因縁、再び
忙しくて遅くなりました。スイマセン
ユピテル学園の朝は早い。というか24時間営業の学園だったりする。これは様々なライフスタイルに対応するといった理由もあるが厳密な様々なノルマが学生に課せられるからだ。ごく普通の単位取得も授業だけでなく特定のモンスターの狩りをおこなうことも含まれている。それは特殊な出現条件がある者がある。
「こんな深夜にしか活動しない奴を駆らなきゃならないとはな・・・」
「というかまだ狩りを行っていなかったことが驚きよ」
一正のぼやきをかおりが一刀両断する。その間にもフレデリカと瑠璃の二人が暗視装置付き双眼鏡をのぞきながらターゲットを探している。
「お兄ちゃん、川沿いの木の下にターゲット確認したよ」
褒めてと言わんばかりの口調でそう報告する瑠璃。
「偉いぞ。瑠璃」
ちゃんと空気を読み、さらに頭を撫でる一正。瑠璃もまんざらではない様子で、えへへとはにかんでいる。
旧型スニゲーター あまりに特殊な生態の為、ごく初期のうちに新型に置き換えられたいわくつきのイマジネーションモンスターである。どう特殊であるというと
「あ、もぐちゃった・・」
瑠璃がそう叫んだようにこのモンスターは水中にもぐることができる。しかも出現するのが夜間。これだけでも大変だがさらに
「あ、今度は上がってきた・・」
しかも3匹!このモンスターは集団で行動する水陸両用のワニ型モンスターなのだ。
「で、どう始末するんですか?先輩?」
フレデリカはそういいながらスコープを覗く。さっそく打つ気満々だ。
「これは白兵戦科単位だからな・・・狙撃だけで倒したらまずいだろう」
「そうね・・・どこで監視されているかわからないし・・・ね」
監視者がいるとは限らないが昆虫型カメラや超望遠カメラが様子を見ている可能性が常にある。それゆえに大事故や死亡事故がかなり低いのも事実なのだが・・・
「ああ、こういう授業だとやりにくいな」
そう、こういった狩りのセオリーはまず銃撃で連携や頭数を減らしつつ接近してくる個体を各個に撃破するというのが鉄則だ。
もちろん、銃撃だけで倒さなければ授業としては合格と判断される。
「まず俺とかおりが突っ込む。フレデリカは背後に回った敵を倒してくれ。瑠璃はフレデリカを護衛しつつ周りに別の敵が来ないか監視をしておいてくれ。まあ、作戦としてはそんなところかな」
「そんなところじゃない?数体倒したら下がるわよ。フレデリカさんはその時には全力射撃をお願いね。それで今回のクエストはクリアになるでしょう」
「ええ、お兄ちゃん。私も行きたい!!」
再び後方に置かれて不満気味な瑠璃。
「よし、今度、お前の好きなオムライスを作ってやるじゃら今回はしっかりとフレデリカの護衛を頼む」
「ええ、私ってそんなに安い女じゃな「じゃあ、先輩。私に手料理を・・」やっぱり、しっかり頑張るね!お兄ちゃん!!」
「お?おおう・・」
睨み合う瑠璃とフレデリカ、急展開についていけない一正。それをみてかおりがあきれた顔を作る。全くチームワークというものがないクランに少々呆れているようだ。
「とりあえず!さっさと終わらせるわよ!下手に失敗して出現ポイントが変わったらやっかいよ」
この旧型スニゲーターは一度襲われると出現ポイントを変える特性がある。その為、夜間の狩りの訓練に使用されるのだ。
「よし、さっそく行くぞ。こんな深夜の授業、さっさと終わらせるぞ」
「分かった」「好きです」「さっさと終わらせましょう」
バラバラに叫んだので誰が何と言ったかは残念ながらわからなかった。
音もなく、姿勢をできるだけ低く保ちながら川沿いに向かっていく一正とかおり。それを数百メートル後方からスコープ越しにのぞくフレデリカ。その周りを双眼鏡をのぞきながら瑠璃が左右を見回している。
一正が右手を大刀の柄に手をかけながら左手で使い慣れない手信号をかおりに送っている。何度かやり取りを繰り返しながら一気に一正とかおりが左右に分かれながら飛び出した。
「「「「!!!」」」」
突然、現れた襲撃者に一瞬の間もなく臨戦態勢を整えるスニゲーターたち。だが、不幸にして正面に位置していた二匹のスニゲーターが瞬く間に斬られ、吹き飛ばされた。が、さすがにスニゲーターたちもただの獲物ではない素早く囲むように二人に迫ってくる。
「うりゃああああ!」
大きな一正の雄叫びに一瞬、動きの止まった。すると音もなく吹き飛ばされるスニゲーター、フレデリカの狙撃である。突然の奇襲に連携が乱れるスニゲーターたち
「は!!」「もういっちょ!!」
かおりの一撃が一体の頭蓋骨を砕き、一正の横薙ぎがさらに2体のスニゲータの首を切り離した。
「かおり!!」「ええ!!」
一正の合図でかおりが腰より閃光弾|(強力な閃光を発する手りゅう弾)を転がすように投げる。
『バン』
意外と大きな音を出しながら激しい閃光があたりを包む。
「「「「「!!!!」」」」
夜行性のスニゲーターたちはたまらず顔をそむける。
閃光が収まってしばらくするとやっとスニゲーターが動き出す。見るといつの間にか一正たちが遠くへ逃げていた。何匹かが追いかけようとするが、その何匹かは文字通り吹き飛ばされた。
「「「「!!」」」」
さすがに状況の不利を悟ったのか残ったスニゲーターたちは川へ逃げ出した。
「意外と楽勝だったな」
「まあ、パートナーがよかったからね」
ちょっと茶目っ気を出したのかかおりが冗談をかましながらフレデリカたちのいる丘へ向かう。すると
「先輩!!」
「お兄ちゃん!!」
向こうからかけてくる影が2つ。
「おお、もう終わったぞ!!大分、助かったぞ!!」
聞こえるように大きな声でそう叫ぶ一正
「先輩!!」
「お兄ちゃん!!」
・・・どうやら様子がおかしい。さすがの一正、かおりもそう思ったのかお互い顔を見合わせながら不審そうな顔をする2人
「先輩!!」
「お兄ちゃん!!」
さらに近づいてくる二人。
「おい!いったいどうした!?」
やっと聞こえたか2人は口をそろえていった。
「「逃げて!!」」
「「え!?」」
困惑した表情で顔を見合わせる2人。そしてフレデリカたちが逃げてきた丘の向こうからそいつが現れた。
「おいおいおいおいおい!!」「ちょ!なにあれ!!」
ある意味、一正に因縁のある敵が現れた。ドラゴン種である。
なんか忙しいです。帰ってすぐに寝る生活です。あれ?意外と健康的?