表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

【1】

粉砂糖のように柔らかな雪が降る中、雑貨屋の灯りは暖かかった。

「ーいらっしゃい…あ」

店番の葉凛ははたきをふる手を止め、振り返った。そこには1つ年上の男性ー玉雅巳がおり、薄く積もった雪を払っていた。

「今日、散歩はどうする?」

耳ざわりのいい声で言われ、凛は表を確認する。積もりそうな雪ではなさそうなので、雅巳を見上げる。

「行く。多分、大丈夫だと思うから」

「そうか。じゃあ待っているか」

雅巳が椅子の1つに座り、暖をとる。2人が散歩しているのは理由があり、凛のダイエットのためだった。

ーお陰でかなり痩せたし。

雅巳はその護衛として雇っており、いつも一緒に出かけるのだった。商品をきちんと整理し、凛が雅巳の元へ行く。

「…もうお客さん、来ないと思うんだけど…」

「雪の日はな、どうしても客足が遠のくよな」

外を見ながら、雅巳は同意するためにうなずく。夕方というよりは夜のような暗さだった。

「短い距離にする?」

「そうだな…。歩き始めてみた感じだな」

そう言うと、雅巳が急に手を伸ばしてくる。何事かと慌てていると、髪の毛に触れられる。

「髪、はねてる」

「嘘!! …あ、本当だ」

手鏡で確認し、凛は慌てて直そうとする。今日1日中、そこの髪だけが乱れていたことになる。

ー水をつけて直したんだけどな。

少し傷つきながら、手鏡をしまうと、雅巳が言ってくる。

「櫛は?」

「あるけど…どうするの?」

「とかすに決まっているだろう」

少し怒った口調に、凛は首を竦めつつ、櫛を手渡す。

「ほら、大人しくしろ」

「うん」

雅巳の大きな手に、櫛は小さく見える。しかし誰かに髪を構われるのは、気持ちの良いことだった。うっとりとしていると、雅巳が

「身だしなみは大事にしろ」

と言ってくる。凛が何か言おうとする前に、続けて言ってくる。

「お客さんはよく見ているから。特にお金が発生することには敏感なんだよ。この店、大丈夫かって思わせるなよ」

「うん…。ごめん。ごめんなさい」

凛は素直に詫びると、雅巳が櫛を動かしながら言う。

「椿油でもあればな…。でも今日はもう店じまいか」

「うん。今日はもうそろそろ終わりにする。雅巳さんが迎えに来てくれたし」

2人で和やかに会話を交わしていると、そこに母親の葉定がやって来た。

「あら、雅巳くんじゃないの」

「こんにちは。いつもお世話になっております」

凛の髪を構うのをやめ、挨拶する。凛は残念がったが、定は目を輝かせる。

「お茶でも飲んでいかない?」

「え? お母さん?」

急な展開に、凛のほうがびっくりする。何の合図が知らないが、定は片目を瞑ると、雅巳に近づく。

「今日はもうお店、終わりにするし。どう?」

「…。ありがたいんですが…散歩に行かないといけないので」

「少しくらいいいじゃない。ね、凛?」

「え…。私は」

少し考えてから、凛は定に答える。

「せっかく雅巳さんが来たんだから、散歩に行きたい。お母さん、ごめん」

「この娘は…。せっかくの機会なのに」

後半は小さくて聞こえなかった。

「お母さん、店番を任せた。私、行かないと」

「…もう。親心が分からないんだから」

「何が?」

「ううん、何でもない。行ってらっしゃい」

定に見送られ、凛と雅巳は外へ出かけたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ