお姫様抱っこで抱えて走っているのだが抱えられている方も抱えている方もその顔色は悪い。かおりは文字通り血の気が失せているし、一正は掌でどんどんと弱っていくかおりの感触に血の気が引いていた。
(マズイ!マズイ!早く!もっと早く!)
あせる気持ちが一正の体の限界を超えるスピードを与えていた。しかし、それでも一正には牛歩の歩みのように感じられて気持ちばかりが焦っている。
!!
不意に無数の光源が上空に現われる。
『もう大丈夫だ!こちらは惑星管理部警備隊だ!』
無数のヘリが上空を飛びかっている。その姿を見て安心したのか一正は崩れ落ちる様に倒れこんだ。
同時刻
耳うるさい警報と赤い警告灯の二重奏があたりを包み込んでいる。
「いったいどこからのハッキングだ!」
「システム浸食率20%を超えました!!」
怒声が飛び交うのは惑星管理統括局。文字通り惑星の全システムを統括する部署だ。
「どうやらハッキング地点は惑星上のようです!」
「ばかな!!この星系にここのコンピューター以上のパワーがある物なんて存在するはずがない!」
「しかし現実に!」
「そこまでだ!そんなことより浸食をとめることを優先しろ!」
「パターン解析終了!カウンター攻撃開始します!」
「!!浸食止まりました!徐々に回復していきます!」
「イマジネーションモンスターの制御、回復しました!」
「油断するな!敵の攻撃をかく乱しろ!さらなる攻撃に対処準備だ!」
「ふふっ、なんか大変なことになっているわね」
殺気だった現場にありながらどこか呑気な声を出したのは惑星管理部の制服を着た一人の女性だった。もし、この場に一正がいたなら驚いたことだろう。彼女は先日、一正を拉致した人物、しかも下っ端と思っていた人物が部屋の中央の指揮官席に当たり前のように座っていたからである。
「どお、被害の方は?」
彼女はそう告げると斜め後ろに控えていた副官らしき人物が端末を操作しながら
「・・どうやら現在のところ死者は確認されていません。重傷者7名、軽傷者25名ってところですね。時間が時間でしたから被害が少なかったようですね。・・・やはり先日の事件と同じ星系国家が黒幕でしょうか?」
「いえ、多分違うでしょう。彼らだって今は目立ちたくはないでしょうし、それにあまりに手際が悪い」
「手際が悪いですか・・・結構、いい線まで来たと思いますが・・」
「いいえ、もし最初っからこれくらいできるのだったら最初の襲撃の時にやっているでしょうし・・」
「では、件の少女関係ですかな?実際彼女のクランも襲われたようですし」
「どうでしょう。材料が少なすぎますね。しばらくは事態の収拾に全力を挙げてください」
そういうなり彼女は席を立つ。
「どちらへ?」
「ちょっと現場に判断材料は多いほうが良ですしね」
「・・・・報告書は書いてもらいますよ。もちろん・・始末書も、ですが」
「・・・・勤労精神が低くなるようなことは言わないで!」
そういうなり彼女は部屋を飛び出た。
ふーと誰かがため息を吐いたが特に誰にも影響はなかった。
なかなか進まなくてスイマセン!設定考えるのが面白くて書き出しましたが、それを文章にするのは・・・・次回は近いうちにヴェール帝国辺境戦記をアップ予定です。