表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

【5】

「…は? 啓太が来た?」

散歩でおち合うと、雅巳が呆れたように言ってくる。

「そうなのよ。家出してきたんだって」

凛は沈む太陽の眩しさに目を細めながら答える。周囲の木々は日光を浴び、きらきらと輝いている。宝石も良いが、こういう自然の美のほうがいいなと凛は思う。雅巳は夕日を受け、いっそう綺麗なオーラをまとっており、眩しかった。

「いつまでいるんだ?」

「さあ? 分からない。坊っちゃんも大変そうだし…」

凛は影を踏みながら答える。伸びた2つの影は適度に離れており、手を伸ばしたら、繋いでいるように見えなくもない。

「何が大変なんだ? 言ってみろ」

「それが…」

啓太が言った言葉をそのまま伝えると、雅巳はなるぼどと首を縦に振る。

「よく考えているじゃないか。その通りだ」

「そうなの? 確かに勉強漬けは良くないと思うけれど…」

「良くないに決まっている。机上の空論で偉そうにされたら困るんだよ」

「きじょう…? 何それ」

「つまり、机の上だけで政治を行われても困るってこと。実際、動いて人の話を聞いて、何か1番いいのか聞いてやることがいい大人になるんだよ」

「雅巳さんが言うなら、そうみたいね」

「そうか…。あの啓太がそこまで考えていたか…」

雅巳は感心したように言い、今すぐにでも会いたいような雰囲気を出してきた。凛は頬に手を当てると、

「啓太に会う? 今ならゆっくり会話できるけど」

「いや、やめておく。婚約が解消になったのに、会うのもちょっとな…」

「…そうよね。うん」

何故か安心し、凛は心の中で暖かいものが広がっていくのを感じる。

ー駄目、駄目。雅巳さんにばれちゃ…。

一生懸命、真顔を維持し、雅巳に聞いてみる。

「雅巳さんはもう婚約はいいの?」

「はい? 俺はしばらく誰ともくっつく気はないぞ」

「そうなんだ。…良かった」

口元だけて笑い、凛はよしと心の中で拳を作る。

「それにしても啓太がな…。そんなことまで考えていたなんて」

「ね。子どもらしい子どもじゃないでしょう?」

「確かにな。子どもは遊んだほうが色々と経験になって、大人になった時に役立つんだけど…」

「そうよね。私もそう思う」

2人は黙り込むと、間を裂こうとするように風が吹きつけてくる。思わず手を前に出し、顔を庇うと雅巳が言ってくる。

「寒いか? 散歩しないで帰るか?」

「いや、別に雪はないからいいんだけど」

雅巳と長くいたいという言葉を飲み込み、彼を見る。彼は考えるように顎に手をあて、言ってくる。

「啓太と麗は上に立つ意味を分かっているんだな」

「…どういうこと?」

「つまり上の人間が動かないと、下の人間も真似してしまうということだ。上の人間は模範を見せないといけないのに、今の官僚は私腹を肥やしているだけに見えるんだよな、俺には。そうじゃなくて、身銭を切って何かをなすから、人から頼られるのに。…って、話したらまずいな」

「そうでもないけど…。なるほど」

凛も雅巳の言うことは正しいと思い、同意した。小さな雑貨屋だが、父親の葉大雅がどう動き、何の話をしているのか知るだけでも、勉強になっている。一国一城の主とは言うが、その通りだと思う。凛も大雅を真似し、動いているようなものなので、大雅は尊敬に値する存在だった。

ー良かった。私の父親がお父さんで。

いい環境にいると思っていると、雅巳が言ってくる。

「啓太の親がそういう考えなのだろうか…?」

「え? 何で?」

「子は親を鏡とするものだからだよ。奥さんでもいいけど。…まあ、うちみたいに全滅の場合もあるけど」

「啓太の両親か…」

2人を思い浮かべ、雅巳の両親よりは全然まともだと思う。

「…まあ、その話はいいか。そろそろ歩こう」

「うん!!」

2人は何か満足感を持ちながら、歩き始めたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ