【21】
「えい! そりゃ!」
「やったな!! この!!」
凛の店の前で雪合戦しているのは、清と凛だった。昨晩、雪が積もったので、朝早く起きて雪かきした後だった。
「うわ!! 痛ーい!! お兄ちゃん、手加減してよ!!」
「駄目。勝負は真剣勝負。相手が誰だろうとな」
「麗さんでも?」
少し意地悪に言うと、清が頬を染めて雪玉を放ってくる。
「この!! それはなし、今はなし!!」
「わ、分かったわよ。分かったから、もう。ちょっと休憩しよう?」
「ーお茶飲みっすか?」
急に声がし、凛は悲鳴をあげそうになった。春徳が現れるなんて思わなかったのだ。
「な、何でここに…?」
「いいじゃないっすか、別に。細かいことは気にしない、気にしない」
「…怪しい。妹を狙っているんじゃないだろうな?」
清の言葉に、春徳はあえて明るく言う。
「本当だとしたら、どうするっすか?」
「俺が見定める。とりゃ!!」
清が投げた雪玉を、春徳はまとも食らい、ふらつく。
「あー。これは手加減したほうがいいかもしれない」
清は腰に手を当て、「はあ」とため息を吐く。どうやら不合格らしい。とりあえず2人を無視し、凛は1人で作業に没頭する。
「…何を作っているんだ?」
またまた突然、声がして、凛は跳ね上がりそうになった。雅巳が来るとは思わなかったのだ。
「何って…その雪うさぎを」
盆の上に2匹乗せる。目は南天で難を転じるという意味があり、耳はユズリハで子孫繁栄を意味していた。
「かわいいな」
雅巳が少し表情を和らげたので、凛も笑顔を浮かべる。
「雅巳さん、どうしてここに? 買い物?」
「いや、それもあるが…何となく、来たくなってたな。駄目か?」
「駄目じゃないけど…。お茶でも飲む?」
「お茶か。ありがたい」
そこで店の入り口が開いた。出てきたのは定で、皆に聞こえるように言う。
「ワンタン、できたわよ!! 早く食べに来なさい」
「ワンタン!! 美味しそう!! 雅巳さん、早く!!」
「え、俺は別にいいんだけど…」
「いいから。お兄ちゃんと春徳…呼び捨てでいいわね? 早く入って!!」
しかし2人は本気になったらしく、雪合戦をやめようとしない。凛はふてくされて、雅巳の腕を取る。
「行こう。あの2人はそのままにしておいて、大丈夫だと思うし」
「そうか。じゃあ申し訳ありませんが…」
「いいのよ、雅巳くんは。早く入って。ー清!! ほどほどにするのよ!!」
そう言うと、定は「ふふ」っと嬉しそうに笑った。何故、そんな態度なのかは知らないが、凛は雅巳を見上げる。
「今度、一緒に買い物に行きたいわ」
「買い物って市場か?」
「うん! あ、雅巳さんが嫌なら…」
「いや、いい。どうせ雪の日の散歩の道順を考えているところだから」
「そうなの? ありがとうね」
「どういたしまして。じゃあワンタン、ごちそうになるか」
「うん!! たくさん食べてね!!」
凛はそう言うと、食卓へ向かった。作った雪うさぎのみが光を反射し、眩しそうに輝いているのだった。




