4話 入学式
今回のお話から第一章が始まります。
俺は今、レストレジェル学園の校門の前にいる。新入生と保護者で賑わう門をくぐり抜け、受付へと向かった。列に並び、順番に係りの人の前に行く。学校の地図、入学式のプログラムなどが入っているという袋を受け取り、早速地図を開いた。講堂の場所を確認して、写真を撮る相手も居ないのですぐ向かうことにした。
あまり講堂内には人がおらず、一人静かに椅子に座り、パンフレットを読んでいると声を掛けられた。
「やっほ、リョータくん」
「こんにちはです」
「レベシーに、マルじゃん!」
「私とリョータくんどうやら席隣らしくてさ」
「本当だ。全然気付いてなかった」
よーく、席案内の紙を見ると、俺の隣の席にレベシーの名前があり、その隣がマルの席になっていた。ここに来る途中で2人は出会い、俺の知り合いだとお互いに見抜いたらしい。どんな生活してたら俺の知り合いだって分かるんだよ、と思わなくもなかったがその考えは頭の中から消しておいた。しばらく3人で入学式について話していると、入学式が始まった。入学式は来賓の紹介、理事長挨拶に、新入生代表挨拶などがあり、式自体は1時間ほどで終わった。その後はクラスを見に行くために講堂の外に移動した。
クラス分けの表の前には人だかりができていて、前に移動するのに時間がかかった。天才科だと分かっていても一つ一つ確認してしまった。中、高校生で経験したが、やはりクラス分けは毎回ワクワクするものだ。
そして、隣の表の前が異様に盛り上がっていた。表に書かれたクラス名は【鬼才科】。入試の順位が1位から11位までの人が入れる、エリートクラスだとパンフレットで紹介されていたことを思い出した。
天才科に自分の名前を見つけ、2人に知らせようとすると2人の名前を表に見つけた。まさかの3人おんなじクラスだったのだ。
ということは、2人もスパイ志望なのだろう。
「やった! 三人一緒だよ!」
「嬉しいです! レベシーさんもこれからよろしくお願いします」
2人は入学式までの待ち時間ですっかり仲良くなっていた。2人ともスパイ志望だから、俺の知り合いだと見抜けたのかもしれない。いや、でもよく分かんないな。
3人で喜びを分かち合うとすぐに教室へ向かった。教室は学食につながっている半屋外の渡り廊下を歩いた先にある。鬼才科も入っている教室は一見すると貴族様が住んでそうな見た目だった。それほどまでにきらびやかで豪華だったのだ。
純白に金色の模様が入った建物の中に入ると、階段があり2階へ上がった。3階は鬼才科のクラスだという。
階段を登ってすぐのところにある教室に入った。中には既に数人の生徒がいてマルとレベシーと教室内で別れ、自分の席に座って大人しく先生を待つことにした。何処か緊張感漂う教室で大人しくしていると、前方の扉が開き、先生が入ってきた。
一人は女性でホワイトブロンドの髪を高い位置でくくり上げ、緑色の瞳を持っていた。
「私はシンシア・ジオリと言います。貴方達の担任です。主に座学を担当します。よろしくお願いします」
もう一人は短髪の髪の男性だ。
「ソード・ガレットだ。実技を主に担当する。お前たちはスパイ以外にも勉強することがある。それは担当教科の先生が授業をしてくれる。俺の好きなものは猫だ。以上」
見た目は強面なソード先生だが、以外と可愛いもの好きのようだ。人は見かけによらないと改めて思った。
「この後の予定ですが、教科書の配布、そしてこの教室、教科書ノートの仕様についての説明があります。その後自己紹介をしてもらい、昼食となり下校になります」
その後は各教科の教科書が配られ、スパイに関する教科書は一番分厚かった。
「教科書には名前を記入してください。そして、この教室についてですが、授業の内容を偽る幻魔法と防音魔法がかけられています」
スパイに関する授業を行なっていても分からないように、魔法がかけられているという。そして、防音なので話し声も聞こえないから安心してほしいとのことだった。
「それと、教科書、ノートには施錠魔法がかかっています。この教室と寮の自室でしか開けられないようになっています。自分の魔力が勝手に登録されるので他人に開かれる心配はありませんが、念の為気を付けるようにしてください」
名前も書き終わり、自己紹介の時間となった。
「自分の名前、年齢、知っておいてほしいこと。の3つは必ず言ってください。知っておいてほしいことはなければ言わなくても大丈夫です」
そして、自己紹介が始まった。
♢
「アスカ・マイマだ。16歳で、言いたいことは特になし。これからよろしく」
トップバッターは入試の順位が一番上の女性だった。赤く長い髪が特徴だ。
「ガムリディア・レベシーです。年齢は16歳、知っておいてほしいことは特にありません。これからよろしくお願いします」
「私はビン・イキャ、14歳。」
レベシーの次はタコの女の子だった。八本足で器用に立っていて、自己紹介からは人を拒絶するするような雰囲気を感じた。
「私、ジュリュジュ、デス。18サイ。性別はありません。デスガ女子として学校に登録されてます」
ジュリュジュさんは人外で、足は棒のようなものの先端が二つに分かれていた。上半身には栗色のツンとした毛が沢山生えていて、顔は人間で紫色の髪をしていた。顔色は悪く隈がひどい。少しカタコトなしゃべり方だが、仲良くしたい意思を感じた。
「アスカ・ヒュートだ。16歳。よろしく」
マイマさんと家名が同じということは兄弟なのだろう。ヒュートさんは金髪で青い目をしていた。どこか女の子が好きそうな遊び人の雰囲気を感じる。
「アダチ・リョータです。16歳で、知っておいてほしいことは嘘をつけない。ということです」
嘘をつけないことを告白すると、少し教室がざわついた。ソード先生は顔色を変えなかったが、ジオリ先生は眉毛がピクリと少し動いた。
「キャパマだよ! 12歳なの。私はオカシイ子が嫌いなの。」
キャパマちゃんは黄金色のボブヘアが似合う女の子で、元気っ子という印象を感じた。オカシイ子がどういった人を指しているのかは分からないが、何か訳ありの子なのだろう。
「バーナ・マル・アルバートです。じゅ、15歳で、マルが名前です。よろしくお願いしまっす」
緊張しているのかぎこちない喋り方だったが、一生懸命に話していることが伝わった。そして、この時初めてマルが年下だということを知った。
「ワイン・ボブッシュです。年は12歳。初学校を卒業したばっかりです。知っておいてほしいことは見ての通り、獣人だということです」
ボブッシュくんはピンクの髪に黒の瞳を持つ、猫獣人だった。まだ幼さが残る顔立ちで、優しい雰囲気を纏っている。
「ミヤだ。わたくしは19歳男性で、今は男爵家の養子になっている。よろしく」
丁寧な一人称の割には、話し方が堅苦しくなかった。砕けた口調すぎる気もするが、本人が気にしていないのなら、こちらが何か言わないほうがいいだろう。貼り付けた様な笑みに、1ミリも笑っていない目が少し不気味だった。
「アクア・ウォーター・マールック。年齢は言いたくない。性別はないよ」
「ウォーターさんはアクアが名前よ。男性として登録されています。なので、お手洗いや更衣室は男性用の場所を使うことになっています」
最後はアクアさんで、先生が名前に関して補足してくれた。それと、マールックという名前が出たときに教室の雰囲気が変わったのは気のせいだろうか? 少し気になった。
「これで、全員自己紹介は終わりましたね。それでは、授業を終わりにします。他のクラスはまだ授業中だと思いますので、静かに移動してください。授業を終わります」
「「ありがとうございました」」
机の上に昼食を出したり、席で作業しているクラスメイトを横目にどうしようかと悩んでいると、レベシーとマルが昼食を食堂で取らないかと誘ってくれた。学食はかなりの大きさがあり、調理場の手前に注文をするカウンターがあり、上の看板に多くのメニューがのっていた。
「どれにしようかな~。多すぎて迷っちゃうなー」
「本当にどれも良さそうですよね。僕はおにぎりと、うどん、他にも麺を……」
隣で食べたいメニューをブツブツ唱えているマルは食べたいものが沢山あるようだった。
「私はケーキと、パウンドケーキと、マカロンと、オレンジジュースと――」
「ケーキ多いね」
「うん。あ、せめておにぎり入れとくか」
レベシーは少食そうだったが、ケーキは沢山食べられるようだ。デザートは別腹だからからだろうか。少し、何にするか悩み、魔物の肉がのっている丼にすることにした。
「はいよっ。何が欲しいかい?」
「私はショートケーキ、パウンドケーキ、おにぎり、芽葡萄のマカロン。それと、オレンジジュースで」
「僕はおにぎり、うどん、メーン、メロンジュース、焼きそばに――」
「お兄ちゃん、こっちのレジ空いてるよ」
マルの怒涛の注文量に気づいた、レジのお兄さんが隣のレジに案内してくれた。
「さっきの兄ちゃん細身なのによく食べるな。あ、俺は厨房のリジ。よろしくな!」
「はい。よろしくお願いします。注文なんですけど、マンモンの焼肉丼でお願いします」
「あいよ! 席で待ってな。この魔法石道具が鳴ったら、レジまで取りにきてな」
細長い魔法石道具を渡され、先に席に戻ると、レベシーが座っていた。マルはまだ注文をしているらしい。レベシーはレジにいたおばちゃんが、倒れそうな顔をしていたと教えてくれた。そりゃあ、あんな量の注文をされたら誰でも驚くよな。
しばらく、雑談をしていると、既に大量の料理をおぼんに乗せたマルがやってきた。
「おー、たくさん頼んだなー」
「あはは、頼みすぎちゃいました。後これと同量が8個ぐらい……」
「はぁ!? いくつ頼んだの!」
頼みすぎだとマルはレベシーに怒られていた。二人の仲裁をしようかと考えた所で、魔法石道具が鳴り、レジへ料理を受け取りに行った。
「――いただきます」
食事前の祈りを済ませると、焼肉丼を食べ始めた。マルの料理が揃うのを待っていたので、お腹は既にペコペコで背中とお腹がくっつきそうだ。
特性の焼肉タレで味付けられたマンモン――レベシーの話によると、マンモスに似た形の魔物らしい――の肉、ホカホカの米。どちらも輝いていて美味しそうだ。
「んー、美味しい!」
元いた世界でいう、牛肉に近い味だろうか? 脂は少なめで、肉肉しい味わいだった。
「マンモンって食べれるんだね。私、知らなかった」
「メニュー看板に書いてあったけど、卒業生が狩ってきたやつらしいよ」
「まじ!? 卒業生すげー」
3人で取る食事は楽しく、昼食の時間はあっという間に過ぎていった。生徒で食堂が溢れかえってきたので、教室に戻ることにした。
教室に戻ると、黒板に下校して良いと書いてあったため、3人で寮に帰った。




