【16】
しかし結局、また何の手がかりも得られず、終わった。陽は落ちて暗くなり、凛達は雑貨屋へと戻る。
「おかえり。どうだったかい?」
「全然駄目。収穫なし」
凛ががっかりしたように言うと、雅巳も残念そうに告げる。
「申し訳ありませんが、何もありませんでした」
「…そうかい。お疲れ様」
「ちょ、ちょっと待つっす!!」
口を挟んだのは春徳で、凛と雅巳は顔を顰める。何を言い出すのか、分かったものではなかった、
「あのね…あなたは」
「ー誰だい、この子は?」
大雅が興味を持ったらしく、春徳を珍しく凝視している。それを好意を得たと思ったのか、春徳が胸を張って名乗る。
「朱春徳って言うっす。姉御に助けてもらって、今、ここにいるっす。収穫ならあったっすよ」
「ほう…。何の収穫だい?」
「俺を拾ったこたっす。俺も顔が広いから、色んなところで探すっす。任せてくださいっす」
大丈夫、というように胸を叩く姿に、皆、一斉に視線を向ける。
「姉御のお父さんは名前、何て言うっすか?」
「ああ。名乗ってなかったね。私は葉大雅という。よろしくね」
「はい! お父さん、よろしくっす」
外は黒い龍がとぐろを巻いているように、暗くなっていた。そのうち闇に食われそうだと、凛は身震いする。それを勘違いしたのか、
「姉御、任せるっす」
安心させるために言ったようだが。どうもいまいち信頼度が低かった。
「もういい。家に帰って」
「嫌っす。ここに泊めてもらうっす。せっかく姉御の店を知ったんだから」
「は…? ちょ、ちょっと待って。泊まるって、あなたね…」
「帰りなさい。家族が心配しているといけない」
凛の言葉を遮ったのは大雅で、春徳に向けて言う。
「凛のことを思って言ってくれるのは、ありがたいが、もう外は真っ暗だ、何かあったら、君のご家族が心配される。それでは本末転倒だ。帰る場所があるのは、幸せなことなんだよ? 分かるね?」
「…分かったっす。また明日来るっす」
「もう来なくていい。危ないことに巻き込むかもしれないから。俺達から離れろ」
雅巳が言うと、春徳は何故か嬉しそうに顔を輝かせる。
「兄貴、心配してくれてありがとうっす!! 俺、感動したっす」
「…。駄目だ、相性が合わない」
「私も…。言うことのきかない大型犬みたい」
「何っすか? 俺の悪口っすか?」
「まあまあ。とりあえず、今日は解散しよう」
大雅が手を叩いたので、皆というか雅巳が動き出す。
「じゃあ俺は先に帰らせてもらう」
「兄貴、俺が送って行くっす」
「やめろ。邪魔だ」
「そんな…。つれないことを言わずに、ね?」
「何がね、だ。全く」
ぶつぶつ言いながら歩き出した雅巳に、春徳は遅れるものかとついて行く。ようやく静かになって凛はため息を吐き出す。
「お父さん、ごめん。何かうるさくなって」
「いや、変な若者ではないと思うが…。本心は分からないから気をつけるんだぞ、凛。人間、何を考えているかなんて分からないものだから」
「うん、ありがとう、お父さん」
「じゃあ中に入ろうか」
凛は寒々した空に浮かぶ月を見、孤独な輝きだと感じながら、大雅の後を追ったのだった。




