【11】
「ー啓太!! 啓太!!」
凛と雅巳は名前を呼びながら、道を進んでいく。すでに暗くなり始め、暗闇が太陽を食い始めていた。
「啓太!! 啓太ってば!!」
凛も口元に手を当て、精一杯、叫ぶ。子どもの足だから、遠くへは行っていないと思うのだが、それでも見つからないものは見つからなかった。
「どうしよう、雅巳さん…!!」
不安で不安で、しょうがなかった。そんな凛を励ますように、
「大丈夫だ。必ず見つかる」
雅巳はしっかりした声で言ってきた。まだ諦めてたまるかと、凛も力強くうなずく。
「啓太!! どこにいるの!!」
「おい!! 返事をしろ!!」
2人は声が枯れるまで叫びながら、歩いて行く。しかし啓太からの反応はなかった。
「どこに行ったのよ、もう!!」
「…そろそろ限界だな。これ以上、暗くなったら危ない」
「…でも、啓太が!!」
「押して駄目なら、引いてみろだ。案外、店に戻っているかもしれないぞ」
「…そうだといいけど」
凛は下を向き、ぼそりと零す。自分の身に何かあったら、それはそれで嫌だが、啓太が心細い思いをしていないか考えるともっと嫌だった。
ー口うるさい子どもなのに…!! いなくなると困るなんて…。
年齢からいって弟みたいな存在なのである。そんな彼が憎まれ口を叩かず、隠れているとしたらどこだろうかと思う。
ーブスでも構わないから、出てきなさいよ!!
凛は涙を拭うと、真正面を向く。まだ啓太に何かあったわけではないので、諦めるわけにはいかない。
「安心しろ。お前はお人好しだけど、ちゃんと皆に良いことをして徳を積んでいるんだから。すぐに啓太も見つかるさ。神様がそうしてくれる」
「…。ありがとう、雅巳さん」
礼を言うと、雅巳は昇った月を眺め、凛の腕を引く。
「ここまで探したんだ。、そろそろ戻るぞ」
「…うん」
短くしか答えられなかった。願うなら、神様と取り引きしたいくらい、今、凛は切羽詰まっていた。
ー麗さんの応援が見つけてくれていればいいんだけど…。
手を合わせ、どうか見つかりますようと祈る。そんなことしかできなかった。
「よし、行くぞ」
雅巳の言葉にうなずくと、凛は踵を返したのだった。




